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コラム

CSR視点で広報を考える

復興、再生、コンプライアンスを軸とした複合リスク管理の年

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年初に向けて

今年は、現在もなお、東日本大震災の深い爪痕から復興途上にある日本を復興させる重要な年となる。大震災は、津波による大きな被害に加え、その後の原発問題、計画停電、放射能汚染に伴う食の安全など、日本に大きな課題をつきつけた。その影響は日本の経済全般にも及び、消費性向が変化するなど企業にも少なからず外的環境の激変に対応する能力を身につけさせた。

一方で、国として除染作業がなかなか進まず、故郷から遠く離れ孤立している国民の本格的な対策が求められることになるだろう。エネルギー行政も抜本的な見直しを検討され、原子力に依存した現在の体制に大きな変化がもたらされる可能性がある。4月からは厚生労働省が決定した新たなセシウムに対する食品の新基準が適用され、放射能汚染による食品の安全・安心による日本のブランド再生も始まる。

さらに、米国を中心としたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は、今年は現実的な移行に向けて焦点となるだろう。「参加に向けての検討」から強い日本を模索する中で、どのような選択肢を世界に向けて発信するのか、野田政権の動向に注目の年となる。

企業にとっては、ヨーロッパ諸国の経済破綻に伴う国民のデモ活動や独裁国家の崩壊、朝鮮半島の内政の不透明さなどに伴うポリティカルリスクの増大、さらに国内の大地震、タイの洪水に代表される自然災害リスクの脅威など、依然として事業継続の困難な状況が解消されずに存在する。

行政や防衛産業に対しては昨年急激に増加したサイバーインテリジェンスに対する防御対策の年となる。今後、世界は非武装戦略攻撃にシフトしていく過程で、サイバー攻撃に弱い日本というブランド再生をどう再構築していくのかも新たな挑戦になるだろう。

昨年後半に集中した大企業の不祥事。「日本特有の企業風土」と揶揄され世界から信用を失いつつある上場企業のコーポレートガバナンスやコンプライアンス体制の脆弱性について、今年は会社法の改正が予定されている。相互監視の強化や金融商品取引所からの監視も厳しくなる。経済界に対する司法捜査の目も今後顕著になる可能性が高い。企業経営者の会社の舵取りがさらに難しく、内部統制の整備強化が求められる年となる。

暴力団排除条例については、金融機関、宅配業界を中心に反社会的勢力に対する「暴排」対応が進んでいる。今年はあらゆる業界、企業、組織で「暴排」対応が本格化・浸透化する年でもある。社内の行動規範や取引先との契約の見直しも徹底され、対応の遅れが大きな企業の信用リスクとなる可能性も否めない。

警察庁は暴力団の排除や関係遮断に携わる企業関係者の安全確保に向けて保護対策実施要綱を改正し、身辺警戒員(Protection officer)を新設、暴排SPとして必要に応じて24時間体制で関係者の保護にあたることを決めた。これにより企業における暴排活動が促進され、一方で体制整備に遅れのある企業に不透明な反社会的勢力との契約が一気に流入する恐れもある。各企業は業界の流れを踏まえながら整備の欠陥を理由に反社会的勢力の標的にならないよう十分注意喚起が必要となる。

「想定外」を前提とし、外的環境変化に即応可能な柔軟な組織を目指す

今年は昨年以上に、「想定外」の事態が発生する可能性がある。経済の変化、法規制の強化、自然災害、戦争危険、テロの脅威など、外的環境の変化は個々の企業人の予想を大きく上回ることも「前提」の範囲と考慮すべきである。

重要なことは、そうした想定外かつ複合的なリスクに即応できる柔軟な組織の整備と経営判断能力を培うことである。大きな変化には大胆かつ合理的な選択肢が求められ、経営者のリーダーシップが不可欠となる。今年は、企業存続のために経営者の資質が問われる厳しい年になるだろう。

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー

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