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コラム

CSR視点で広報を考える

核実験成功の発表で勢いづく北朝鮮の次の一手は?

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巧みな交渉術で大国を煙に巻く北朝鮮は果たして孤立するのか

12日の大手各紙はいずれも「北朝鮮の核実験成功」をトップトピックスとして掲げた。皮肉にも、その数時間前に「北朝鮮 核実験場から撤収の動き」と報道され、人や物資の動きがなく一時的に撤収して核実験が中断されたのではと思われた矢先の核実験実施だった。

場所は北朝鮮領土内とは言え、国境近くの鼻先(吉州郡豊渓里)で核実験を行われて、怒り心頭の中国は、「国際社会の反対にもかかわらず、北朝鮮が再度、核実験を強行したことに対し、強く反対する」との声明を出した。この背景としては、当初から習近平総書記が直接、核実験に対して反対の立場を明確にし、実験が実施された場合は、援助を削減すると示唆し、これまでにない強い姿勢で北朝鮮に警告を発していたことによる。

北朝鮮は、この中国の警告に対して、毎年恒例の年賀状を中国の指導者に送らず、中国が打診した特使の派遣を拒否するとともに、金正恩第一書記の正式な中国訪問も中断するなど関係悪化が表面化していた。実験の実施に伴い、中国国内では緊張が高まり、既に金融制裁を警戒して北朝鮮の貿易関係者は中国の銀行から現金を引き出すなどの動きが活発化しているとの報告もある。

その他の各国・各組織の反応は以下のとおりである。いずれも北朝鮮に対する強い非難声明となっており、国際社会の要請を無視した悪玉として、完全孤立化の様相となっている。国際社会や国連安全保障理事国が連携して今後の対応を協議するほか、日本政府は個別独自に経済制裁、船舶検査、海上封鎖などの制裁措置の検討を始めている。




北朝鮮は、これまでも「ミサイル発射」「核実験」などの具体的な軍事的脅威をキーワードに、報道の内容の要所要所に、金正恩第一書記の象徴的なつぶやきとして「国の安全と自主権を守る」「国家的重大措置を決心」「より強度の2次、3次対応」などを盛り込むことで、いつまた何かを行うのではないか、との不安情報を提供し続けている。そうして、時間が経過する中、突然、幕引きのようなつぶやきとして「米国の(北朝鮮が核実験を強行するという)勘違い」を発し、さらに人員や物資をわざと撤収させ事態を一時的に沈静化させる素振りを見せた直後に、実験を強行するという、心理的なインパクトを最大限に活かす交渉術を用いている。

北朝鮮が今何を考えているのか、言葉の裏にどんな思いが隠されているのか、を分析するのはいつも北朝鮮以外の国であり、その言葉に振り回されている感が否めない。

国際社会は、対策にも閉塞感が見える中、経済措置等の強化による兵糧攻めで、北朝鮮を干上がらせる戦略に出ることも考えられるが、そもそもミサイルひとつで国民全体の食糧5年分相当を浪費する北朝鮮にとって、兵糧攻めで困るのは一般の平民に過ぎない。結果として北朝鮮の国境周辺国である韓国や中国に多くの脱北者が流入するリスクが増大する。特に中国にとって多くの脱北難民が押し寄せてくる状況は望ましくないと考えるだろう。

前回の安保理決議に反対票を投じなかった中国が、今回の核実験実施に対する措置声明に関して反対を投じるとは考えにくいが、日米韓の想定する「これまでにない重い制裁措置」にどれほど中国が同意できるかが今後の注目すべきポイントとなる。そうした背景の中で、北朝鮮と中国との関係が冷えきり、中国のコントロールから完全に外れた北朝鮮が暴走するリスクは、朝鮮半島を取り巻く周辺国家の安全保障の視点からもかなり脅威となる。

北朝鮮は、中国との関係を緊密にしていた時期より、既にイラクやシリアとの関係を強化してきており、中国との関係が希薄化すれば、これらの国との急速な接近により、東南アジア諸国にとって、さらなる大きな脅威となる可能性も指摘されている。

同時に、大量のウラン埋蔵量を誇る北朝鮮は、今回の核実験で核の小型化・軽量化の成功を発表し、長距離弾道ミサイルの大量生産化の可能性をちらつかせながら、米を中心とした大国との1対1での交渉を迫っている。中国が依然として力を発揮できるか、北朝鮮に切り捨てられるか、北朝鮮の孤立化、暴走化の行方のキャスティングボードは中国が握っている。

同時に、周辺事態が急変すれば先制攻撃(Rapid Dominance)を選択することを基本とする米国と、専守防衛を基本とする日本との安全保障に関するバランスがどう流れを変えるのかも今後の重要な視点である。既に、安倍首相は、「敵基地攻撃も自衛の範囲内」とコメントを出しており、朝鮮半島を取り巻く危機は、予断を許さない状況だ。

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー

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