巨大余震発生の確率を高める気象庁の発表
11月18日、気象庁は地震予知連絡会後の記者会見で、11月15日から12月14日までの1カ月の間に東日本大震災の余震域で発生するマグニチュード7.0以上(最大震度5強以上)の余震発生確率を15.1%と発表した。東日本大震災以降4月21日までは同様の余震発生確率を公表してきたが、最近は行われていなかった。ちなみに4月21日の気象庁の発表では、4月26日24時までが10%、26日24時までは10%未満と発生確率を下げていた。また、3月11日以降4月21日までに発生した地震で、M7.0以上は5回、M6.0以上は73回、M5.0以上は425回記録されている。
マグニチュード7.0以上の国内の地震は、1950年から1999年までの50年間に31回発生しているが、2000年から現時点までの約12年間に既に23回発生しており、その頻度は急激に増加している。
今回の気象庁の地震予測では、地震調査委員会が地震の確率予測に使用する数式を利用したとしているが、東日本大震災前と後では余震の発生確率も7~8倍増加しているという。
こうした背景から明らかに日本は現在、地震危険国として対応を迫られている。同時にここにきて15.1%と発生確率を気象庁が上げてきたことは、単に大きな余震に対する警告だけでなく、現実の発生に備えて十分な対応のための時間を与えるためのものである。
東日本大震災は、死者1万5833人、行方不明者3671人(いずれも11月4日現在)という未曾有の被害をもたらしただけでなく、その後の津波による建造物の破壊、ライフライン・輸送経路の遮断、原発事故や放射能汚染、さらに経済混乱を招く原因ともなった。
我々は、既に地震が国民生活の脅威であると認識し、何がどこで起きたかも確実に知っている。少なくとも3.11のときとは違い、現時点では多くの生命と財産を守る準備が可能である。
着実に備えを進める企業の歩み
東日本大震災以降、私の所属する会社には多くのクライアントから短期間に実効性のある地震対策を講じるよう依頼が殺到した。その中でも優先順位が高かったものは、以下の事項である。
- 緊急時事業停止計画及び従業員避難計画(逃げ道を確保し、現場を放棄する備え)
- 想定外事態発生時の対応計画・権限・組織(「想定外」を前提とした備え)
- 被災現場以外のセカンドキャビネット(代替危機管理組織)の発動手続
- 通信手段の確保(一つの手段に依存せず複数の手段で対応)
- 事業再開を決定する確認項目(現場放棄は簡単だが、適切な再開条件の確認は重要)
- 震災関連グッズの備蓄
- 東日本大震災の経験を活かした模擬訓練
などである。
気象庁の地震予知公表に伴い、多くの企業が既に対応を完了しつつあるが、自治体や東京電力は、余震の再来の可能性に対してどこまで対応可能なのかを再検証すべきである。また、国民の不安を取り除くよう、ホームページなどにおいて対策の進捗等を随時開示することをお願いしたい。
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