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ネット選挙解禁―ネットの活用でマスメディアを動かし、世論を変える時代へ

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26日、改正公職選挙法が施行され、インターネット選挙運動がいよいよ解禁となる。ネット選挙解禁によって、有権者に届く情報はどのように変わるのか。また、政党や政治家がネット発信を活発化すると、既存マスメディアの政治報道にどのような影響を与えることになるのか。
政治とメディアに詳しい立教大学の逢坂巌助教は、今後の候補者たちはネットとマスメディアの両輪で世論を動かすことに挑戦するのではにないか、と話す。――広報会議4月号より。

マス報道をツイッターで批判する政治家の登場

候補者がネットを通じて直接有権者に働きかけることに加えて今後注目したいのは、ネットと既存のマスメディアを戦略的に使うことによる世論形成の動きです。

政治の動きは常にマスメディアによって報道されますから、政治家にとって政治コミュニケーションとは24時間365日のパブリシティ対策。報道内容をなるべく自身に都合がよいものにしたいのですが、第三者である記者たちをコントロールすることは難しい。マスメディアの政治的影響力が高まる中、政治家は苛立を高めていました。

そこに出現したのがソーシャルメディアです。政治家はこれを活用し、まずは、マスメディアを飛び越えて、直接有権者に語りかけ、世論を動かそうとしました。民主党政権時の鳩山(由紀夫)さんの鳩カフェブログや鳩山ツイッター、菅(直人)さんのブログなどがその例です。しかし、彼らの退陣が明らかにしたように、全国民を対象にネット発信で世論を作り選挙に勝つのは難しいことでした。

一方で、その頃から目立ってきたのが、ソーシャルメディアを用いてマスメディアを牽制する手法。橋下徹大阪市長がツイッターで『週刊朝日』を批判し、朝日新聞から謝罪を得たことは記憶に新しいですが、メディアとのやり取りをオープンにすることで、「ネット世論」を巻き込みながら、マスメディアを牽制して世論全体に影響を及ぼす。衆院選を前後して安倍首相もフェイスブックで「報道批判」を行ったり、テレビ局への「電凸(抗議電話)」を呼びかけるなど、同様の利用形態が見られます。

ネット選挙解禁で、選挙直前という最も国民の選択に大切な時期に、いままで使えなかった双方向のコミュニケーションツールが使えるようになることは日本の民主主義にとっては歓迎すべき事です。選挙直前までネット上での政策議論や、候補者の人物吟味が可能になりました。

しかし、注意したいのは、そのような情報量の増大によって、有権者に届く情報が分かりやすく、正しくなるのかといえばそうとも言えないことです。議論よりも候補者の宣伝やパブリシティが中心となり、ワンフレーズのレッテル貼りばかりが横行することや、候補者の情報についてPR会社によって作られたイメージのみが流通することも考えられます。有権者にも情報を判断できるリテラシーが必要になるでしょう。

政治にもネットに強い人材が求められる

ソーシャルメディアはその政策だけではなく、政治家自身の“人格”が伝わりやすいという利点もあります。どんな考えを持ち、どのような人と交流しているのか。各所でどのような議論をしている人なのか。そもそもソーシャルメディアをどのように用いている人なのか。それらを投票ギリギリまで継続的にウォッチできるからです。

一方で、ソーシャルメディアで選挙が勝てるのか、という議論もあります。安倍さんのように23万(2013年3月時点)のファンを持つ政治家のフェイスブックは稀です。人材不足も否めません。忙しい選挙期間中にネットを使いこなせるか、ということはもちろん、ビッグデータから世論の声を分析し、戦略を立てることができるのか。そこにどれだけの手間や予算を割けるのか。ただ発信するのであればまだしも、橋下さんのようにマスメディアを巻き込む場として活用するのであれば、できる人とできない人がいるでしょう。

リアルタイムのネット世論に素早く対応しつつ、メディアの発信にも気を配る。それを継続していくのであれば、持久力や思考力が求められます。得手不得手もありますし、新たに人を入れなければならないとなれば、相応の予算も必要でしょう。

企業が売上アップを目指すのと同様、政治家は得票することが重要です。どのくらいの予算や手間をかけたら情報が届き、得票できるのかを判断し、使うか否かを見極めていくことになるでしょう。(談)

広報会議7月号(6月1日発売号)では、ネット選挙解禁による政治コミュニケーションの可能性と限界について、ソーシャルメディアをはじめとするコミュニケーションの専門家の意見を交えて緊急特集します。ご期待ください。