今、多くのブランドが再評価しているのが「物理的な接点」である。その中でも、スマホの画面を越えてファンの手元に届く「ぬいぐるみ」というグッズは、いかにしてブランドへのロイヤルティを形成するのか。連載「愛されぬいの履歴書」第4回は、日本のインターネット黎明期に誕生し、最近ではソニーグループの感動を届ける役割「感動モモ」でも活躍中、2027年に30周年を迎える『PostPet(ポストペット)』の「モモ」にクローズアップ。画面の中の「メールを配るペット」から、リアルなピンクリボン活動、そして社内広報まで、ファンの日常に寄り添い、今なお熱狂を生み出し続ける立体化戦略の核心に迫る。
画面から現実世界へ!空前の大ヒットが巻き起こした「ぬいぐるみ化」
1997年1月、Mac用のベータ版が公開されて世に登場した『PostPet 』。その日がモモの誕生日となり、同年7月にWindows版が追加されると、ペットがメールを運ぶ愛らしいシステムは爆発的な人気を獲得してネット黎明期のアイコンとなった。
メールソフト「PostPet」のモモの部屋。
その後も1998年の『PostPet 2001』による機能拡大、2004年の「ケータイポストペットDX」の開始やTBS系でのアニメ化、2009年のニンテンドーDS用ソフトの発売など、時代に応じたメディアミックスを展開。さらに2007年には社会貢献活動として、「モモ妹」が「ピンクリボン公式メッセンジャー」に就任。2001年にはソニー銀行とのコラボ、2016年には四コママンガ連載、2017年にはVR展開を行うなど、“ファミリー”として常に新しい技術やライフスタイルと並走してきた。現在はソニーグループのマーケティングテクノロジー会社・SMNのマスコットキャラクターを務めるなど、現代のSNS時代に至るまで変わらぬ人気を誇り続けている。
そんなモモが、歴史の早い段階から「ぬいぐるみ」という物理的な実体を持つに至ったのは、他でもないファンからの純粋で熱烈な渇望が起点だった。
「当初、画面の中でメールを運ぶモモを『実際に触りたい、抱きしめたい』というファンのひとりが実際にモモのぬいぐるみをつくってきたことをきっかけに、グッズとしてぬいぐるみ制作をはじめることになりました」。
そう語るのは、現在SMNで“モモのよき理解者”を務めるライセンスビジネス課の高良美樹氏だ。
目指したのは、単なる便利なメールツールとしてのキャラクターの枠を超え、ユーザーの現実世界に存在させること。いつでも触れられる物理的な距離に置くことで、ユーザーの日常に寄り添う「パートナー」のような深い体験を提供することを目指したのである。
ミリ単位の配置が「モモらしさ」の核心
キャラクターを立体化する上で、最もこだわり抜かれ、現在まで厳格に引き継がれているのが「造形の絶妙なバランス」だ。
「モモの構成パーツは非常にシンプルです。だからこそ、目の位置、ピンクの色合い、耳の角度といったわずかなバランスの差が『モモらしさ』を左右します。30年近い歴史の中で素材のアップデートは行っていますが、歴代の担当者が常に気を配って守り続けています」(高良氏)。
時代が移り変わり、運営母体に変化があっても、ファンが「私の大好きなモモだ」と瞬時に認識できるアイデンティティを決して崩さないこと。このブレない造形管理こそが、長期にわたってIPの資産価値を維持し続けるための絶対条件なのだ。
リアルイベントで起きる「推しとの再会」




