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コラム

CSR視点で広報を考える

役員に告ぐ!不作為という罠(見て見ぬ振り)が会社の息の根を止める

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1カ月で役員の解任、辞任、交替が続くオリンパス事件の異常事態は他山の石

ゲオの役員分裂と架空取引から始まり、九州電力のやらせメール、大王製紙の元会長への不正融資と来て、ここ最近のオリンパスの不透明なM&A及び社長解任で、大手企業の不祥事は、日々様相が劇的に変化する劇場型社会事件としてニュースも最高の盛り上がりを見せている。

特にオリンパス事件では、1カ月余の間に役員の解任、辞任、交替が続き、コーポレートガバナンス(企業統治)や内部統制の機能が完全に喪失してしまった錯覚さえ与えている。

(オリンパス不祥事の経緯)

本来、企業には多くの不正行為に関するチェック機能が備わっている。社内の内部監査、外部監査人の監査の他にも、内部通報窓口の設置などによりコンプライアンス機能は強化されていたはずである。そうした背景の中で東証一部に上場する企業の元会長、元副社長、元常勤監査役の直接関与が長期間発覚しなかったことは驚きを隠せない。

一般的に損失隠しのための不適切な取引やそれに付随する粉飾決算は、それをさらに隠蔽するための適時開示違反や有価証券報告書の虚偽記載に連動し、関係当事者として金融商品取引所、証券取引等監視委員会、財務省、金融庁や司法当局がステークホルダーとして次々に登場する。

さらに、現時点では事実関係について詳らかにされていないため、今後の第三者委員会の調査結果に期待することになるが、調査関係者として投資助言会社、証券会社、外部監査法人、顧問弁護士などについても関係当局からの事情聴取が行われる可能性がある。

また、関与の責任者とされている3人の役員を除く現経営陣に関しても、今回問題となっている投資助言に対する契約に関して、①締結に際して決定の経営判断を行う上での適切なプロセスが実施されていたのか、②当該契約の報酬が過大であるとの判断はなかったのか、③対価に相当する助言内容か否かの検証を締結前に適切に行っていたか、④着手後の内容に関する実効性評価と検収は適切に行われたのか、⑤対価に相当しない助言内容への疑いを持たなかった稟議決定機関の背景、⑥当該助言契約の存在意義とその締結の実効性評価に関して適切であったと立証するに足る証拠あるいは客観的事実の保全の有無、などについて状況を確認されることは必至であると推察される。

一方、証券取引等監視委員会は今回の不透明なM&Aに付随する投資助言会社への支払や証券投資の失敗・損失補填に関して、①不適切な取引の内容の全容解明、実質的な損失額の確認・分析、②不適切な取引に至った原因及び動機の解明、③不適切な取引の関与者の把握(責任の所在の解明)などについて調査を進めて行くものと考える。

オリンパス事件での広報対応

一般的に不適切な取引や粉飾疑惑などでは、発覚日から第三者委員会設置までの期間は1ヶ月から2ヶ月程度かかるのは通例である。オリンパスでは、10月11日にウッドフォード元社長が菊川元会長及び森元副社長の辞任を求めたことで問題を認知、その後24日に再度ジャイラス買収に関する監査・決算についての適切さを主張した。しかし、一方で株主等から強く透明性の高い調査を求められ、10月21日には第三者委員会の設置を発表、11月1日には調査を開始している。

その意味で、事件発覚後は、オリンパスは2週間足らずで第三者委員会の設置を決定し、3週間で調査を開始するなど、対応は早期に実施されている。また、事件の確信に迫る実行関与者の特定などに関する重要情報の即時開示は、オリンパスの信頼回復に少なからず寄与しただろう。

しかし、今後、経営陣が有価証券の虚偽記載などで民事・刑事ともに責任を問われる可能性もあり、引き続きオリンパスのコンプライアンスへの不信感が高まって行く中、今後いかに第三者委員会などを通じてステークホルダーに適切な情報開示や調査協力を行うことができるかが存続の焦点となりそうだ。

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー

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