メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×

NTTドコモ×マツダ×柴田文江氏 Tokyo Midtown DESIGN TOUCHはデザインを楽しみ、時代の手触りを感じる場

share

【関連記事】「テーマは『FUSION(融合)』、13年目を迎えたTokyo Midtown DESIGN TOUCH」はこちら

東京ミッドタウンでは11月4日(月・振休)までの期間中、「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH(以下、デザインタッチ)」を開催。13年目を迎える今年のテーマは「FUSION(融合)」だ。時代や社会が変化するなか、デザインタッチを通して企業ができることとは何か。2017年から3年連続出展のNTTドコモ、8年連続出展のマツダ各担当者とグッドデザイン賞審査委員長・柴田文江氏3者に話を聞いた(本文中・敬称略)。

<参加者>
プロダクトデザイナー 柴田文江氏(グッドデザイン賞審査員長)
NTTドコモ プロダクト部デザインディレクター 宮沢哲氏
マツダ 国内営業本部 ブランド推進部 野村真知子氏

デザインの「あるべきすがた」を追い求める姿勢を伝えたい

―NTTドコモ(以下、ドコモ)がデザインタッチに出展する目的とは何でしょうか。

NTTドコモ プロダクト部デザインディレクターの宮沢哲氏。

宮沢:出展の目的は、ドコモはデザインを非常に重視している企業なのですが、その取り組みが他のキャリアに比べて認知されてないのではないだろうかという問題意識があったことです。

そこで、2017年からデザインタッチに毎年出展しています。ちなみに、昨年はスマートフォンの色の楽しさや豊かさを表現したいと思い、10日間で約200万枚の色とりどりのスマートフォンの形をした紙吹雪を高さ16mの吹き抜け空間から降らせ、ひらひら舞い散る色のグラデーションを来場者に楽しんでいただきました。

柴田:今年はどんな内容になるのでしょうか。

宮沢:今年のデザインタッチの出展のテーマは「ドコモとデザイン」と題して、いままで一般公開したことのないプロトタイプやデザインスケッチなどを通じ、ドコモの企業姿勢をお伝えしています。展示会場はデザインが生まれる作業現場をイメージし、数十倍スケールのスマートフォン等のモックアップを複数配置しており、誰もが楽しめる展示となっていると思います。

柴田:未発表のプロトタイプというのは携帯電話ですか?

宮沢:携帯電話が中心ですが、ほかにもいろいろな製品のプロトタイプがあります。実はいままで、一度もデザインプロジェクトやデザインプロセスを公開したことがないのですが、今回それらを初めて公開することにより、私たちの製品を使っていただいている方や社会に対して、ドコモのデザインに対する「姿勢」をご覧いただきたいと思います。

また、実際のプロジェクトでご一緒した、倉本仁さん、三宅一成さん、鈴木元さんの3名のプロダクトデザイナーとのデザイン制作過程や彼らへのインタビュー動画、これまで行ってきたデザインに関する調査プロセスなどもご覧いただけます。

モックアップを複数配置した展示会場の様子。

―マツダは今回どのような展示をされるのですか。

野村:今回、我々は日本のビジュアルデザインスタジオ「WOW (ワウ)」とコラボレーションし、「ART OF LIGHT -reflection-」をテーマにした作品を展示しました。9月20日発表の「MAZDA CX-30」の周囲に大型LEDモニター等を複数設置し、CX-30の赤く輝く車体にモニターから映し出される光が反射する様子を表現しました。CX-30がつくり出す「光の移ろい」をぜひ来場者の方にはご覧いただきたいですね。

ちなみに昨年は、日本の美意識に基づき、無駄をそぎ落とし「控えめでありながら豊かな美しさを持つ」という深化した魂動デザインを形にしたコンセプトカー「VISION COUPE(ビジョン・クーペ)」を展示しました。

さらに、『VOGUE ITALIA(ヴォーグ・イタリア)』とコラボして、『VOGUE ITALIA』選りすぐりのフォトグラファーが撮影したアート写真13点を展示し、マツダのデザイン哲学とVOGUE ITALIAのアートの共鳴を表現。コンセプトカーで表現した深化した魂動デザインの志は、量産車であるCX-30にも受け継がれています。

CX-30に、大型LEDモニターの光を反射させたマツダの展示作品。

―マツダが8年連続でデザインタッチに出展されている理由を教えてください。

野村:マツダはもともとクルマを鉄の塊ではなく、「命あるもの」として捉えています。鉄の魂に命を吹き込むための造形や表現を追い求め続けるのが、まさにデザインの領域。

「CAR as ART.」という考え方も持っていて、クルマをアート作品のように考えています。お客さまにクルマを所有する歓び、見ていただくたび、触れていただく度に刺激を与えられたり、愛着を感じたりしていただきたいというデザインコンセプトがマツダブランドにはあります。そのコンセプトとデザインタッチの考え方が非常にマッチしていることから、2012年以降、継続して出展しています。

このような考え方は、「MAZDA3」から始まる新世代より前の世代の頃から生まれました。エンジン性能や操作性などの走行性能と並んでマツダの独自性としてお客様に感じていただきたいのが「Artful Design」です。この理念に共感してくださるお客さまと、より多くの接点を持ちたい。もしくはそういった理念をマツダが持っていることを周知したいという思いは常々ありますね。

―携帯電話と生活者との関係性の変化について、どのように感じられていますか。

宮沢:フィーチャーフォンからスマートフォンになって、デザインの考え方が大きく変わったなと思いますね。所有する楽しさは引き続き変わっていないと思いますが、基本的にスマートフォンは一枚の板形状で、もっとも重要なのは画面の中の情報部分。そこで、プロダクトデザインに対する期待は、今までのような単純なスタイリングの良さや面白さだけでなく、心地よいと感じるサイズや素材・質感といった、身体的な感覚に配慮されたデザインの追求にシフトしていくと考えています。

また、現在のスマートフォンのカタチが完成形ではなく、今後ライフスタイルや価値観の変化によって大きく変わっていくはずです。すでに生活必需品としスマートフォンがどう変わっていくのか、今回の展示ではそこもお伝えしたいなと思っています。

―車の場合にも、生活者との関係性に変化を感じていますか。

野村:たしかに、クルマもかつては「所有する」ことが大前提でしたが、いまではカーシェアリングという言葉もある通り、単なる「移動手段」になっていく側面もあるかもしれません。しかし、それでもなお、マツダはドライバーとクルマの関係を、まるで愛馬と志を通わせるかのように、エモーショナルなものにしたい。デザイン性や人馬一体の走行性能などを日々深化させることで、お客さまに所有してもらうことでの嬉しさ、喜びを今後も提供していきたいと考えています。

デザインタッチは、企業が純粋にデザインの姿勢を示す場

―企業にとって、デザインタッチなどのイベントはどのような意味を持つのでしょうか。

柴田 文江(しばた・ふみえ)
日本のプロダクトデザイナー。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業後、大手家電メーカーを経て1994年Design Studio S設立。エレクトロニクス商品から日用雑貨、医療機器、ホテルのトータルディレクションまで、インダストリアルデザインを軸に幅広い領域で活動し、主な作品には、無印良品「体にフィットするソファ」、オムロン「けんおんくん」などがある。

柴田:以前はデザイン系イベントというと、企業の紹介や商品の売上に直結するような展示内容が多かったように思いますが、昨今はデザインを通じて企業の理念を表現する場になりつつある印象です。

企業は、デザインタッチなどのイベントに出展する以外にも、店舗やテレビCMなど、消費者とのタッチポイントを複数持っています。しかし、企業のデザインに対する姿勢や考えを伝えることができるような接点は決して多くない。そこでデザインタッチのようなイベントは、企業にとっても非常に有意義なのではないかと思います。

企業は、デザインは大事だと思っているけど、その想いを表現する場がなかなかない。企業が消費者にデザインの本質を一所懸命に伝えたところで、「結局、商品を売るためなの?」と受け取られてしまいます。企業の利益追求ではなくて、企業の力をもって社会をどういい方向へ推進していくか。それを表現する場としてデザインタッチはとても貴重な場だと思います。

宮沢:そうですね。私たちがいうデザインは色・形だけではない。私たちの製品は、お客さまの手で触れることができるドコモブランドそのものとして、丁寧につくらなければいけないと思っています。なぜなら、この製品ひとつひとつがお客さまへのサービスの入口になっていて、製品をきっかけにお客様との深い関係が始まっていくからです。

ドコモは一見サービスのみを重視した企業のようにみえますが、「プロダクトデザイン」に対する追求は、会社として非常に重要度が高いので、デザインタッチでは、私たちのメッセージについて、デザインを通じて表現したいと思っています。

柴田:東京ミッドタウンという場の特殊性もデザインタッチの独特の魅力を創り出していますよね。商業ビルでありながら、美術館が近くにあり、緑も多い。まさに「アートとデザインのまち・ミッドタウン」。来ている方たちの感度も高く、暮らしを大事にしている方が多い印象です。

さらに、商業施設というのは5年くらい経つと流行り廃りの影響を受けるものですが、東京ミッドタウンは日々進化している印象を受けます。新しいデザインやアート、展覧会を適宜取り入れて新陳代謝をうまく回しているからではないでしょうか。これは、十数年かけて東京ミッドタウンが創ったバリューだと思います。

宮沢:柴田さんのおっしゃる通りです。なぜドコモがデザインタッチに出展するのかと聞かれたら、六本木という場所で誰もが心地よさを感じ、新しい衣食住といったライフスタイルの発信地としての魅力が決め手ですね。

野村:我々は新型車の導入時などに、自社でイベントを開催していて、例えば今回のMAZDA CX-30も現在、都市展示を行っていますが、デザインタッチほどデザインに特化したイベントはさすがに自社だけでは企画できません。場そのものがアート空間であるミッドタウンだからこそ、我々もアートに特化した作品を制作することができます。

また、企業は店舗やテレビCMなど複数のタッチポイントを持ちますが、マツダの場合、例えば店舗であれば、もともと車への感度が非常に高いお客さまや、車の購入検討中のお客様、マツダとつながりがある顧客の来場が多いです。

一方、デザインタッチでは、「良いモノ・コトに出会いたい」というよりベーシックな、車ありきでないニーズのお客さまと新たな接点を得ることができます。店舗や自社イベントでは得られないお客さまとの出会いのチャンスを提供してくれている点が、マツダとしては非常にありがたいです。

“クリエイティビティ”の刺激が、真の企業のファンをつくる

―デザインタッチなどのデザイン系イベントが企業や生活者に与える影響や意義について、どうお考えですか。

柴田:私は、デザインを巡る関係性というのはデザインの「つくり手」「買い手」以外にもあると思うんです。要するに、メーカーでもユーザーでもないけれど、その作品の存在する社会に「いる」人。

そういった第三者的立場の人のなかにもクリエイティビティがあり、「つくり手」「買い手」以外の人も日々クリエイティビティが刺激されて、揺り動かされている。一般の人にとってデザインは特別なものではなく、日々の生活の中で自身のクリエイティビティを発揮し創意工夫を凝らして生きていると思います。そういう意味で、デザインタッチの展示にあるように企業の取り組みが、彼らの日常の何らかのヒントになる。

これまでは「デザインをつくる側」「される側」に壁があったと思うが、それがなくなり、いろいろな人がデザインタッチに来場し、自身で面白いものを見つけて、何か新しいことができないかという期待を持っている。そうした方々のクリエイティビティを刺激するような作品を企業が示すことができれば、商品購入につながるかもしれない。最終的は、企業にとって真の意味でファンをつくることになるのではないでしょうか。


イベント詳細はこちら:東京ミッドタウンホームページ