企業公式の「SNSいじり」は、好印象?悪印象?──研究でわかった「ユーモアを超える人間味」

次の問題に挑戦してみてください。

Q.あなたはあるスムージーブランドの広告担当者として、若者向けの広告のキャッチフレーズを考えています。次の3案のうち、お客さんとの距離がいちばん縮まりそうなものはどれでしょう?

A案:「一口ごとに、新しい果物に出会うような、新鮮さ。」
B案:「Instagramのタイムラインみたいに、いつも新鮮。」
C案:「好きな人のInstagramを何度もチェックするあなたのように、いつも新鮮。」

 

写真図

 Oba et al.(2025)を参考に筆者作成

ブランドが消費者を「いじる」、新しいコミュニケーション

SNSの発展に伴って、ブランドと消費者の距離は急速に縮まっています。公式アカウントが直接消費者に語りかけたり、対話を行ったりする光景を目にすることも多いのではないでしょうか。

そんな中、いくつかのブランドは、消費者のことを親しみを込めて「いじる」ような対応をしていることに気が付きます。このような現象は、「Brand Teasing(ティージングは日本語で、いじる、からかう、などの意味)」と呼ばれています。

従来は、ブランドが消費者をいじったり、からかったりすることは、企業にとってネガティブな効果があると言われていました。なぜなら、いじられた消費者が不快に思う可能性が高いからです。

しかし近年では、SNSなどを通じて、「いじり」をコミュニケーションに効果的に使い、消費者との距離を近づけているブランドも増えてきています。

では、どのような「いじり」であれば、消費者に好意的に受け入れられるのでしょうか。

今日は、ハーバードビジネススクールのオバ先生による論文「Brand Teasing: How Brands Build Strong Relationships by Making Fun of Their Consumers(ブランド・ティーシング:ブランドが消費者をからかうことで強固な関係を築く方法)」から、効果的な「いじり」とは何かについて学びたいと思います。

「いじり度」が高いほど、消費者の反応も高まる

ファーストフードチェーンのウェンディーズは2018年に、Twitter(現X)で「#NationalRoastDay」というハッシュタグキャンペーンを実施しました。

これは、ウェンディーズの公式アカウントに「いじって!」と話しかけてきた消費者や他の企業アカウントを、次々に「ロースト(いじり倒す)」する、というものです。

例えば、ピーナッツブランドの公式アカウントに「トレイルミックス(ピーナッツやドライフルーツ、チョコなどが混ざったお菓子)の中で一番いらない」と返したり、若い消費者に「ティーン誌のモデルを目指すのはおやめなさい」と言ったりと、愛のある多数の「いじり」ツイートを行った結果、フォロワーが約35万人増えたそうです。

では、ウェンディーズの「いじり」はなぜ好意的に受け入れられたのか。そして、どのような「いじり」は否定的に感じられるのか。その背景に迫る実験の結果を見てみましょう。

次のページ
1 2 3
5分でわかる! マーケティング論文の“ツボ”
岡田 庄生(法政大学経営学部 准教授)

国際基督教大学卒業後、博報堂に入社。約20年間、ブランドコンサルティングやマーケティング戦略の実務に従事し、部門長などを歴任。博報堂に勤務しながら法政大学大学院で学び、2022年に博士(経営学)を取得。2025年より法政大学経営学部准教授に着任。マーケティングやブランディング、ユーザーイノベーションの研究・教育に取り組むとともに、企業のブランド戦略、マーケティング、人材育成などの支援を行っている。著書に『ユーザー発案者効果』(碩学舎、2025年日本商業学会学会賞書籍部門奨励賞受賞)、『博報堂のすごい雑談』(SBクリエイティブ)など。日本マーケティング学会 常任理事。マーケティングジャーナル シニア編集委員。日本広告学会 理事。

岡田 庄生(法政大学経営学部 准教授)

国際基督教大学卒業後、博報堂に入社。約20年間、ブランドコンサルティングやマーケティング戦略の実務に従事し、部門長などを歴任。博報堂に勤務しながら法政大学大学院で学び、2022年に博士(経営学)を取得。2025年より法政大学経営学部准教授に着任。マーケティングやブランディング、ユーザーイノベーションの研究・教育に取り組むとともに、企業のブランド戦略、マーケティング、人材育成などの支援を行っている。著書に『ユーザー発案者効果』(碩学舎、2025年日本商業学会学会賞書籍部門奨励賞受賞)、『博報堂のすごい雑談』(SBクリエイティブ)など。日本マーケティング学会 常任理事。マーケティングジャーナル シニア編集委員。日本広告学会 理事。

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

このコラムを読んだ方におススメのコラム