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コラム

原田朋のCHIAT\DAY滞在記 ~リー・クロウの下で365日~

僕たちは、なぜカンヌを必要としているのか?

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カンヌと英語と日本人と。

僕がはじめてカンヌに行ったのは1998年のこと。その時は今ほど多種多様な部門はなく、フィルムを中心としたマス広告の祭典だった。名前もAdvertising Festivalだった。Advertising=広告表現を競う時、言葉の表現は超重要な部分。だから英語の表現文化を中心としたお祭りであるカンヌと、日本語の日本の広告の間はとても遠かったと思う(圧倒的に素晴らしい例外が、ビジュアルで勝負した『hungry?』のシリーズだった)。

だけど今、Festival of Creativityになったカンヌは、20世紀よりも、全世界・全言語の使い手に開かれている。PRやプロモやメディアやサイバーやモバイル部門では、まさにCreativity=アイデアそのものが問われる。個人的には、英語はアイデアをクリアに説明しやすい言語だと感じるし、逆に言うと、英語でクリアに説明できないものは、アイデアがクリアじゃないとすら思う。英語というツールは、アイデアをクリアに磨くためのものでもある。たくさんの賞ケースビデオを見ていると、アイデアとは何なのかがわかってくる。

ロスで英語も勉強中ということもあるが、英語をつかってクリアに話し、しかも、論理的なだけじゃなく、感情に訴える話し方ができる人に憧れるし、尊敬する。僕は3日間の短いカンヌ滞在中、運良く2つも、日本人によるすばらしい英語スピーチ/プレゼンテーションに出会えた。

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博報堂ケトルの木村健太郎さんと会場前で。僕は大好きな先輩に緊張して変な笑顔。

一つは、博報堂ケトルの木村健太郎さんによるセミナーのプレゼンテーションだ。ロジカルかつユーモアをまじえたわかりやすい語り口で、聴衆を魅了し、プレゼン中は拍手が絶えなかった。木村さんは僕が入社した頃からちょくちょく仕事をご一緒する先輩で(そのころはストラテジックプラナー)、昔からすごい先輩だと思っていたけれど、カンヌの舞台での完璧なプレゼンテーションは本当にすばらしかった。

そしてもう一つは、モバイル部門の審査委員長であるイナモト・レイさんの、モバイル部門審査評のスピーチである。ほぼ全員スマートフォンを持っていたであろう会場の聴衆が、彼の呼びかけに答えてスマートフォンを次々にかざした様は、まるで熱心なファンが集うライブコンサートのよう。日本から、世界のクリエイティビティを牽引する才能が出ているんだと思うと(特にモバイルという最先端の部門で)心から感動した。

たとえばスポーツのフィールドでは、日本人が世界で活躍する様を見ることができる。それは世界で勝負したいという先達の、長年の実績の積み重ねがあってのもの。広告業界というフィールドでは、どうだろう。世界への扉は、まだ、開かれたばかりかもしれない。僕もこの連載コラムで、その扉をひらく役目を少しでも担えたなら望外の喜びである。

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3日目の深夜にホテルを出て早朝便で帰る。もう少し話したかったよ。この12時間後にサバイバルが待ち受けている…。

そんな僕が、渡米以来もっとも必死で英語を使う事態は、カンヌからの帰り道にやってきた。ニースからロンドン、アメリカ東部のシャーロットを経由してロスに帰るコースだったのだが、シャーロット到着が2時間以上遅刻で乗り継ぎできず。Gmailに届いた振替便の知らせは、翌朝のテキサス経由だという!空港で寝るのか?!ありえない、明日朝から仕事もあるぞ!ダメモトで航空会社のカウンターに駆け込み、人生史上もっとも重要な英語プレゼンテーションが行われた。落ち着いて、短く、シンプルに。

すると、なんと1時間後の便のボーディングパスを再発行してくれたのだ!そしてロスに戻ると案の定トランクが行方不明になっており、こちらもカウンターでプレゼン(手続き)。まあ、自分の体がロスに着いていればなんとかなる。日本から遠く離れたロスだけど、トランクはロストだけど、空港に着いただけで、なんだかat homeに感じた。英語はまだまだ、でも、もう一つのホームタウンになりつつあるのかもしれない。トランクは、翌日自宅にちゃんと届いた。


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