「社会部長が選ぶ今年の10大ニュース」
新聞之新聞社(東京都千代田区)主催の「社会部長が選ぶ今年の10大ニュース」選考会が12日、在京の新聞、通信8社の社会部長が出席して開かれ、1位に「東日本大震災と東京電力福島第1原発事故」が選ばれた。また、2位以下には以下の事件・事実が選出された。
2位:計画停電で社会・経済活動に影響、浜岡原発は停止も、3位:野田政権誕生、消費増税とTPP交渉参加に意欲、4位:欧州の財政危機拡大、円が最高値を更新、5位:なでしこジャパン世界一、6位:大阪ダブル選で「大阪都」構想の橋下氏らが当選、7位:オウム裁判終結。死刑は13人、8位:09年衆院選で1票の格差は違憲状態と最高裁判決、9位:八百長問題で大相撲春場所中止、25人が角界追放、10位:防衛産業や政府機関にサイバー攻撃。
また「番外」ではあったが、番外1:15歳未満で初の脳死移植、番外2:ニュージーランド地震で日本人28人死亡、番外3:台風12号・15号で大被害、番外4:米アップルのジョブズ氏死去が挙げられている。
10大ニュースから隠れている重要な事実
国民の関心の高低から見た場合は、確かに上記の事件・事実は納得のいくものばかりだが、日本の長い歴史から見れば、タイの異常洪水(自然災害)とタイ政府の対応(ポリティカルリスク)による日本国益の損失、海上防衛権の拡大戦略としてウクライナから初めて中国が空母の調達および自国初の空母建造の着手、中国・北朝鮮のサイバーインテリジェンス戦略の拡大などは、日本への明らかな継続的脅威として重くのしかかっている。
さらに、核拡散防止と軍縮を唱えるアメリカが、世界の防衛政略上の対抗策として軍事上最も重視していたマッハ20のスピードで数分以内に地球のあらゆる場所を攻撃可能とする無人極超音速機「Falcon Hypersonic Technology Vehicle(HTV-2)」の飛行実験が続けて失敗に終わり、実質的にプロジェクトが頓挫していることも、世界の防衛上の均衡に大きなひずみを生じさせている。
一方、19回目となるサイバーセキュリティの実力を争うDEFCON CTF(Defense Readiness Condition, Capture the flag)では、自国のサーバーを守りつつ敵国のサーバーを攻撃して攻略し点数を争う競技だが、世界中の名高いハッカー達が集まり熱い戦いが演じられた。日本チームは今年この大会に初めて参戦し、予選を2位で通過したものの、決勝戦では残念ながら攻撃点を1点も挙げられず、参加12カ国中、最下位に終わっている。
優勝はヨーロッパのチームとなったが、彼らは幼少の頃から国や企業から投資され、あらゆる教育を受けて現在の地位と実力を勝ち得ていた。精神論ではなく、国益を背景に優れた人材に長期間にわたり投資を継続した結果がこの順位の違いに大きく反映されている。日本チームのメンバ−にはそのような潤沢な資金提供や計画的な教育制度は一切なく、自身の努力を積み上げて勝ち取った地位であったが、残念ながら組織力という点にはかなわなかった。日本チーム名「sutegoma2」という名前も皮肉な感じがする。
世界経済は依然として回復のきざしを見せず、世界の防衛上の均衡も崩れつつある。日本ではさらに巨大地震の再発の恐れや原発問題の継続、日本特有の企業風土に基づく経営体質に端を発する不祥事など、課題は山積したまましっかりとした方向性が未だ明示されていない。2012年はこれらを反省し、国家的レベルでタイムラインを引いた抜本対策を次々と講じるべき年とならなければ、世界の国々、投資家から日本あるいは日本企業への信頼・信用は得られないものと覚悟すべきである。
白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー
- 第55回 企業対応に大きな差が出始めた「暴力団排除条例」(12/8)
- 第54回 デスクワークで世界全方位に網をかける中国サイバー攻撃の実態(12/1)
- 第53回 東日本大震災の余震はまだ終わっていない(11/24)
- 第52回 アジア太平洋経済協力会議で見せた米国の情報戦略(11/17)
- 第51回 役員に告ぐ!不作為という罠(見て見ぬ振り)が会社の息の根を止める(11/10)
- 第50回 自然災害を政策の失敗で国益の損失にしてしまったタイ政権の痛手(11/4)
- 第49回 めったに起きないはずの「前代未聞の不祥事」が続発するのはなぜか?(10/27)
- 第48回 サイバーインテリジェンスの世界で「標的」にされた日本企業の機密情報管理は大丈夫か?(10/20)
- 第47回 省庁間の発表を翻訳するのはもはやマスコミだけが頼み(10/13)
- 第46回 ソーシャルメディアをいかに危機管理に役立てるか(10/6)
もっと読む
「CSR視点で広報を考える」バックナンバー
- 孤立化する中国、新型肺炎は新たなステージに! 日本企業が注視すべきポイント(2020/2/04)
- 企業の新型肺炎対策、まだまだ不安要素は一杯! 特に致死率より「感染率」に留意!(2020/1/30)
- 親会社経営陣関与の不祥事に信頼回復の一手はあるのか?—『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(10)(2015/9/17)
- 100%子会社で重大犯罪発覚! 親会社の社長はどこまで責任をとるべきか?-『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(9)(2015/9/10)
- 経営者に梯子を外された経理部長の無念!経営者が指示した「不正会計」に対して企業再生は可能なのか?—『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(8)(2015/9/03)
- 監査役の裏切り! ハゲタカファンドによる乗っ取りの危機にさらされ、経営陣は最後の逆転の一手に何を考えたか?-『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(7)(2015/8/27)
- 産業スパイ事件!社運をかけたプロジェクトの崩壊、信頼していた部下に裏切られたら?—『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(6)(2015/8/20)
- 突然の従業員拉致・誘拐事件、あなたは他人の命の値段を交渉できるか?—『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(5)(2015/8/13)
新着CM
-
マーケティング
手作り「スイカバーの素」 ダイソーで先行テスト販売…ロッテ
-
クリエイティブ
サントリー烏龍茶や月桂冠など定番6商品、ファミマカラー限定パッケージに
-
クリエイティブ
ズンズンペンギン、ヌンヌンアザラシ…海の動物が迫るマリンワールドの広告
-
AD
広告ビジネス・メディア
営業を「ビジネスプロデューサー」に改称して6年「IGP」を掲げる電通に流れるカル...
-
クリエイティブ
新木優子がファッショナブルな間食を提案、湖池屋「ランチパイ」CMの裏側
-
広報
U-NEXT HOLDINGS、新社名にあわせたブランドコミュニケーション開始
-
クリエイティブ
「一言日記」のような言葉で心を捉えるルミネのコピー、約20年続く理由
-
AD
特集
成長企業の人材戦略
-
クリエイティブ
お米・人・製品への愛を表現、賀来健人をキャラクターに『亀田の柿の種』の新キャンペ...