生成AIは、言葉を映像に変える技術だ。だとすれば、頭の中に誰よりも豊かなイメージを持っているのは目の見えない人ではないか。全盲の4人が監督を務めたミュージックビデオの制作背景を、SHIKIの南俊輔さんと、生成AIクリエイティブを担当した10TENPARADEの宮城明弘さんに聞いた。
視覚障害者の脳内を映像化
全盲の視覚障害者の4人が映像監督となり、生成AIで楽曲を映像化するプロジェクト「The Unseen Beauty」が、2026年4月に始動した。プロジェクトにおける1作目は、ヒューマンビートボックスクルー・SARUKANIの楽曲をアレンジした『CROWN(Water Remix)』のミュージックビデオの映像監督を4人が共同で務めた。日本テレビの縦型動画チーム「バイラルポケット」とカルチャートレーディングカンパニー「SHIKI」の共同企画である。
プロジェクトの発端は、日本テレビが次世代のコンテンツ制作に生成AIを取り入れたいと考え、SHIKIの南俊輔さん、10TENPARADEの宮城明弘さんに声をかけたことだ。企画を練るなかで浮上したのが、「生成AIは言葉をビジュアルに変換する技術としての側面がある」という点から、視覚障害者を映像監督に据えるという案だった。南さんは「豊かな脳内の感覚を言葉にしてAIで変換することで、まだ誰も見たことのない映像体験が生まれるのではないかと考えました」と話す。
この仮説を形にするにあたって参画したのが、バリアフリーeスポーツ事業などを手がけるePARAだ。同社から、eスポーツプレイヤーの北村直也さん、eスポーツプレイヤーでありePARAの海外広報も務める「真しろ」こと藤本昌宏さん、俳優・劇作家の関場理生さん、ナレーターとして活動する西脇有希さんら、4人の全盲のクリエイターが映像監督として参加。脚本・映像構成は脚本家の廣田純平さんが担当した。
監督を務めた4人のクリエイター
ePARAの4人に声をかけたのは、「大前提として、彼ら自身がクリエイターであったからです」と南さんは説明する。
対話から始まる制作
制作は、「対話」と「言語化」を軸にしたワークフローで進められた。4人は同じ場に集まって楽曲を聴き、情景や質感、感情といった抽象的な印象を話し合い、AIが映像に変換するための言葉として書き出していく。
当初はそれぞれのイメージにまとまりがなかったため、共通のモチーフとして「水」に集約させた。以降は、廣田さんが作成したシナリオの叩き台を4人に戻して意見を募る作業を行いながら制作を進めた。「『水』というモチーフがさまざまに形を変え続けることで、人間の感情をいかに表現するかということを重視したストーリーにしました」(宮城さん)。




