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米国レポート~Ad Ageデジタル・カンファレンス(1)勢い増すインターネットTV、「見たい広告を選べる」Hulu

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文/Ys and Partners 代表取締役社長 結城喜宣

4月17日、18日の両日。ニューヨークのメトロポリタン・パビリオンで、米国の広告・マーケティング誌『アドエイジ』が主催するデジタル・カンファレンスが開催された。約700名を超える最先端の業界関係者に対し 、キーノートセッション、ワークショップとネットワーキングの機会が提供された。今回は両日にわたり参加した、Ys and Partnersの結城喜宣氏による現地からのレポートをお届けする。

今年で6回目を迎える『アドエイジ』のイベントとあって、ニューヨークのマディソンアベニュー(広告業界)とサンフランシスコのシリコンバレー(テクノロジー業界)をつなぐ試みに期待と関心が集まった。

カンファレンスのトップバッターはいまや飛ぶ鳥を落とす勢いの「Hulu TV」。日本でも2011年9月からサービスが始まっているが、オンラインビデオ広告市場の拡大とともに米国では媒体購入の選択肢として頭角を現し、新たな広告メニューも登場している。

※本レポートは、『宣伝会議』5月15日号に掲載されたものです。

アリソン・アーデン氏 アドエイジが主催するデジタル・カンファレンス
約700人が参加。冒頭の挨拶は『アドエイジ』誌の発行人、アリソン・アーデン氏。

グーグルを大きく上回るビデオ広告視聴時間

Hulu-TV

Huluのビデオ広告は、ユーチューブのようにスキップできない仕様となっている。

米国の10代後半~20代前半にテレビをビデオ録画するかと質問して驚いた。「録画?それはお父さんたちの世代がやることだよ。私たちはテレビさえ観ないよ」というのが大半の意見。確かに、うちの高校生の娘がソファに座り、テレビを見るのは一週間に一度あるかどうか。フェイスブックにユーチューブ、タンブラー、そしてHulu TVを膝の上のMacで見る。同時にスマートフォンでチャットとアプリを行き来する生活である。

デジタルネイティブと呼ばれる彼女たちは、実に1時間に27回も接触するメディアを変えるとのショッキングな調査結果がタイムワーナーから出ている。それはたとえば30分のテレビ番組を見ている間に、13回以上別のメディアに気移りする計算となる。この新しい世代にとっては、ビデオにCMをスキップできる機能がついたら大変だ、なんて議論は遠い昔の話に過ぎない 。

私たちのエージェンシーも米国で媒体を購入する際、このHulu TVがひとつの選択肢にあがるようになってきた。そして現在、いくつかのクライアントのために地域ベースで枠を購入している。

ComScoreの調べによると、Hulu TVの2月のビデオ広告視聴数が1億5000万回に対し、Googleは1億2000万回だった。しかしながら、その視聴時間を比べるとHulu TVの6.5億分に対しGoogleが1.2億分と、Hulu TVは競合に対し大きく水をあけているのだ。もちろん、Hulu TVのビデオ広告はユーチューブのようにスキップできないというのが、これだけの差を生む主な理由に挙げられる。

米国のオンラインビデオ広告の平均的なコンプリションレート(視聴完了率)は、ロングフォームが88%。ショートクリップが54%というリサーチ結果が出ている。それと比較してHulu TVは96%と非常に高いレートを誇っている。

ジェイソン・キラーCEOが広告主に約束したこと

HuluのCEO、ジェイソン・キラー氏は、それにもかかわらず壇上から「保証します」と告げた。何を保証するのか? コンプリションレートを百パーセントに近づけるために、人々が最初に見たい広告を選択できるという方法を取り入れた。

たとえば、ビールのコマーシャルであれば、同じビール会社の異なる3種類の製品のなかから好みに合わせて視聴前に選択できる仕組みとなっている。
また別のプランでは、保険と車と観光の中から見たいコマーシャルを選択できるというような具合である。確かに今の私にとって保険と車はノイズだが、観光のコマーシャルなら見てみたい。これはブランドサイドからみても、リーチという点はもちろん、リサーチという点で大変興味深いアイデアである。

Hulu TVは昨年、約335億円の収益をあげ、2010年から60%の上げ幅を確保。eMarketer調べでは、昨年の約1612億円に比べ、今年はオンラインビデオ広告市場全体で、約2490億円が見込まれている。

今やキングコンテンツと言われて久しいオンラインビデオ。テクノロジーではなく、ストーリーの重要さが見直されている理由がここにある。

Nobu
Ys and Partners 代表取締役社長 結城喜宣(ゆうき・よしのぶ)
日米に拠点を置くCreative Brand Communications – Ys and Partnersのエクゼクティブ・クリエイティブディレクター。JWTを経て、2002年に日本ブランドを世界で有名にすることをミッションに、米国カリフォルニア州に本社設立。2005年には横浜市に日本支社を設立。日米グローバル企業のブランド・コミュニケーションを成功に導いている。ブランド戦略に基づいたストーリーテリングを得意とする。6月から「アドタイ」にて、コラム連載「アメリカ女子高生のデジタルネイティブ日記」(仮題)を連載予定。