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【リレー式コラム】これからのコラボのつくり方③ “映える“コラボのデザインってどうやるの?—午後の紅茶×ポッキー流のパッケージデザイン術—

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【前回】「【リレー式コラム】これからのコラボのつくり方② そのアイデアが社内を通らないのには理由があった?! — 午後の紅茶×ポッキー流の企画突破術—」はこちら

はじめまして、電通の坂本弥光です。普段はコピーやTVCMを書いたり、デザインをしたりしています。前回のコラムでは、午後の紅茶とポッキーのコラボプロジェクトならではのプロジェクトマネジメントについてご説明しましたが、今回はアウトプットとして形にしていくデザインパートについて、お話ししていきたいと思います。

ユーザーが遊べる余白をつくる

コラボで商品開発となると、どうしても肩に力が入ってしまうと思います。「1ブランドじゃできないことができる!」「全く新しい挑戦ができる!」と、期待が膨らんでいくでしょう。そうして生まれたアウトプットは、派手さやインパクトが先行したり、知らぬ間に情報過多になったりと、作り手側の大きすぎる思いが反映されてしまいがちです。

しかしそれでは、今までブランドや商品を応援してくれていた既存のファンたちをおいてけぼりにしてしまう可能性があります。ファンを上手にフォローしながら、コラボ相手先から新たなファンを呼び込む、お客さんをしっかり見据えたアウトプットにすべきなのです。

コラボに限らず、ガチガチに作り込まれたデザインは、昨今、裏目に出ることが多いと言えるかもしれません。ユーザーが入る隙がないほど完成されたアウトプットは、どうしても自分向けとは思いづらいものです。ユーザー自身が面白みを見つけ出して遊べる、いい意味での「余白」をつくることで、話のネタにされやすいと思います。

コラボデザインを解剖する

デザインを決める上で、色やトーンはアウトプットの印象を決める大きな要素です。ここでは、第1弾のデザインを元に説明していきます。

パッケージデザインをはじめるにあたり、最初に、午後の紅茶、ポッキーそれぞれの商品に使われている色を洗い出しました。例えば、午後の紅茶で言うと、ストレートティーの赤、ミルクティーの白、レモンティーの黄色などといったように、長年愛されてきた定番品にはそれぞれの色が割り当てられています。加えて、ロングセラーかつ高いシェアを誇る2ブランドであるがゆえ、定番品だけでなく期間限定品などを含む様々なフレーバー展開がなされています。そのため、私たちはひとつの壁にぶつかりました。

「パッケージに使われていない色がほぼ無い」。

ブランド内の他商品と並んで陳列される状況を考えると、あまりに近しい色にしてしまうと買い間違えを招いてしまいます。逆に、食品らしからぬ奇抜な色を持ってきても、美味しさが削がれてキワモノに見えてしまう。

そこで、商品ではなくブランドカラー、そしてコーポレートカラー、と徐々にレイヤーを上げながら、色を探っていきました。すると「赤」という共通の色が見えてきました。2ブランドのブランドカラーであり、キリンとグリコのコーポレートカラーでもある「赤」。コラボのはじまりを飾るにもベストな選択だと考え、「赤」をデザインの中心色に据えることにしました。

色は決まったものの、デザイントーンの調整は、幾度とない検証が必要になりました。午後の紅茶は「上質感のある」トーン、ポッキーは「元気で楽しい」トーンをブランドDNAとして持っており、なかなか相容れない関係にありました。そこで、2商品のパッケージデザインの元となる「一枚画」をつくることにしました。ペットボトルと紙箱に落とし込む前に、パッケージに描くキャラクターや背景の色&トーンを、2ブランドが納得した上でひとつに定めることを目的にしたのです。

そうして決まった一枚画を真っ二つに(!)切って、それぞれのパッケージに配置しました。その際、ブランドロゴやフレーバー名、シズル画像などが入る部分は、印象を統一しながらも各ブランド本来のトーンを崩しすぎないように調整していきました。

ちなみに、王子様とお姫様が手をつなぐこのデザインは、ポッキーは箱によって絵が異なる2種類のパッケージ(王子様・お姫様)である一方、午後の紅茶は表と裏の2面に王子様とお姫様を配置した1種類のパッケージにしました。どちらのポッキーを買っても、午後の紅茶をくるくるとひっくり返すことで、カップルが作れる仕掛けにしたのです。

また「一枚画」をつくったことには、もう一つ狙いがあります。それは、並べて置かれた商品そのものが「広告」になること。売り場で2つが一緒に置かれた時、一緒に買われた写真がアップされた時に、説明なしにすぐコラボのニュースがわかる「広告」になることを目指していました。結果として、次々と2商品を並べた画像がSNSを中心にアップされ、話題が拡散していきました。

次ページ 「“女子向け“の正解」へ続く