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コラム

CSR視点で広報を考える

北朝鮮3回目の核実験実施の意図と金正恩の野望

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間近に迫る核実験! 各国の対応にも微妙な変化が

中国の新政権が韓国新大統領側近にラブコールを送り、相互に日本に対して過去の歴史認識問題をつきつけていくことで合意したことを表明する一方、中国から見た尖閣諸島(中国名:釣魚島)、韓国から見た竹島(韓国名:独島)の領有権に関しても双方が日本に対して厳しい攻勢を展開し、ここ数カ月は日本周辺の危機的事態は主に、これらの国によって引き起こされ、国民の耳目もそこに集中していたと言っても過言ではなかった。

しかし、そんな中、近隣諸国はおろか世界中を震撼させたのが北朝鮮による3回目の核実験実施の報道だった。北朝鮮は1月24日に国防委員会声明として核実験強行方針を明らかにしたが、「金正恩が、軍隊を無敵必勝の白頭山革命強軍にさらに強化し、国の安全と自主権を守る綱領的指針となる重要な結論を下した」という発言を、意図的に朝鮮中央通信を通じて流すなど、周辺国や国連参加国に対する動きを強く牽制する狙いがあったのではないかと考えられている。

既に、公表されているとおり、統一研究院選任研究委員のキム・ヒョンジュン氏は、「北朝鮮の核開発は金正日の遺訓によるもので、北朝鮮が最大の祝日と考える金正日の誕生日である2月16日に核実験が行われる可能性がある」と発言しており、その予測がより現実を帯びてきた。

2006年の7月5日、7発の弾道ミサイル発射実験を行った後、10月3日に朝鮮中央通信より核実験実施を予告、10月9日に同通信により最初の「核実験成功」が発表された。2回目の核実験では、4月5日に人工衛星打上用ロケット(事実上の弾道ミサイル)を発射、同年5月25日にも3発の短距離ミサイルを発射し、朝鮮中央通信より「地下核実験成功」の発表が行われた。さらに昨年12月12日に「人工衛星」と称する長距離弾道ミサイルを発射しており、既にこの発射から50日以上が経過している。

核実験前のミサイル発射、その後の核実験強行方針の発表、さらに1週間から2週間経過した後の核実験実施という背景の中で、2月16日前後の3回目の核実験は極めて現実的なシナリオになってきている。

各国が慌ただしく動き始めた理由は、①中国がこれまでと違い北朝鮮をコントロールできなくなってきていること、②今回の核実験で北朝鮮が濃縮ウランを使用する可能性が示唆されていること、③長距離弾道ミサイルの現実的使用段階に入っている可能性がありアメリカ本土も射程範囲となっていること、④今回の核実験でも同時に何発かのミサイルを発射する可能性があること、などが挙げられている。

北朝鮮の暴走は、中国にとっても当然好ましくなく、ロシアを巻き込み、日米韓との連携による核実験保留に向けた見えない攻防が繰り広げられているはずだ。しかし、そうした交渉の土俵に乗らない北朝鮮は、軍事的緊張を高めるために核実験やミサイル同時発射はもちろん、今後も継続して核実験を実施していくとの強いメッセージを周辺国に発することでキャスティングボードを握ろうとしている。

国連安保理議長声明をものともせず、暴走する北朝鮮が、3回目の核実験に成功し、国連や周辺国からのさらなる対抗措置を受けたとき、中国ですらも北朝鮮の「核を載せた長距離弾道ミサイルの脅威」を止めることはできなくなる。中国が本気で北朝鮮を切るようなことがあれば、孤立した北朝鮮の暴発を恐れる隣国韓国は、より厳しい対抗措置を決断し、それに連動するように日米もまた安全保障の観点から軍事的包囲網を強化せざるをえなくなる。

そのような状況から生み出されるものは、まさに「そこにある危機」であり、この危機をダウンサイジングするには、中国、韓国、日本のそれぞれが、国益を守ることも大切ではあるが、同時に朝鮮半島の安定を目的とした共通認識を持つことが重要だ。

韓国国防部や軍幹部は、北朝鮮核実験の実施に備えて最高レベルの非常事態を宣言し、既に軍事的な配備を完了している。朝鮮半島奥深くまで入り込んだ米国原子力潜水艦や巡洋艦にはイラク軍を焦土化したトマホークミサイルが搭載され、北朝鮮全域を射程圏に収めている。

一番短気な中国政府が、「周辺諸国の冷静な対応を期待する」と発表しているが、意外にも、今回のケースでは最も的を射た対応かもしれない。

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー

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