宣伝会議が2026年2月17日、18日の2日間で開催した「KAIGI GROUPフォーラム」。多彩なテーマの中から、量から質へと変化を遂げるインバウンドマーケティングに関する複数セッションの模様をレポート。
多国籍化が進むインバウンドの最新動向や成功事例について、流通大手のパルコ、エディオン、インフルエンサーマーケティングを手がけるmov、そして海外現地メディアとの連携を強みとするグローバル・デイリーが紹介した。
【パルコ×エディオン】インバウンド売上500億円へ。
今求められる多国籍化対応と成功メソッド
最初のセッションでは、パルコにおいて渋谷店営業課兼店舗事業戦略室の山口豪氏、エディオンのインバウンド営業部の浅生佳壽彦氏が登壇し、流通の最前線から見たインバウンド市場の変化と、それに対応するための具体的な戦略が語られた。
(左から)パルコ 渋谷店営業課兼店舗事業戦略室 山口 豪 氏、エディオン インバウンド営業部 部長 浅生 佳壽彦 氏
パルコでは、コロナ前は100億に満たない程度だったインバウンド取扱高が、コロナ禍を経て急速に成長を遂げ、今期は500億円を超える見込みだという。この背景には渋谷店と心斎橋店の存在が大きい。特に渋谷店では、ビーガン居酒屋やビーガンラーメンといったユニークなテナントが海外からの観光客を惹きつけており、売上の40%以上をインバウンドが占める月もある。
山口氏は、渋谷は大規模な再開発が行われ、映画の舞台などにもなっていることから、東京の象徴的な場所として海外観光客からの人気を高めていると指摘。インバウンド戦略においては、こうした時流に乗ることが重要だと分析する。
また、顧客の国籍が多様化している店にも注目だ。渋谷パルコのデータでは、2024年には中国からの観光客が増加したものの、東アジア3国(台湾、中国、韓国)の売上シェアは相対的に低下した。その代わり、アメリカや他の国からの売上が大幅に増加しており、この多国籍化への対応が次のテーマとなっているという。
具体的な施策としては、2021年までに様々な施策を打ってきた中でたどり着いた「MEO(Google Map)」「SNS施策(運用〜KOC施策)」「決済販促キャンペーン」などに注力。旅マエ→旅ナカでの訴求や、効果的な施策に集約する方針に切り替えている。
エディオンも中国市場の影響を受けつつ、台湾・韓国・欧米など、顧客の多国籍化が顕著に進み、インバウンド消費の「構造変化」が起きていると浅生氏は語る。かつての「爆買い」から、現在は「納得・体験型」の購買へとシフトした。この変化に対応するため、エディオンでは「MD(商品)・売り場・人材」を三位一体で転換する必要があると考え、これまでの国籍別分析に加え、年齢層や旅行目的といった要素を掛け合わせた、より詳細な顧客セグメンテーションを進めていく。さらに、空港やOTA(Online Travel Agent)、SNSなど外部パートナーと連携し、旅行全体の導線の中で付加価値を提供できるような仕組みを追求していく方針だ。
さらに、属人化していたインバウンド対応からの脱却も戦略に組み込む。従来の「気合い」に頼った接客ではなく、国籍や商品別の説明ポイントを標準化し、顧客が比較・納得できる導線設計と多国籍対応を前提とした教育を組み合わせた「仕組み化」を図る。美容家電などでは、実際に効果を実感してもらうことが可能であり、これがリアル店舗ならではの強みだと強調した。
【mov】訪日客の指名買いを誘発する、新たなインフルエンサー活用法
続いて、movの川西哲平氏が登壇。従来のインフルエンサー活用ではなかなかうまく行かない企業が多い中、インバウンドプロモーションの課題と新たな解決策を提示した。
mov 社長室 川西 哲平 氏
川西氏は、訪日客の情報源がSNSや口コミ中心である点に着目し、旅行前に作成する「買い物リスト」に入れてもらう「目的購入」を促すことが重要だと指摘。しかし、従来のインフルエンサー施策はコストや成果測定の面で課題が多かった。
この課題を解決するため、同社では在日外国人のインフルエンサーを活用したマッチングサービス「trial JAPAN」を提供している。このサービスは、従来のプロモーションとは異なるユニークな仕組みを持つ。
まずは、インフルエンサーが自ら店舗へ赴き、対象商品を代理購入し、その後商品を実際に試し、良いと感じた場合にのみ、自身のSNSで任意に投稿する。そのため、企業は手間をかけずに「リアルな口コミ」を創出し、店舗への送客と売上向上、さらには「ついで買い」のデータ分析まで可能になるという。訪日外国人向けの情報もどんどん増える中、インフルエンサーが実際に商品を使用・評価したものを発信する、この循環を作ることがこれからのインバウンド対策では重要だ。
【グローバル・デイリー】インバウンドの成否は“現地理解”で決まる。選ばれるための戦略アプローチ
最後のセッションでは、グローバル・デイリーの荒井良治氏が登壇。「インバウンドの答えは対象国の現地にこそある」という信念のもと、18年間の経験で培った分析手法と戦略を解説した。
グローバル・デイリー 代表取締役 荒井良治氏
荒井氏は、多くの企業が「なぜ自社の商品が選ばれたのか/選ばれなかったのか」という現地目線の文脈を見失いがちだと指摘。単に情報を翻訳して発信するだけでは不十分で、「認知」から「いかに指名買いに繋げるか」に変換する必要があると強調する。
そのために同社が用いるのが、
・クライアント(製品の価値)
・現地パートナー(トレンド)
・在留外国人(生活者視点)
の3つの軸を掛け合わせた多角的な分析だ。この分析に基づき、インフルエンサー招聘や現地広告など、最適な施策を一貫した戦略設計と実行支援を行っている。大きな売上成長につながった事例も生まれているという。
さらにこの分析結果を、下記6つの調査分析メソッドで裏付けていく。
・SNS投稿のボリューム観測
・口コミのポジネガ分析
・現地市場のトレンド調査
・競合のPR戦略分析
・施策前後の追跡調査
・在留外国人へのインタビュー
現地で今まさに流行っているもの、現地の消費者がどんな文脈で商品と出会うかを、データと現地のネットワークを通じて探っていくことが重要だと語る。
今回のセッションを通じて、インバウンド市場が「多国籍化=多様化」「納得・体験型」「信頼獲得」「ストーリー創り」へと転換し、画一的なアプローチが通用しなくなっている現状が浮き彫りとなった。データを基にした顧客理解、リアルな体験価値の提供、そして旅マエの「指名買い」を促すための新しい情報発信が不可欠である。
宣伝会議では、訪日インバウンド対策に特化した新メディアブランド『インバウンド会議』を立ち上げ、記事発信やビジネスイベントを定期開催しています。イベント来場希望やリリース情報共有、また協賛については下記よりお気軽にお問合せください。
宣伝会議『インバウンド会議』編集部
houjin@sendenkaigi.co.jp






