茨城県立下妻第一高等学校の生井秀一校長は、マルチモーダルAIエージェントプラットフォームを展開するジールズの協力を得て、自身の知識や教育哲学を学習させた対話型AIアバター「AI校長 生井先生」を開発し、2026年7月7日より提供を開始した。
生井氏は、変化の激しいVUCA時代において、自ら課題を発見し行動する力を育む「アントレプレナーシップ教育」の普及を目指し、教育者や保護者が時間や場所を問わずに相談できる革新的な対話環境を構築した。
元・花王EC推進部長という民間企業での経歴を持ち、「アドタイ」のコラムニストとしても発信している生井氏。同校への着任後は、「伝統を守りつつ新しい価値を取り入れる」というビジネス界における「両利きの経営」を学校組織に落とし込み、紙中心だった公務プロセスのデジタル化や、生徒・教員に新しい体験価値を提供するなど、学校組織のDXを最前線で牽引してきた。
今回のAIアバター導入について生井氏は、「教員がAIを活用することで、自分の仕事が奪われるわけではなく、もっと違うやり方で新しい価値を生み出せるはずだ」と期待を寄せる。ミスを絶対に起こしてはならないという前例踏襲主義に陥りがちな教育現場の文化に対し、テクノロジーによる業務変革と、新たな学習体験の創出という両面から一石を投じる狙いがあるという。
特に本取り組みで期待されるのが、従来の学校コミュニケーションにおける心理的ハードルの解消だ。進路指導の現場などでは、生徒が教員からの評価や指導方針を気にするあまり、言いたくても言えない本音や進路の不安を抱え込んでしまうケースが少なくない 。生井氏は「進路指導の先生だと自分の評価などが気になってしまうが、AI相手であれば気兼ねなく本音で相談ができる。誰もが積極的に校長室へ来られるわけではないため、AIを介することで、より本音を引き出しやすく、シャープな進路選択が可能になる」と、AIアバターならではの相談体験の優位性を指摘する。
今後は利用履歴から質問の傾向をデータとして蓄積し、教育現場の潜在的なニーズ把握にも役立てる意向だ。
民間企業で徹底されてきた「顧客満足(カスタマーファースト)」のカルチャーを教育界へ恩返しとして根付かせたいと語る生井氏。一方通行の情報発信にとどまらず、語り手の熱量や姿勢までを伝えるテクノロジーをフックに、教育現場・家庭・地域が一体となって子どもの挑戦を支える新たな組織風土の変革を目指していきたいとしている。
