「宣伝会議」編集長 谷口 優
おかげさまで『宣伝会議』は今年4月で、創刊60周年を迎える。創刊当時は民放テレビ局の開局が相次いだ頃。テレビCMを中心に、日本においてマス広告が進化・発展を遂げていく時期にあたり、その活用の知識やノウハウが強く求められた時代だった。その後、経済は発展し所得は増し、拡大していく需要をいかに効率的に刈り取るかが、企業活動の重要な課題となっていく。そこではマス広告が大きな役割を果たした。
(1)「運用」する広告
それから60年経過した今年、市場環境は大きく様変わりしている。少子高齢、内需縮小傾向を受け、新規開拓は海外市場へと目が向いている。一方、国内市場に対しては「既存顧客との関係強化」、広告も効率的に「運用」する発想へと変わってきた。効率を追求する流れの先にあるのが、オンライン広告領域で進化する「アドテクノロジー」。顧客との関係構築の先にあるのが「ソーシャルメディア」活用、「ビッグデータ」を活用した顧客分析、「CRM」といった手法や技術への今、改めての期待と考え、2013年も引き続き注目されると予測する。
(2)パブリッシャーの視点
また自社サイト、SNS始め、企業と消費者が直接コミュニケーションできる接点もますます拡大。他のメディアのリーチ力を使わずとも、潜在顧客を集めてこられるだけの魅力的な「コンテンツ」、サービスを企業自ら企画する力がマーケティング力の差となりそう。企業側にも「パブリッシャー」としての視点、発想が必要となり、魅力的なコンテンツとなりうるネタを社内で見つけ、さらにそれを魅力的なコンテンツに企画・編集できる力が求められることに。またそれを支援できる外部プランナー、クリエイターの需要も増しそう。
(3)広告担当者から、真のマーケターへ
これまでの60年間、『宣伝会議』は広告を中心に企業や商品を宜しく伝える「宣伝活動」を取り上げてきた。しかしテクノロジーを使えば企業がメディアをつくり、自ら潜在顧客と接点を持つ、あるいはアプリのように日常の中に接点をつくるような商品・サービス自体を作ることも可能になっている。これまで日本の環境では広告メディアありきでマーケティングプランを考える「広告担当者」で十分に仕事が回っていた。マス広告の重要性がなくなることはないとは思うものの、企業や商品と消費者との接点をゼロから企画する「マーケター」へとその役割が変わっていくと感じる。
『宣伝会議』の誌名は『広告会議』ではなく『宣伝会議』であることに、創刊の理念と思いが込められている。企業における宣伝担当者の仕事が変化し、広告担当者ではなく真のマーケターへと進化・発展が求められる状況においても、企業・商品と消費者との関係を作る仕事に役立てていただけるよう、我々も時代の変化に対応していきたい。「紙の雑誌」という従来の発行スタイルに加え、60周年を機に新たな提供方法を加えていく予定だ。
他誌編集長による【2013年予測】
- ブレーン編集長 刀田聡子「商品、広告、CSRの境目が溶解する中で、一貫した“らしさ”を」
- 販促会議編集長 中澤圭介「来店を促進するデジタル技術の工夫と活用に注目」
- 広報会議編集長 上条慎「低成長時代の広報へシフト進む」
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