最初につくったものは、作品集サイト。
「仕事ゲットするの大変なんで、アピールしまくったほうがいいですよ。」
以前に日本からCHIATに来ていたどのチームからも、そう聞いていた僕とコンビを組んでいるノゾミは、マジであせっていた。
本当に仕事がなくて暇だったらどうしよう?
ロスを歩き回って、ノゾミが毎日一枚写真を撮り、僕がそこに英語でコピー(ポエムw)をつけるというスタイルで作品をアップしていくサイトをつくるか?なんて話し合っていたぐらいだ。
だから、ロスに着いてからすぐ作ったものは、ポートフォリオ(作品集)サイト。こっちのクリエイターは定期的に転職することもあって、みんな自分のポートフォリオ・サイトをつくるのは当り前である。
僕はスティーブ・ジョブズの伝記のソーシャル・メディアを活用したキャンペーン『みんなのしおり.jp』を、ノゾミはアディダスの世界初のオンライン・シューズ・レンタル・サービス『KUTSUKASU』を手がけていたこともあり、ふたりの仕事をひとつにまとめると、とてもインテグレート色の強いコンビに見えた。
これではCHIATの真ん中のマス広告の仕事がこないかもしれない。などと、何をやっても不安だったのだが、一カ月経つ頃にはそんな不安があったことすら忘れていた。
ポートフォリオをいろんなCDに送りまくったせいか、ビッグアイデア開発、雑誌広告制作、バナー広告シリーズ開発に加えて、ソーシャル・メディアのバズを狙う仕事が二つも来た。今度はあわてて「いま仕事はいっぱいです」とお断りすることになった。ぜいたくな悩みというものだが、実は本当に不安もあった。
それは表現アイデアをまず考えるマス広告の仕事とはちがって、ソーシャル/インテグレート関連の仕事は、どうやって実現するかを同時に考えていかなければならないこと。
そのアイデアはテクノロジー的に、この予算で、可能なのか?そんな僕たちの不安に応えてくれる力強い味方が、CHIATの中にいた。
テクノロジスト集団、DAN。
CHIATはクリエイティブ・エージェンシーだ。
前々回に書いたように、アートディレクターとコピーライターのタッグをそのクリエイティブ・エネルギーの源泉としている。
Appleの”1984”や”Think Different”が生まれた20世紀は、クリエイティブ・ディレクターのもと、アートディレクターとコピーライターのタッグで本当にすべてを動かしていたと思う。ほとんどの広告キャンペーンが4マスメディアで完結していたから。
21世紀になってそうはいかない。デジタル領域の比重は拡大しつづけ、単にデジタル・メディアに広告表現を載せるという話ではなく、日々、新しい体験が創造され、新しいアプリがつくられ、リアルとデジタルを融合させた新しいキャンペーンが生まれ続けている。
(次ページ「インテグレートとは、人材のインテグレートでもある。」に続く)
「原田朋のCHIAT\DAY滞在記 ~リー・クロウの下で365日~」バックナンバー
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