「『読める人』だけの社会にしない。ルビが拓く、知性へのアクセス」—松本大さんの「私の広告観」出張所

月刊『宣伝会議』では、社会に大きな影響を与える有識者が、いまの広告やメディア、コミュニケーションについて、どのように捉えているのかをインタビューする企画「私の広告観」を連載中。ここでは「私の広告観 出張所」として、インタビューの一部をお届けします。

今回登場するのは、1999年、インターネット黎明期にマネックス証券を創業し、オンライン証券という新たなビジネスモデルを切り拓いた松本大さん。現在は金融の枠を超え、社会のあらゆる情報へのアクセシビリティを高める活動にも注力しています。その活動の中核をなすのが、2023年に設立した「ルビ財団」です。なぜ、松本さんは今、コミュニケーションにおける「ルビ」の重要性に着眼したのか、話を聞きました。

※本記事の全文は、月刊『宣伝会議』12月号に掲載されています。

avatar
松本大さん

1963年生まれ。東京大学法学部卒業。ソロモン・ブラザーズ、ゴールドマン・サックス(最年少ゼネラル・パートナー)を経て、1999年にマネックス(現マネックス証券)を設立。日本のオンライン証券の先駆者として市場を牽引した。マネックスグループ会長兼取締役会議長。東京証券取引所、マスターカードなどの社外取締役も歴任。2023年設立の一般財団法人ルビ財団ではファウンダー・評議員を務め、「ルビのある社会」の実現に向けて多角的な活動を展開している。著書に『「振り仮名」があれば、学力は上がるのか』(ポプラ新書)。

Q.松本さんはマネックス証券の創業から現在の「ルビ財団」の活動に至るまで、一貫して「アクセスできること」にこだわられています。なぜ今、コミュニケーションにおけるルビに着眼されたのでしょう。

そもそも私がマネックス証券を立ち上げたのも、専門的な用語に気後れしてしまうような、それまで敷居の高かった証券会社とのやりとりを、誰もがスマートフォンやパソコンから気軽に投資へアクセスできる場に変えたかったからです。

難読語や専門用語にあえてルビを振らない姿勢は、一種のマウンティングになり得ます。「知らない人にはわからないでしょう」という空気をつくってしまう。金融の世界もそうで、仮想通貨が流行った頃、トークンだ、ブロックチェーンだと専門用語を並べる説明を聞いても、何を言っているのかさっぱりわからないことがよくありました。

漢字が読めなくて、本を閉じてしまった経験は、誰にでもあるはずです。読み方さえわかれば、意味がわからなくても自分で調べることができる。でも読めなければ、そもそも学ぶことすらできません。複数の読み方を持つ漢字を使いこなす日本語だからこそ、まず読めることが、学びの必須条件なのだと伝えたかったのです。

2026年6月に上梓した『「振り仮名」があれば、学力は上がるのか』(ポプラ社)。すべての漢字にルビを振った新書で、振り仮名の存在が学ぶ力そのものにつながっていくことを説いている。

Q.広告やコミュニケーションの現場において、ルビはどのように活かすことができるでしょうか。

平仮名ばかりにする「やさしい日本語」も大切です。ただ、本来の日本語は江戸時代から、漢字仮名交じり文に振り仮名を添えて読まれてきました。漢字という文字が持つコンセプトや深い世界観を遮断するのではなく、ルビを添えることで、子どもや外国人も新しい概念に触れられる。受け手の力を信じ、世界を広げるツールこそがルビなのだと思います。

「ルビがないほうがかっこいい」という先入観はあるかもしれません。しかし江戸時代の木版画には、右側に読み方のルビ、左側に意味を添える表現がありました。漢字があるからこそ伝わる強いコンセプトもある。ルビの大きさや色、あるいはデジタルでの切り替え技術など、工夫の余地はまだまだあるはずです。そこは、クリエイターの皆さんにこそ楽しみながら考えていただきたい部分です。

Q.情報へのアクセシビリティを高めることが、社会や生活者にどのような影響を与えるとお考えですか。

SNSの短い動画や感覚的な情報ばかりに触れ、長い文脈を読み解く力が弱まると、外部からの情報操作や感情的な世論誘導に対して脆くなります。国力を支え、多様な価値観の中で社会の安定を保つためにも、誰もが豊かな文脈にアクセスできる環境を整えることが重要なのではないでしょうか。


…松本さんのインタビュー記事全文は、10月30日発売の月刊『宣伝会議』12月号に掲載しています。

advertimes_endmark
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事