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コラム

CSR視点で広報を考える

超長期トレンドで見る世界経済と日本の立ち位置

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今後50年間、大幅な経済衰退を予測された日本経済に勝機はあるのか?

ある勉強会で、アンガス・マディソンの「経済統計で見る世界経済2000年史」について活発な意見が交わされた。アンガス・マディソンは英国で1926年に生まれ、2010年4月24日に没するまで、その生涯のほとんどを人類の人口と経済成長の歴史的推移の解明に費やしたとされている。彼はその研究成果を西暦1年から2006年までの約2000年間について、世界各地の人口、GDP、一人当たりGDPについて彼なりの定量的手法に基づき、データを収集しようとした。彼のことを知る者は、彼のことを「過去を予測した男」と呼んでいる。

アンガスの調査によれば、紀元1年から1000年間は人口も実質GDPも停滞していた。最初の1000年間で人口は16%、実質GDPは14%進展したにすぎない。特に、西欧は停滞どころか、衰退と言っていい状況だ、と見られている。

次に、1000年から1820年までは、人口が4.8倍、実質GDPが6倍、一人当たり実質GDPが1.5倍に増加している。驚くべきは、1820年以降に、数値が急騰することだ。わずか180年程度の間に、人口が6倍、GDPに至っては53倍に達し、一人当たりGDPは9倍に増大している。

一方、日本はと言えば、紀元1年からの2000年間で、人口が42倍、実質GDPが2187倍、一人当たり実質GDPが52倍に増加した世界経済急進の最先峰であった。

このような背景の中、大きな変調のターニングポイントとなった1820年時点の世界経済が一つの大きな注目すべき世界経済推計の起点となる。1820年時点の世界経済推計は、マディソンによると、世界GDPに占める比率で見た場合、以下のようになる、と説明している。

中国29%、インド16%、フランス5%、日本3%、米国2%

ここでの着目点は、中国・インドを合わせた数字が45%にもなることだ。中国はこのデータをこよなく愛し、昔から世界経済の中心にいたと豪語するにあたり、このデータを引用して解説する。

アンガスの推計がダイナミックで興味深いとは言え、1000年前とか数百年前の推計データではそれほどの危機感はわかない。仮に中国が1820年時点の世界経済のリーダーであったと主張されても、真剣に反論する時間を持とうとは思わないだろう。

しかし、次の話を聞いたらどうだろうか?OECD(経済協力開発機構)が2012年11月に発表した「世界の2060年予測」は、衝撃的なものだった。この統計データは、OECD加盟国と中国、インド、ブラジルなどOECD以外のG20のGDP合計、購買力平価ベースで表した世界経済予測であり、2011年をベースに、2030年及び2060年時点での世界経済予測を行っている。

   2011年  2030年  2060年
 米国  23%  18%  17%
 中国  17%  28%  28%
 インド  7%  11%  18%
 ユーロ圏  17%  12%  9%
 日本  7%  4%  3%

右記2060年時点の中国28%、インド18%、日本3%は、まさに1820年時点でのアンガスが予測した内容とほぼ一致している。日本は急激な成長を遂げた半面、これからの数十年で一気に衰退すると見られている。

構造改革や労働市場の流動化の遅れ、経常収支の赤字化、財政危機の到来などで日本の経済は大きく失速するというのが、残念ながら長期的予測の大方のトレンドとなってしまっている。アベノミクスがアベノリスクとならぬよう、痛みを伴うリスクを受容し、中長期的財政再建計画が大胆に発動できるかが今後の重要課題となっている。

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー

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