パソコンのワープロソフトや、本格的なDTPソフトの低価格化などもあって、今やどこでも誰でも編集(のようなこと)ができる時代になった。ますます我々のようなプロの編集者集団が危機に瀕してるのではないかとご心配する方もいらっしゃると思うが、それは一切無用なのだ。編集という行為を成果物の完成、すなわちプロみたいに仕上がった、という目的でやっている素人が多いからなのである。
ではプロの編集って何だ? って事になるんだが、それはモノの見方という事に尽きる。同じ「鍋料理」としても、そこをどういう切り口でフォーカスし、そして人脈を駆使していかに見たことのない誌面を提供できるか! って事なのだと信じている。確かに世の中にはプロのように仕上がった素人による成果物が溢れかえっている。それはそれでビジネスとして成立しているのだから、問題は無いのかもしれない。しかしそういう成果物には生気が無いのである。それは読む人には必ず伝わる。
デジタル分野のWebでだって同じ事である。プロのような素人ではなかなかアクセスは稼げない。最終的にプロの編集者にアクセスをあげてくれと頼むしかなくなるのである。
ではプロのような素人はどうすれば良いか? であるが、それはこちらも企業秘密なのですべては語れないが、これだけは言える。作品や書き手の志を信じるのである。ライターは書き手としての圧を持っている。イラストレーターは絵師としてのオーラを放っている。そこを信じて尊重しなければ成果物から生気は失われるのである。逆説的にいえば、そういう志やオーラを消すことが編集だと勘違いしているプロのような素人が蔓延しているとも言える。
今後、プロによる編集成果物はどんどん増えていくと思う。第二次淘汰の時代が訪れる。プロのような素人による企画は見え透いていて読者にはもうバレバレである。願わくばオーラや志ある作家が他の業界に流出しないでいて欲しいのである。
石原卓「東奔西走 関西の編プロ社長奮闘記」バックナンバー
- 第9回 編集者残酷物語と、カメラマン残酷物語(1/11)
- 第8回 ライターとは?エディターとは?(12/21)
- 第7回 ネット症候群(編プロ編)(12/14)
- 第6回 級数表とトリミングスケール(12/7)
- 第5回 関西の味についての一考察(11/30)
- 第4回 編集とは行儀ではないかという仮説(11/16)
- 第3回 江戸好みの京都特集ってどうよ!(11/9)
- 第2回 版下の時代にあったモノ(11/2)
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