情報収集への不満: 検索しても自分向けの「答え」が見つからない
前回の記事で見た通り、令和シニアは旺盛な情報探索意欲を持つ世代です。しかし、この意欲に対して、現状のマーケティングが対応できていないという大きな課題があります。私たちの調査では、「自分の年代向けの情報が少ないと感じる」というスコアが、20〜50代の20.8% に対し、60〜70代では35.1% と、顕著に高くなっていることが明らかになっています。
このデータは、極めて皮肉な事実を提示しています。最も情報探索に積極的で、検索のスキルも高いはずの令和シニアが、最も情報に飢えているということです。なぜこのような矛盾が生じるのでしょうか。その原因は、彼らの積極的な検索行動と、企業やメディア側の情報提供のズレにあります。令和シニアは、情報を探す際、単に「ファンデーション おすすめ」といった曖昧なキーワードではなく、「60代 ファンデーション おすすめ」といったように、自分の世代向けにフィルタリングされた情報を求めて検索行動を取っています。これは、自分に合った商品を追求したいという彼らのこだわりの現れです。彼らにとって、情報は「量」ではなく、「自分が使えるか」という「質」が重要であり、無関係なノイズを排除しようとします。
しかし、企業側が提供するデジタル広告やコンテンツの多くは、依然として若年層向けあるいは全年齢向けとして提供されています。その結果、令和シニアが「60代向け」というフィルターをかけた途端、情報が極端に少なくなるという市場における情報提供の欠落が生じているのです。
つまり、令和シニアは情報探索の意欲も行動力もあるにもかかわらず、情報提供側がその意欲に応えられていないという問題があります。
若年層と同じデジタルメディア戦略は通用しない
また、令和シニアはデジタルメディアとの関係では、広告やコンテンツをきっかけに関連情報を検索し、必要な情報を自分で集めて納得するまで調べるという能動的な姿勢が見られます。しかし他年代までと一律同じようなデジタルマーケティングが通用するわけではありません。
これまでも紹介した通り、60代のスマートフォン保有率は90%に近づいています。さらに、SNSの利用も高まっており、例えばInstagramの利用率も2023年から2024年にかけて12.1ポイント増加しており(総務省調査より)、インターネット利用の中でもスマートフォンを軸にしたデジタルメディア利用が急速に広がっていることがわかります。
こうした動きは市場にとって大きなチャンスである一方、2025年時点ではまだ過渡期にあります。保有率や利用率の高さは、そのまま必ずしも使いこなしていることを意味するわけではありません。だからこそ、令和シニア特有の意思決定プロセスを踏まえた戦略設計が求められます。
『THE FRONTLINE GENERATION 令和シニア なぜいまZ世代マーケターは60代に「未来」を見るのか?』博報堂ストラテジックプラニング局、Hakuhodo DY ONE著
例えば、令和シニアの人口規模の大きさに着目し、デジタルメディアの利用率の高まりをそのまま活用して、若年層と同じ戦略を展開してしまうと、ブランド認知は向上しても購買には結びつかず、結果として売上やROI(投資利益率)が伸び悩むリスクがあります。
こうした課題に対し、Hakuhodo DY ONEの令和シニア研究所は、現代のシニア像を徹底的に分析し、広告・マーケティング領域における最適なアプローチを研究しています。2024年に発表した「令和シニア白書」では、これまで紹介してきたような令和シニアの「Z世代並みに強い好奇心」や、「スマホの普及による動画メディアやSNS活用率の伸長」「新しい学びや趣味への積極性」といった特徴などを明らかにしてきました。
令和シニア研究所は、単なる「高齢者」という年齢によるラベリングや、一律な「老後像」で捉えるのではなく、世代的な原体験・ライフステージ・価値観・浸透してきたデジタルメディア導線などに基づくパーソナライズ戦略を重視しています。本記事では、令和シニア研究所より、令和シニアへの効果的なアプローチについて、「データ活用による情報行動・価値観の見える化」「最適なメディア設計」「特性を活かしたコミュニケーション戦略」を、実例も交えながら紹介していきます。
