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CSRは人のためならず ―よいCSRは会社を強くし、まがいもののCSRは会社をだめにする

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5月16日リリースのビジネス・エシクス(企業倫理)の専門誌JOURNAL OF BUSINESS ETHICS最新号から。

今回紹介するのは、「企業の社会的責任(CSR)プログラムを理解するための連続的探査研究(Julie Pirsch執筆)」という研究で、企業の従業員が、自社のCSR活動をどのように評価しているかを問う内容となっている。CSR活動の対象を社外のステークホルダーとみて、企業のブランディングに位置づける一方、その活動が表面的だったり、中途半端だったりすると、自社の従業員もCSRを「斜め」に見たり、軽視したり、もっと悪い場合は会社の社長の独りよがりや利益を損なう会社のお荷物などと考えることになってしまう。

まがいもののCSRで企業価値を損なっている企業は意外に多い

従業員1人ひとりは外部とのインターフェイスである。従業員が自社のCSRをしっかりと理解していないと、経営トップがCSR報告書やウェブサイトでいかに熱心にCSR経営を訴えても、コストをかけて行ったCSR活動が逆効果になってしまう。

たとえば、「見せかけだけのCSRか……」「また、社長の自己満足に付き合わされる……」などというぼやきも出てくるだろう。組織の体質に問題がある場合には、「コンプライアンス違反をごまかしている」といった内部告発につながることもあるだろう。

その意味で、CSRをブランディングなど、ポジティブな成果に結び付けるためにはまず社内(インナー)コミュニケーションに力を入れなければならない。そして、そのなかで浮かびあがってきた問題を1つひとつ改善してから外部に向けて発信していく必要がある。

では、論文の要旨を紹介してみよう。

「信頼できる」のCSRプログラムを開発することは重要であると認識されているにもかかわらず、従業員がどのように、「信頼できるもの」と「まがいもの」とを見分けているかについての研究はほとんどなされていない。

これは、従業員は社会とのインターフェイスであり、企業のCSR活動大使の役割を担うことが期待されていることを考えると、いささか驚きである(Collier and Esteban in Bus Ethics 16:19–33, 2007)。

従業員へのディープ・インタビューを通して行われた最近の調査により、従業員がどのように本物とまがい物のCSRを識別しているか、そしてその判断がいかに彼・彼女ら自身が所属する組織に対する認識に影響しているかが理解されることとなった。

従業員は本物のCSRを判断するうえで大きく2つの判断基準に依拠している。ひとつは、組織の本質的なアイデンティティに直結するイメージがCSRプログラムのなかで、発揮されているかどうかであり、もうひとつは、CSRプログラムそのものが発展的であるかどうかである。

前者を精査するために、従業員は、資源へのコミットメントや、CSRプログラムの要素と、感情的なエンゲージメント、善悪の判断、(一過性でなく)埋め込み型であるかどうかといった要素の連続(一貫)性を手掛かりとしている。後者は、組織がCSRを主導するリーダーシップを積極的にとろうとしているかどうかによって判断がなされている。また、信頼性は、組織のアイデンティティと従業員の帰属意識によい効果をもたらすことが明らかである。

本研究は、CSRと信頼性に関する広範な論考に寄与するとともに、信頼性やビジネス・エシクスの理論に価値ある視点をもたらすものである。

本研究によると、信頼できる「よいCSR」は社外のみならず、社内の組織力を高めるうで効果的であり、逆にまがいものの「悪いCSR」は組織が抱える問題の病巣を深めることになる。「情けは人のためならず」ということわざがあるが、「CSRは人のためならず」といえそうだ。

※『環境会議』『人間会議』では、「ビジネス・エシクスの学び方と活かし方」を連載しています。第3回「コンプライアンスの呪縛を超えて」中村葉志生『人間会議』2012年夏号は6月5日発売です。

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