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コラム

楽天大学学長が語る「EC温故知新」

送料有料でも「Amazonが気にならない」書店と、「160個入りの卵」が業者向けではなく売れていくお店が明かす「消耗戦の抜け出し方」。 ——楽天EXPOパネルディスカッションレポート2

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【前回のコラム「「楽天市場ショップ・オブ・ザ・イヤー受賞の老舗」が明かす、消耗戦の抜け出し方とは? 楽天EXPOフォーラムレポート」はこちら

7月14日、東京に続いて福岡で「楽天EXPO」が開催された。Eコマースに関するフォーラムやワークショップが行われるなか、仲山進也氏(楽天大学学長)の 『あのお店はなぜ消耗戦を抜け出せたのか ~ネット時代の老舗に学ぶ「戦わないマーケティング」』出版記念フォーラムに多くの参加者が集まった。
『あのお店はなぜ消耗戦を抜け出せたのか』発売記念としてのコラム特別編、2回目は、そのフォーラムのゲスト「筑前飯塚宿 たまご処卵の庄」畠中五恵子氏、「コミコミスタジオ」内藤剛氏によるディスカッションレポートをお送りする。

10年間で500万円分の卵を買って「おすそ分け」してくれるお客さんも

仲山進也氏(以下、仲山):「卵の庄」さんでは、卵20個・40個・80個・160個入りのなかで160個入りが一番売れる、という興味深い現象が起こっています。しかも業者さんではなく、一般のお客さんが買っていくと。その背景を伺わせてください。

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畠中五恵子氏(以下、畠中):1998年の出店当初は20個・40個入りが売れていました。楽天市場でオークションの機能ができたときに、楽天の担当さんから「オークションを使ってください」と連絡がきて、80個入りをオークションに出品してみたら、それが意外にも好評で。

80個入りを落札したお客さんは、食べきれないのでおすそ分けをするんです。「小分けパックはありますか?」という問い合わせがくるようになったり、そのうち80個入りを2つ買われるお客さんが出てきたりして。

仲山:日本中に「卵おすそ分けコミュニティ」ができあがって、その「おすそ分け力」が大きくなってきているわけですね。

畠中:このあいだ、過去10年間くらいの販売データを全部まとめてみたんです。そうしたら、いつも160個入りを2箱とか買われている方がいました。データを見てみると、10年間で500万円くらい卵を買ってくださっていました!

仲山:それも業者さんじゃなくて、一般のお客さんですか?

畠中:一般の方です。「私は『卵の庄』の沖縄支店なのよ」と自らおっしゃってくださっています(笑)。

送料を有料にすることで可能になった、新たな価値創造

仲山:「コミコミスタジオ」さんは、ボーイズラブ専門のオンライン書店というのが特長的ですが、あえて「無料だった送料を有料化した」ことで事業が発展しました。

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内藤剛氏(以下、内藤):そもそも本というのはどこで買っても同じ商品です。だからAmazonさんのように送料無料で即日届くようなお店が相手だとどうしようもないんです。

それでもしばらくは送料無料でがんばっていましたが……このままやっていくと、どう考えてもお客様と良い関係を築けないだろうと思って。3~4割売り上げが下がる覚悟をしつつ、送料無料を打ち切りました。

仲山:それで送料分のお金を使って、ノベルティグッズをつけ始めたんですね。

内藤:幸い、うちはすごく著者の先生たちと良い関係が築けていたので、オリジナルのペーパーやポストカードなどのおまけを付けさせてもらうことができました。当初は月間20~30タイトルぐらいの規模でやっていたんですが、先日調べたら、ノベルティを付けている作品は91タイトルありました。

有料化した最初の1カ月は売り上げが下がったのですが、翌月からは元に戻り、おかげさまで今は有料化前の1.4倍の売り上げになっています。

次ページ 「お客さん同士が「お店のあるべき姿」を議論して、提案をくれた」に続く