広報・PRの成果を測るとき、私たちは何を重視しているでしょうか。記事掲載数、メディア露出、SNSのリーチ数など、情報がどれだけ広がったかを示す数字は、今も重要な評価指標です。しかし、情報が広く届いたことと、社会に影響を与えたことは、必ずしも同じではありません。
今回紹介するのは、西アフリカのナイジェリアで実施された、第31回ナイジェリア経済サミット(NES31)の広報キャンペーンです。ナイジェリアのPR会社Boucles Africaが、民間主導の政策提言組織Nigerian Economic Summit Group(NESG)と展開したこの取り組みは、「規模から戦略へ、認知から影響力へ」という転換を掲げました。
単にイベントを大きく報道してもらうのではなく、そこで議論された経済政策を、政府や企業の意思決定につながる社会的な議論へ発展させる。そのために広報戦略そのものを見直した点が、この事例の特徴です。
プロジェクト説明資料より抜粋(Boucles Africa社提供)
1億人を超える情報接触、その先にあった課題
NESGは30年以上にわたり、ナイジェリアの経済政策や制度改革について提言してきた民間主導のシンクタンクです。政府、企業経営者、開発機関などが集まる経済サミットは、同国を代表する政策対話の場となっています。
前回の第30回サミット(NES30)では、デジタル媒体の推計読者規模が1億8200万人以上、総閲覧数も1億3300万回以上に達するなど、大きな露出を獲得しました。しかし、発信内容に対する否定的な反応が16%を占め、政策の趣旨が誤って解釈されるリスクも残されていました。
また、関心がイベント開催時に集中し、その後の継続的な議論や政策への影響に十分つながっていないことも課題でした。つまり、情報は広がっていても、その意味が必ずしも意図した形で受け止められていなかったのです。
そこでBoucles Africaは、第31回に向けて戦略を転換しました。目指したのは、より多くの人に情報を届けることだけではなく、政策決定者や企業経営者など、実際に経済改革へ関与できる人々へ、より正確で一貫したメッセージを届けることでした。
プロジェクト説明資料より抜粋(Boucles Africa社提供)
イベントが始まる前から「議論の枠組み」をつくる
今回の施策で注目したいのは、メディアへの働きかけをイベント開催前から組み立てた点です。
Boucles Africaは、経済改革に関する主要な論点を事前に整理し、重要な報道機関と共有することで、サミットで何が議論され、なぜ重要なのかを伝える準備を進めました。開催中には、確認済みのメッセージを複数の媒体へ迅速に展開し、登壇者や関係者の発言とも連動させました。
ナイジェリアの主要テレビ局Channels TV、Arise TV、国営放送NTAなどでの報道に加え、経済紙BusinessDay、一般紙The Guardian、Punchなどへの掲載を獲得。さらにBBCやBloombergを通じた国際的な情報発信も行われました。
興味深いのは、空港のデジタル広告も活用したことです。ラゴスや首都アブジャの空港で計5万7620枠の広告表示を実施し、一般生活者への大量露出よりも、移動する経済界の幹部や政策関係者との接点を重視しました。
メディアリレーションズ、広告、関係者の発信を組み合わせながら、誰に、いつ、どのような文脈で情報を届けるかを設計したのです。

