新型インフルエンザ等対策特別措置法で政府行動計画はどこが変わるか?
内閣官房新型インフルエンザ等対策室の担当者からお話を聞いた。これまでの政府の行動計画は、平成23年9月に閣議決定されたものが採用されているが、今回は、特措法に基づき初めて行動計画が策定され、新たに盛り込まれた各種の措置の運用等が記載されている。従来の行動計画との比較では、以下の点が主な変更点となっている。
(1)新型インフルエンザ等に対する体制
- 指定(地方)公共機関の役割等を新たに規定
- 基本的対処方針等諮問委員会等の位置づけを新たに規定
- 新型インフルエンザ等緊急事態宣言の運用を新たに規定
(2)感染拡大防止
- 法定化された不要不急の外出自粛等の要請等について規定
- 法定化された施設の使用制限の要請等について規定
(3)予防接種
- 法定化された特定接種の対象となり得る業種等を新たに明らかにした
- 住民接種の接種順位の基本的考え方を規定
(4)新感染症(注1)
- 行動計画の対象を新感染症に拡大
(5)留意事項
- 基本的人権の尊重について記載を充実
- 記録の保存について新たに規定
(注1)特措法上の対象疾病としての「新型インフルエンザ等」と、感染症法上の「新型インフルエンザ等感染症」「新感染症」との関係は以下のとおりである。
また、感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)では、それぞれの感染症が社会に与える影響に基づいて分類された措置をあらかじめ決め、講じるべき措置はその類型によって異なっている。鳥インフルエンザ(H5N1等)は「二類感染症」で、医師の届出及び入院の勧告・措置が規定され、新型インフルエンザ等感染症については、医師の届出、入院の勧告・措置に加え、停留(検疫)及び隔離(検疫)が規定されている。
企業が考える感染症予防策とは
インフルエンザは潜伏期間(病原体に感染してから発症するまでの期間)が1日から4日(平均2日)とされている。また、感染者が他の人へ感染させる可能性のある期間(感染者からウイルスが排出している期間)は、成人で発症から3日~5日、子供で発症から7日~10日とされている。
したがって、発症が始まったばかりのときに会社に出社することで多くの他の従業員に感染させる事態は避けなければならない。普段から正しい知識を周知させ、体調がすぐれない場合には、出社を自粛するなどして様子を見ることが極めて重要となる。特殊な業務に従事しているために、休みたくても休めない労働環境によって出社した結果、それが原因で感染拡大を発生させてしまうこともあるので要注意だ。誰もが、いつでも休みがとれるよう、普段から業務の代替性を検討しておくことも感染拡大の抑止につながることを認識してほしい。
また、感染経路として飛沫感染(感染者の飛沫を健康な人が吸い込んで感染)や接触感染(感染者がウイルスの付着した手で触れたドアノブ、スイッチ、食品等に健康な人が触り、その手で顔や口鼻周辺を触ることでウイルスが体内に入り感染)が想定されるため、健康な人は、咳や発熱等の症状のある人に近寄らない、流行時には人混みの多い場所に行かない、手指を清潔に保つことが感染回避に役立つことになる。大切なことは、症状のある人がマスクをすることは飛沫感染を防ぐ意味で重要だが、健康な人がマスクをしても飛沫を完全に吸い込まないようにすることはできないため、感染経路を断つためにもウイルスの所在する可能性のある場所に寄り付かないようにすることが最優先事項となる。むしろマスクの予防効果を過信し、感染経路に無関心でいることの方が危険と考えるべきだ。
現段階では、新型インフルエンザ等は、発生するまで具体的特徴等がわからない点や、発生当初は病原性・感染力等に関する情報が限られている点に課題があり、効果的な対策を講じるにも限界がある。危険有害原因の特定や個々の状況のリスク評価が重要となるが、実際には発生した事態に対して、どのくらいの従業員がリスクを負うのか、どのような労働環境にリスクがあるのか、どのような健康被害が発生するのか、どのような感染予防策が必要なのか、予防策の効果はどの程度なのか、など企業側の抱える問題も多く残っている。
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