なぜファイントゥデイはリテールメディアをブランドコミュニケーションの軸に取り入れたのか 高価格帯ユーザー獲得に貢献

ファイントゥデイは、旗艦ヘアケアブランドのローンチ時のプロモーションで、ドコモグループのリテールメディアプラットフォーム「ARUTANA(アルタナ)」を採用した。購買検討時というタイミングにターゲット層を絞った広告配信で、ROAS(広告の費用対効果)272%という成果を叩き出した。

リテールメディアは、マーケティング領域で近年最も注目を集める手法のひとつだが、多くの企業は限定的な「販促施策」にとどまっている現状がある。そんな中で、ファイントゥデイはブランドコミュニケーションの軸としてリテールメディアを位置づけた。購買決定前の消費者に効果的なメッセージを届けたことが功を奏した。

短期的な販促ツールではなく、重要な顧客接点でありマーケティング施策とリテールメディアを位置づけたのはなぜか。ファイントゥデイの益川竜介氏、NTTドコモの片岡寛氏、ARUTANAを運営するDearOneの川村兼一郎氏に聞いた。

リテールメディア活用を阻む「3つの壁」

多くのメーカーがリテールメディアの積極活用に踏み切れない背景には、次のような構造的な課題が指摘されている。

・KPIのジレンマ:本来「認知拡大」と「販売促進(販促)」の両面の特性を持つにもかかわらず、後者の側面が優先されがち
・リーチの分断:小売単位での施策となるため、量的指標であるリーチが限定的で各施策のボリュームが出にくい。投資判断が難しい
・組織の壁:小売各社に向き合うメーカーの営業部門が出稿窓口となる場合、「販促費」から予算が捻出される。そのため即効性が優先されやすく、中長期的なブランドビルディングの視点が後回しになりがち

購買に直結しやすい施策としてのメリットが強調されるあまり、認知拡大やブランドビルディングなどへの貢献や他メディアとの連動といった視点が欠落しがちで、リテールメディアの活用促進を妨げる要因にもなっていた。

新ブランドの市場導入でリテールメディアを活用したファイントゥデイは、これらの壁をいかに乗り越えたのか。

高価格帯市場への導入でリテールメディアに着目

ファイントゥデイは、2024年2月に新ヘアケアブランド「+tmr(プラストゥモロー)」を全国発売した。「いい髪はタンパク質から」というコンセプトを掲げ、タンパク質に着目した髪への「本質志向」に応える新たな選択肢を提案する。発売2カ月で累計出荷数195万個を突破。同年秋にはシャンプー、トリートメント、ヘアセラムを同梱した企画品を異例のスピードで発売。2025年9月にはダメージケア向けのラインを発売するなどラインナップを拡充している。

2024年2月に発売した+tmr(プラストゥモロー)

資生堂のパーソナルケア事業を継承したファイントゥデイは、「TSUBAKI(ツバキ)」や「uno(ウーノ)」などの有力ブランドを持つ。それでも「プラストゥモロー」の市場投入は、コロナ禍を経て成長を続ける高価格帯(単価1400円以上)市場への新規参入という新たなチャレンジだった。

ローンチにあたって活用したのがリテールメディアだ。日本におけるマーケティング部門を統括する益川竜介氏は次のように話す。

「迷っているお客様の背中を、購買直前のタイミングでそっと後押しすること、また、店頭でスマートフォンを操作しているお客様に対し、ポイント付与などの具体的なアクションのタイミングで効果的な接点を持つことができるという点に魅力を感じました。想定している購買層や店舗にピンポイントかつ最適なタイミングで情報をお届けできる可能性にも魅力に感じました」

ファイントゥデイ 日本事業本部 ブランドマーケティング部 Vice President 益川竜介 氏

複数の小売アプリに横断的に広告配信が可能

ブランドローンチにあたって採用したのは、ドコモグループのDearOne(ディアワン)が展開するリテールメディアプラットフォーム「ARUTANA(アルタナ)」。MAU約4750万人のリテール公式アプリ群(41アプリ)に横断で広告配信可能なアドプラットフォームだ。ドラッグストア、コンビニ、ホームセンターなど、複数業種のリテール公式アプリに対して横断的に広告を配信することができる。

リテールメディアプラットフォーム「ARUTANA」

この施策は、発売後約1カ月間にわたって実施した。具体的には、「プラストゥモロー」の購入経験があるユーザーと過去に1000円以上のシャンプー・ヘアケア関連商品を購入した経験を持つユーザーを、ターゲットセグメントに設定。広告クリエイティブは、複数の小売りチェーンのアプリを通じて網羅的に配信された。DearOneの川村兼一郎氏は、「ブランドローンチという重要局面で、商品の特徴やメリットを的確に伝えることを主眼とした展開でした」と振り返る。

DearOne 執行役員 ビジネス推進部 ゼネラルマネジャー 川村兼一郎 氏

今回のARUTANA活用施策を通じて、ファイントゥデイはROAS(広告の費用対効果)において、272%という極めて高い成果を達成した。広告に接触したユーザーのIDを、各リテールパートナーの会員IDと照合することで、その後の購買行動にどのように貢献したかを追跡できる点も功を奏した。

益川氏は今回の施策について、その効果が具体的に可視化されたことを評価する。

「広告が最終的な売上にどれだけ貢献したかを把握することは、長年の課題といえます。テレビCMなどのマス広告では、その効果を定量的に捉えることが難しく、デジタル広告においても、ECサイトでの購入とは異なり、最終的な店頭での購買行動を追跡することが困難なケースが少なくありませんでした。

しかし、ARUTANAのようなリテールメディアを活用することで、この課題が解消され、投資対効果を可視化できるようになりました。これは、メーカーにとって非常に大きな進歩だと感じています」

新商品・季節商品でリテールメディアが効く理由

米国などの成功事例からリテールメディアに注目が集まる一方で、国内での普及は道半ばともいえる現状がある。同社は他のメディアやプロモーション手法を含めたメディアプランニングで、生活者の記憶に長く留めてもらうようコミュニケーションを組み立てているのがポイントといえそうだ。

「商品数、そして情報量が飛躍的に増加している現代において、一度の広告接触で顧客の購買決定の瞬間までその関心をつなぎ止めておくことは、もはや容易ではありません。それゆえ、お客様との接点を、より細分化し、より精緻に設計していくことが不可欠となっています。

リテールメディアはあらゆる顧客接点の中でも、意思決定の直前のタイミングで訴求できる点で非常に有効で、非計画購買を促すことができます。特にプラストゥモローのような新商品や季節ごとのキャンペーン訴求にマッチすると考えています」(益川氏)

川村氏は、「ブランド自体の浸透が進んだことや、新ラインの追加といったタイミングの良さも影響している可能性もありますが、リテールメディアの特性を理解し、より効果的なセグメンテーションやクリエイティブの最適化を行うことで、継続的な成果が期待できることを示唆しています」と述べた。

先に挙げた、リテールメディアをめぐってメーカーが陥りがちな「3つの壁」について、益川氏はどう考えるのか。

「私たちは、お客様の24時間の中で、どの接点を押さえられるかというのを常に考えています。テレビほかマスメディアも有効な手法のひとつですが、人々の目がスマホに向けられていることも多く、それだけでは十分ではありません。

そうした中で、店頭は昔も今も有効な顧客接点であり、私たちはリテールメディアを単に販促のためのメディアとは考えていません。ARUTANAも今後さらにネットワークを拡大されると伺っていますが、達成されればそれは十分に『メディア』として成立しうる。そのような期待も込めて注目しています」

ファイントゥデイが考えるリテールメディア。顧客との接点であり、同時にコンバージョンにつなげる重要なポイントと捉えている

顧客接点をつくるドコモのリテールメディア構想

NTTドコモは、保有する契約者情報や各種データをもとにしたリテールメディア構想を掲げている。1億IDを超える会員基盤をベースに、店舗内のメディア設置にとどまらず、ID-POSデータを起点に接続されたオンサイト(店頭)とオフサイト(店頭以外)のコミュニケーションチャネルを統合してチェーンストアやメーカーのDX、売上最大化を目指す。

ドコモでリテールDX推進に取り組む片岡寛氏は、ドコモグループが描くマーケティングプラットフォーム構想と、リテールメディア構想について、そのビジョンを語る。

「わたしたちは、まずARUTANAの連携を広げて、お買い物に寄り添うアプリ広告として多くのクライアント様に支持されるリテールメディアに育てていきます。既存のdポイントアプリやd払いアプリとあわせてオンサイト(店頭)の顧客接点が広がります。また、屋外サイネージやコネクテッドTVといったオフサイト(店頭以外)のメディア展開も強化していきます」

NTTドコモ マーケティングイノベーション部 リテールDX推進室 リテールソリューション担当課長 片岡寛 氏

この構想の核心となるのが、ドコモが保有する約1億IDの顧客データ基盤との連携である。

「ID POSデータ、そしてドコモの保有する様々なデータを掛け合わせることで、これまで個別に存在していたデータを、シングルIDで一元管理し、顧客の購買行動をより深く理解することが可能になります。ARUTANAとドコモの基盤データが結びつくことで、広告に接触したユーザーのその後の行動までを捕捉できるようになり、より有効なデータが得られます。こうした取り組みで、製造から配送、販売に至るサプライチェーン全体のDX化を支援していくことができます」(片岡氏)

「今回の事例のように、新ブランドの立ち上げや新商品の認知拡大において、リテールメディアは強力な武器となります。そして、その後の購買継続性や、購入者層の分析をドコモのデータベースで行うことで、より深い顧客理解につなげることが可能になります。まだ発展途上の部分もありますが、DearOne社とともに、このデータ連携をさらに強化し、メーカーの皆様へ、より高度なマーケティングソリューションを提供していくことを目指します」と片岡氏は、今後の展望を語った。

ファイントゥデイ×ドコモ×ARUTANA 施策のポイント

・購買データへのニーズが高まっているほか、店頭での購買時もスマートフォンを利用するシーンが増えていることなどが、リテールメディアへの需要を後押ししている

・リテールメディアは意思決定の直前タイミングで顧客を後押しする顧客接点として有効であり、非計画購買促進が可能。新商品や季節ごとのキャンペーン訴求にマッチ

・ARUTANAは、チェーンストアの公式アプリに横断的にマーケティング施策を実行できるアドネットワークとして国内最大級の規模を持つ

・具体的な施策を通じてROASが向上したことはもとより、これまで把握が困難であった最終的な店頭での購買行動の追跡ができることにより、広告効果が見えることもメリット

・ドコモグループのリテールメディア事業の基盤となる顧客データは、生活者の購買を取り巻く行動をフルファネルで、シングルIDで捉えていることが特長

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株式会社NTTドコモ

Webサイト:https://ssw.web.docomo.ne.jp/marketing/
メール:ad-sales-ml@nttdocomo.com

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