AIは生活者の情報収集、購買行動を大きく変えていこうとしています。本連載では、主に購買行動に焦点を当てて、AIによる生活者変化を捉えていきます。前回は、『生活者に届く前に勝負が決まる!? ──AI検索(AIO)時代にブランドが取るべき最適化の全体像』をテーマに記事を公開。今回は、「AI時代の『ブランドデータ戦略』」をテーマに博報堂買物研究所 マーケティングプラニングディレクターの瀧本晃裕氏が、博報堂 コマースコンサルティング局 エージェンティックコマース領域 担当部長の吉田 敬氏に最新のトレンドを聞きました。
関連記事
AIがもたらす購買行動の変化と「情報設計」の見直しの必要性
瀧本: 生活者がAIを日常的な相談相手として使い始め、購買行動も「対話」から始まる「DREAM」モデルへと移行しつつあります。これまでは、例えばパソコンを購入する際にも「パソコン 2026年 おすすめ」といったキーワードで検索して結果を読み解いていましたが、今や「仕事でも使える、ゲーミングPCを探している」というように、自身の生活文脈を含めてAIに相談する時代が始まっています。企業はこの生活者の意図を正確に理解するために、具体的にどう情報設計を変えていくべきなのでしょうか。
吉田:まさにECの検索のように商品名を検索するという時代が変わりつつあります。漠然とした悩みやニーズをエージェントに問いかける時代へと突入している以上、企業が用意する「商品マスタ」の情報設計も根本から変える必要があります。
現状、多くの企業が持つ商品マスタやECデータベースのデータ構造は、型式やハードウェアのスペック情報、容量といった機能スペック情報を中心に構造化されています。しかし、生活者がライフスタイルの悩みや文脈に沿ってAIに相談したとき、このスペック情報だけでは、AIが気の利いた提案をすることは難しいでしょう。
例えば、ドラム式洗濯機を例に挙げましょう。生活者がドラム式洗濯機に求める体験価値は「梅雨の時期に夜遅く帰ってきても、家族全員の衣類を洗い、翌朝すぐ着られるように乾かせること」です。これを商品マスタ側にもしっかりと盛り込んでおかなければ、AIは「この商品は生活者の悩みにマッチしている」と判断できません。つまり、「夜間乾燥モード搭載」というスペック表記ではなく、「天気を気にせずいつでも干せる」「夜中に静かに回せるから寝ている子どもを起こさない」といった商品の生活文脈でのメリットを、データエンリッチメント(データ拡充)によって商品マスタに追加していくことが不可欠なのです。
瀧本: なるほど。データエンリッチメントが不可欠だということですが、具体的にはそのデータをどこに持たせ、どのようにAIに理解させるイメージなのでしょうか。