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2023年末の「Cookieの終焉」までに、広告主が知っておくべき問題とその対応

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ニールセンは2022年4月1日より、日本市場においてニールセンデジタル広告視聴率(DAR)のオープンインターネット測定において、「ニールセン・アイデンティティ(ID)・システム」の導入を開始した。

「ニールセンIDシステム」は、サードパーティークッキーなどデジタル識別子の利用制限が進む中で、デジタル識別子のみに依存しない個識別ソリューション。アメリカのほか、イタリア、フランス、英国に続いて今回、日本での導入が始まった。

ニールセンデジタル 代表取締役社長の宮本淳氏にサードパーティクッキー(以下、Cookie9の利用が制限されることで、現時点で発生している問題について、話を聞く。

――グローバルにおいてここ数年で、データの利活用に際してユーザーのプライバシーが重視される流れにあり、広告に関わる部分ではCookie利用の規制が進んできました。

2017年にAppleがITPのバージョン1.0をリリース。2018年にはヨーロッパでGDPRが施行されました。2019年にはFirefoxやSafariといったブラウザにおいてもCookieの規制が始まり、2020年には米・カリフォルニア州でCCPAが発効に。

iOSのCookie規制に関してもITPのバージョンアップが進み、2021年4 月にリリースしたiOS14.5ではATTという機能が追加され、ブラウザだけではなく、アプリのトラッキングについても、消費者が拒否できるようになりました。2021年秋には、GoogleがChromeも2023年末でのCookie利用のサポートの終了を発表。実質的に2023年末が、Cookie利用の終焉と言われています。

それではCookie利用の規制についての対応は、2023年末以降に考えればよいかと言えば、そんなことはありません。すでに広告の配信において、大きな影響が出始めています。


具体的にはPC上では2021年10月時点ですでに3割超のブラウザで、Cookieが使えなくなっています。さらに台数で言えば、圧倒的に多いモバイルも合わせると、同時期で45%のブラウザがCookie規制の対象となっています。

またAppleが2021年4月にATTをリリースして以降、88%のiOSユーザーがアプリのトラッキングを拒否。当社の調査では、モバイル端末におけるiOSとAndroidのシェアはおおよそ5割ずつという結果があるので、モバイル端末の中でiOSが占める5割のうち、さらに88%がすでにアプリの利用をトラッキングできない状態になっており、現時点でもモバイル端末全体の4割以上がトラッキングできない状況になっています。

こうした状況は、広告配信にも影響を与えています。従前のiOSとAndroidのインプレッション比率は、端末シェアと同等の双方50%程度であったものが、ITPが始まって以降、その割合に変化が生じ、2021年9月の段階で約8割のインプレッションがiOSに依ってしまう現象が起きています。

OS別インプレッション比率はiOSに偏る傾向に

 

2023年末のCookieの終焉前に、対応すべき課題は発生している

――OS別のインプレッションの偏りが広告効果に対して、どのような影響を与えるのでしょうか。

そもそも、なぜiOSにインプレッションが寄ってしまうのか。広告配信においては、フリークエンシーキャップを設定することが多いですが、Cookieを使ってターゲティングができているAndroidと一部のCookie利用が有効になっているiOSにおいては、そのキャップに配信数が到達した時点で、広告が配信されなくなります。

それでは、残りのインプレッションはどこに行くのか?といえば、Cookie利用が無効化されている、あるいは履歴が都度リフレッシュされているiOSの一部の端末に偏って配信をされてしまいます。これが、いまiOSにインプレッション比率が寄っている理由です。

これにより、オンターゲット率が低下したり、リーチがなかなか広がらなかったり、場合によっては一部のユーザーに過剰に広告が配信されるといった問題が顕在化しつつあります。
さらに広告配信の精度が下がるだけでなく、フリークエンシー過多はユーザーを不快にさせ、長期的に見てもブランド棄損という問題を引き起こしかねません。

こうした問題に対応するには、AndroidユーザーとiOSユーザーの割合を、ブラウザとアプリの割合を見定めた上でメディアプランを考える必要がありますが、時々刻々と動向が変わる中で、これらを広告主が実行するのは現実的には難しいことです。これらの課題を解決する上で、日本市場においてもデジタル広告視聴率の「DAR」に「ニールセンID システム」の導入を開始しました。

「DAR」は、人ベースで配信結果を確認、把握することを目的に日本市場でも提供を開始したサービスです。テレビと同じ指標で、デジタル広告の効果を評価したい。配信事業者によってレポーティングの仕様が異なる中で、実際に期待した精度でのターゲティングが実現できていたのかを検証したい。複数のデバイスを活用するユーザーであっても、一人の人として統合的に把握し、フリークエンシー過多によるブランド棄損を防ぎたいといった目的で活用をいただいてきました。

今回、Cookie利用の規制で、さらに個を識別するのが難しくなるなかで「ニールセンIDシステム」の導入を開始することになりました。これにより、簡単にいえば「DAR」で引き続き、人ベースで配信結果を確認、把握できるようになります。どのような性年代の人たちに対し、広告が何回配信されたのかの把握が可能になるので、前述のようなデジタル広告配信の精度低下の問題を解消することができます。

テレビなどと異なり、デジタル広告においては、ビークルにあたるようなメディアやパブリッシャーの数をすべて把握することは、ほぼ不可能です。そこで「DAR」は、パネルデータと、IDシステム内の大規模視聴者属性データを使って全数を取得した広告インプレッションを、人ベースに置き換えて補正するということをしています。つまりは教師データと全数インプレッションをハイブリッドに活用しています。

当社の過去の計測データ資産に加えて、グローバルで複数のサードパーティーのIDパートナーと提携。日本でも複数のIDパートナーと連携することで、世界で20億件、日本国内だけでも1.2億件以上のID情報に紐付けられたデバイス情報を確保。データ作成のプロセスで言えば、配信されたインプレッションに対して、当社のIDシステムでデバイスごとの属性情報を各インプレッションに付与及びデバイス間の重複を排除して「人」に変換し、 さらにニールセンの教師データをもとに歪みを補正し、拡大推計を行って、配信結果のレポーティングをしていきます。

これまでもデジタル広告の登場により、枠から人への配信が可能になったと言われてきました。しかし、実際にはCookieなどの識別子への配信であって、真の意味で「人」を捉えたデジタル広告の配信ができていたとは言い難い状況もあります。改めて、「人」をベースにした広告の配信の重要性が認識されていくのではないでしょうか。

また実はCookie利用の規制により、そもそも人が集まる枠、つまりはメディアのコンテンツの質が重視される傾向にあります。しっかりと個を捉えたデジタル広告の配信、その効果検証を行うことで、改めてコンテンツ力を持ったパブリッシャーの方にとってプラスになる面も出てくるのではないかと思います。

ニールセンデジタル
代表取締役社長
宮本 淳氏