「敵対する相手と、どうすれば手を組めるのか」――。職場の部署間トラブルから、マーティン・ルーサー・キング牧師の運動、そして丸紅の企業広告まで、相反する立場を超える鍵は「共通の敵(解決すべき課題)」の再設定にあります。本連載では、長崎新聞「平和企画」を手掛けるコピーライターの鳥巣智行氏が執筆。鳥巣氏が、二項対立の壁を乗り越える「リフレーミング」について考えます。
分断を乗り越える、丸紅のCM
時は戦国時代。追い詰められる、伝説の武士「紅丸」。刀や斧や大きなトゲの付いた鉄球を振り回す大男たちに囲まれて、窮地に追い込まれている。
「いや、ここからだ」
紅丸はそう言うと、刀一本で戦う。孤軍奮闘。大立ち回りを繰り広げるなか、突然、地面からゾンビの腕が飛び出してくる。地中から湧き出てきたゾンビの大群が、紅丸や武士たちを敵味方、見境なく襲いかかってくる。
「ここでやりあってる場合じゃないな」
紅丸がそう言うと、それまで敵対していた紅丸と悪者の武士たちは手を組んで、ゾンビに立ち向かっていく。ゾンビの大群に苦戦していると、大きな影が迫ってくる。頭上に現れたのはキングギドラだった。口から光線を吐きながら襲いかかってくるキングギドラを見上げながら、紅丸は言う。
「ここは組むしかなさそうだな」
そう言って、ゾンビと武士は手を組み、その混成軍はキングギドラに立ち向かう。
そのとき、宇宙から隕石が迫ってくる。それに気づくキングギドラ。人間とゾンビとキングギドラが同じ方向を向き、一緒になって隕石に立ち向かっていく……。
おもしろいCMなので、ぜひ検索してご覧になってほしい。「できないことは、みんなでやろう。」というメッセージを伝える丸紅のCMだ。
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このCMはよくできたCMであると同時に、分断を乗り越えるヒントが隠されたCMでもある。注目したいのは、敵と仲間の関係性の変化だ。90秒のあいだに、敵が仲間に変わり続ける。悪者だと思っていた武士が、ゾンビの登場によって仲間になり、そのゾンビもキングギドラの登場によって仲間になる。隕石が飛来してくると、そのキングギドラとさえも手を組むことになる。
「できないこと」を実現するためには「みんな」でやるしかない。より大きな目的に立ち向かうことで、敵だと思っていた相手が仲間になる。総合商社の企業姿勢を伝えるためのCMだが、いまの社会への処方箋のようにも見えてくる。
「ここでやりあってる場合じゃないな」
紅丸が直面した場面のような困難は、何もCMやフィクションの中だけの話ではない。歴史を振り返ってみると、そんな状況から社会は変わってきた。