コラム

やかん沸騰日記

ヤングコンテストの審査をして思ったこと

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my Japan award

10月に、若手向けの企画コンテストの審査員を立て続けに3つやらせていただきました。
my Japanの学生CMコンテスト(20日)、applimの学生アプリコンテスト(27日)、そしてアドテック東京での若手プレゼンバトル(30日)です。

my Japan awardの課題は「思わず日本に来たくなる特別な体験」。
季節や忍者などの日本の伝統から、ウォシュレットや回転寿司、被災地や合コンまで多種多様な切り口で日本の魅力を切り取った30秒CMを審査しました。

applimコンテストの課題は、「デジタル×リアルな体験」。
クライアント自由のソーシャルアプリを使ったリアル体験創造の企画です。
企画書で審査して、予選を勝ち抜いた6チームが1000人の観客の前でプレゼンしました。

そしてアドテック東京でのJAAA主催のプレゼンバトルの課題は「社会貢献の推進」。
学生でなく20代アドマンの広告会社混合の3チームが6日間で企画を作り上げ、会場内のエキジビションステージでプレゼンして競い合いました。

テーマも形式も三者三様でとても面白かったのですが、意外だったのは、特に学生コンテストの前者ふたつにおいて、僕ら審査員の票がバラバラに割れたこと。
普段見慣れてない学生の作品だからなのかもしれないし、どれもユニークで突出した作品がなかったからかもしれませんが、同じ業界に属している審査員でも、見る視点が全然違うんだなあとあらためて思いました。
その意味では、多様な観点からのいい審査ができたと思うし、僕自身新鮮でした。

そんな中で、僕はどんな視点で審査したのか。
もちろんどのコンテストにも明確な審査基準があるのですが、僕がどのコンテストでも共通して特に重要したポイントがふたつあります。

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applimでのトークセッション

まず、ひとつめは「志」。
企画で一番大事なのはなによりも志だと思います。
どんなゴールイメージを設定してそれにチャレンジしたのか。
オリエンに書いてある目の前にある課題を解決するだけでなく、その課題の背景にどんな問題意識を見出して、世の中にどんなワクワクする素敵なことを起こしたいと思ったのか。

「想像できるものは実現できる」ということばがありますが、これを逆に言うと、「想像できないものはまず実現できない」し、「ワクワクできなければ実現するエネルギーなんて湧かない」ということです。
鮮やかなアイデアは、高い志が生みだすもの。
だから僕は、企画のテクニックの上手さや具体案の完成度よりも、作り手の目の前にどんな素敵なイメージが映っていたのかを大事にしました。

applimの審査で、電通の澤本嘉光さんが「審査していてもどうしてもブレストモードに入ってしまって、講評や質問でなく企画を提案してしまいたくなる」とご自身の現場気質を笑って嘆いていましたが、そういう風に「ああ~俺だったらこうやるのに~もう~」とついついアイデアを重ねたくなる案は、実は志が高い「いい」企画なのだと思います。
筋が悪い案だったら、企画のスイッチなんて入るわけないのですから。

テクニックより、ポテンシャル。
たとえ具体案の精度がゆるくても、経験値を持ったプロ達が時間をかけたら、すごいことが起きそうな予感があればいい。
僕はそう思って審査しました。

今回は課題が「日本の魅力」「デジタルとリアル」「社会貢献」とどれも範囲が広いものだっただけに、何にチャレンジしたかの志の高さで半分くらい勝負が決まったような気もします。

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プレゼンバトル

もうひとつのポイントは、人が本当に動くリアリティが感じられるかどうか。

どんなに素敵なCMや斬新なアプリやキャンペーンを作っても、「お、なんか日本に行きたくなったぞ」と心が動いたり、そのアプリを無性に使いたくなったり、実際に社会貢献に参加したくならなければ意味がありません。

もちろんどの企画もそれを目指して考えられているとは思います。
ところが今の時代は広告以外に楽しいコンテンツがくさるほどある時代です。
そう簡単に人はアクションを起こしてくれません。

ましてや、たとえばわざわざアプリをダウンロードしたりAR(拡張現実)やQRコードを使ったりYouTube映像にアクセスしてもらうということは、相当めんどくさいこと。
そのためには、それをやったらものすごく楽しいことが起こるか、ものすごく役に立つか、あるいはそのハードルを思い切り下げて、自然にアクションしてしまう仕組みをつくるか、そのどこかでブレイクスルーするアイデアがないと人は動きません。

どんなに複雑なキャンペーンでも人が動くポイントはひとつだけ。
そこをとことん厳しくつきつめて設計すること。
決勝に進めなかった多くのエントリーは残念ながらここをしっかりとらえてなかったものが多かったように思います。

作り手における「志」と、受け手における「人が動くリアリティ」。
企画するときに一番大事なふたつだとあらためて思いました。

最後に、今回印象的だったのは、コンテストに参加する人たちも、学生団体のスタッフのみなさんもなんだかとても楽しそうだったこと。

「今年はワークショップを3回実施したせいか例年に比べ今年はクオリティの高い作品が多く集まって嬉しかった。日本の魅力が、ここから世界に伝わってほしい」(my Japanスタッフ 中村彩香さん)

「14人のスタッフでなんとかやり遂げました。何かと何かの掛け算で、ビジネスチャンスを生み出せる人を増やしたい」(applimスタッフ 田村有さん)

僕は、学生時代広告には全く興味がなかったので、こういうコンテストのことを全然知らなかったけど、もしもう一回学生に戻るなら、my Japanかapplimのスタッフをやってみたいかも、なんて思いました。

過去のやかん沸騰日記にも書きましたが、インド韓国をはじめアジアの広告業界が学生や広告会社で働く若手の次世代育成に真剣に力を入れているのをまざまざと見るたびに、日本もこのままじゃ遅れていってしまうぞ、と思ってましたが、いやいや大丈夫。
日本の広告業界の未来は明るい!

そう思えたのが一番の収穫だったかもしれません。

木村健太郎「やかん沸騰日記」バックナンバー

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