ナマステ。
先週行われたインド最大のデザインカンファレンス、「KYOORIUS DESIGN YATRA」(キューリアスデザインヤトラ)にスピーカーとして招待されて、ムンバイの南、ゴアという街に行ってきました。
インド国内に加え、海外からも多数のスピーカーを招いて、デザイン関係者、広告関係者、アートスクールの学生など1200人が参加する大型のカンファレンスです。
日本からは、僕とPARTYの川村真司さんが参加しました。
ところでKYOORIUSというのは、このカンファレンスを主催している製紙会社です。
ミシュランがその昔、郊外のオーベルジュへのドライブを広めてタイヤの消費量を増やそうとミシュランガイドを作ったように、製紙会社がポスターや雑誌やパンフレットの消費量を増やそうとこのデザインカンファレンスを始めたそうです。
ところが3日間のカンファレンスの初日はデジタルデイ。
Google、NokiaやMicrosoftといった、紙を使わない会社のセミナーばかり。
ちょっと皮肉な感じですね。
食事やパーティのチケット
カリキュラムとTシャツ
さて、ホテルの部屋に入ると、様々な配布物が入ったバッグが置いてあります。
中を見ると、カリキュラムなどのパンフレット、ノート、Tシャツ、カレンダーや雑誌、フォントブックなどが入ってました。
たいていどのカンファレンスでもこういうバッグをもらえるのですが、さすがデザインカンファレンスだけあって、ひとつひとつの印刷物がきれいにデザインされています。
ふとカリキュラムを見ると表紙に僕の名前が印刷してあります。
ノートにも、僕らスピーカーの名前がデザインしてあります。
ふむふむ。
Tシャツは、ゴジラらしき怪獣に漢字で「解禁」の文字をあしらったデザイン。
そして背中には、Kentaro Kimuraと印刷してあるじゃないですか。
あ、おれの名前だ!
後から知ったのですが、これはもちろん全員こうなってるわけではなくて、スピーカーの数だけ異なるデザインのTシャツがあって、参加者は好きなものを選べる仕組みになっているのでした。
セミナーでしゃべった後にサイン攻勢に会って実感しましたが、シャイな学生でもお気に入りのスピーカーにサインしてもらうことで、交流のきっかけをつくる狙いもあるのだそうです。
なるほどね。
配布された雑誌の見出しが...
もっとびっくりしたことがありました。
バッグにKyoorius社が発行しているデザインの雑誌が入っていたのですが、持って帰るのも重いので、パラパラ目を通したら捨てていこうかなと表紙をめくったときです。
最初の記事の見出しが、”Dear Kentaro”になっているのです。
え?誰?
どうやら僕の名前みたい。
でも本文には僕の名前は出てきません。
そうか、見出しだけわざわざ別刷りしてくれているのか!
主催者からの素敵なサプライズでした。
僕らはよく仕掛ける側をやるのですが、ここまで狙い通りに仕掛けられた経験は新鮮。
イケてます!デザインヤトラ。
さて、セミナーのレベルはとても高くて僕自身とても刺激的でした。
グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、空間デザイン、インタラクティブデザイン、インテグレートキャンペーン、商品開発、インフォグラフィクス、タイポグラフィーなど、バラエティに富む内容で飽きません。
会場も常に満席。
つまらないと静まり返るのですが、面白いとスタンディングオベーションになります。
いいスピーチは、いいオーディエンスが作るものなのです。
Q&Aセッション
講演中に、会場からハッシュタグで集められた質問やコメントをモデレーターが選んでスピーカーに投げかけるスタイルも非常にうまくいっていて、これは今後こういうカンファレンスのスタンダードになっていくんだろうなと思いました。
(Twitterで#kdy12と打つと、スピーカーの顔ぶれと当日の盛り上がりがわかります)
せっかくなので、タイポグラフィーに関する面白かったセミナーをひとつ紹介します。
インドには、看板の文字を書くペンキ職人がいて、その職人技が独特なタイポグラフィーを作り上げています。
インドのど派手な映画ポスターやトラックの車体でおなじみの、あのカラフルできらびやかな手書きフォントです。
ペンキ職人の伝統芸
しかし、彼らペンキ職人はたいてい高齢なのと、当然のごとく手書きからデジタルプリントへ移行していくので、このままではやがてこれらの伝統的なタイポグラフィーが消えていってしまう。
そこで、Hanif Kureshiさん(W+K India)が始めたのが、“Handpainted Type Project”。
伝統的なタイポをデジタル化して、フォントとして販売するプロジェクトです。
価格は50ドルですが、その半分はペンキ職人にわたる仕組みです。
アルファベットに加えて、インドのローカルの言語のタイポをも次々にデジタル化していくそうです。
美大生が書いたHanifと僕の講演メモ
オープンカンバセーション
Hanifはまだ29歳、スピーカーの中では最年少です。
僕のすぐとなりの部屋だったので、これからの夢や、お互いのアイデアをたくさん交換して語りあいました。
俺ももっともっと人をエンタテインするものを作ろうとあらためて思いました。
学生向けには、作品ポートフォリオを見せて批評するクリティークやワークショップに加えて、2日目の晩に、オープンカンバセーションといって、学生や若手のクリエーターがスピーカーを取り囲んでカジュアルに話すセッションもありました。
まだまだこの国では、デザイナーというとファッションデザイナーだと思われてしまうくらい、デザイン業界はまだまだ途上なのですが、その次の担い手である彼らは、希望に満ち溢れた目で、思い切り直球で人生相談を投げかけてきます。
エネルギーが高い国は面白いな。
実はバッグパック旅行と出張合わせて今回で10回目のインドなんですが、その理由はこのエネルギーの高さにあるんだとあらためて思いました。
ちなみに、デザインヤトラの「ヤトラ」は、「奴ら」の語源に違いない、と勝手に空想していたのですが、カンファレンスが終わった後にその意味を聞いてみたら、残念ながら全く違ってました。
「旅」という意味だそうです。
デザインの旅か。
そうか、やっぱりオレはインドから旅に呼ばれたんだ。
デザインヤトラ、イケてます。
木村健太郎「やかん沸騰日記」バックナンバー
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