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コラム

CSR視点で広報を考える

年末、朝鮮半島危機が現実的に

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北朝鮮指導者死去のニュースが朝鮮半島を震撼

19日朝、週明けトップニュースでマスコミ各社が北朝鮮指導者「金正日」の突然の死去を伝えた。郊外へ向かう列車の中での心筋梗塞が原因との発表だった。葬儀委員会は死去を伝えられた直後に232人の参列者を発表、軍・保安関係者も混乱なく一件問題なく推移しているかのように見えた。

しかし、注目すべきは、朝鮮中央通信社(KCNA)での「金正日死去」の発表がいつもの女性メインキャスター『リ・チュニ』(李春姫)によって行われたことにある。10月19日以降、約50日ほど姿を見せず、一部では「粛正された」「重病説」などの噂が飛び交っていた中、この重要な局面で再び姿を表した。

「李春姫」は金正日の専属キャスターとも言われ、これまでも北朝鮮の重要な局面で金正日のスポークスマン的役割を果たしてきた。そのような状況から考えると、今回の死去は大分前から予想され「李春姫」の発表も録画されていた可能性がある。さらに言えば「死去した日」自体も正確には不透明である。今日までの発表までに十分な準備期間があったと考えれば、葬儀参列者の決定の手際良さや軍・保安関係者の冷静な対応は納得できる。これは、後継者である金正恩が軍を中心とした体制の強化に早くも乗り出し、反駁者の統制を行い鎮静化させているとの憶測も出ている。

一方で、韓国李明博(イ・ミョンバク)大統領は19日、「金正日死去」の発表を受けて、青瓦台(大統領府)で緊急の国家安全保障会議(NSC)を開催した。韓国軍は「非常警戒態勢」を宣言し、前線地域でRF4偵察機などの偵察・監視装備を増強し、監視態勢を強化した。韓米連合軍指令部とともに北朝鮮軍の動向も綿密に監視しながら、合同参謀本部は在韓米軍側に、U2偵察機による偵察の回数の増強を要請した。

また、この混乱に乗じて北朝鮮軍がサイバーインテリジェンスなどの非軍事戦略行動に出る可能性を懸念し、韓国国防省は情報作戦防護態勢をレベル5から4へ上げるなど対応を急いでいる。

さらに、韓米は対北朝鮮監視態勢「ウォッチコン(ウォッチ・コンディション)」を現在のレベル3から2に、対北朝鮮防御準備態勢「デフコン」をレベル4から3にそれぞれ格上げすることも検討を始めており、状況は予想以上に緊迫している。

こうした混乱は、今回の「金正日死去」の発表が突然であり、米ロ韓日4国がいずれも事前に認知していなかったことによる。死去の原因が国内テロ説まで飛び交う情報混乱で北朝鮮の内政の状況は益々不透明さを増している。

朝鮮半島は一触即発の危機を回避できるか?

韓米は、毎年夏に「ウルチ・フリーダムガーディアン」と呼ばれる年次合同軍事演習を行っており、そこでは仮想戦争として北朝鮮軍の攻撃で、韓国内で10万人の死傷者が出た後、韓国軍が精密誘導兵器等を使用して北朝鮮に反撃、「金正日」を身柄拘束して、北朝鮮軍の早期鎮圧を戦略的に行う演習であるとされている。

演習では「金正日」(指導者)の拘束あるいは死去後の混乱する北朝鮮軍事体制の早期鎮圧化が大きな課題となっており、対応の遅れが多くの韓米の死傷者に直結するとの予測もある。今回の「金正日死去」はまさに演習課題と近い設定であり、韓米の緊張は計り知れないものとなっている。さらに言えば、日本が「専守防衛」を基本的戦略と考える一方、米国の軍事戦略は先制攻撃(Rapid Dominance)が常に基本となっている。

金正恩(大将)が軽はずみな判断や、一部の北朝鮮軍が韓国との間で軍事行動を起こせば、韓米は、演習ミッションを念頭に置いて一気に殲滅作戦を実施する可能性も否めない。そうなれば多くの犠牲者を出すことは必至となる。

北朝鮮にとって、「金正日」死去の日にちが偽装されたXデーであり、葬儀後を迎えた後に意図的に韓米軍の気の緩むクリスマス週間を当てたのであれば、そのときこそ何かが朝鮮半島で起きるときである。これからの1週間、朝鮮半島での動きから眼が離せない。

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