takram design engineeringの田川欣哉さんに聞きに行く 「自分で全部やってみたい人の仕事術」(後編)

share

ムササビ人材を育てる!?いま必要なのはインテグレーター

廣田:米国では、「オレオ」がソーシャルを使ったリアルタイムマーケティングを先進的に実践する企業として有名なのですが、そのマーケティング担当の人が話していて印象的だったのは「必要なのは社員の筋トレと社内のカルチャーだ」という話です。

「筋トレをしなさい」とはスキルを磨き、複数のスペシャリテを持とうということ。でも、それだけではダメで、企業の中のカルチャーも一緒に作っていく必要があるのだ、と。最後に日本のメーカーやものづくりの現場に対し、こんな社内のカルチャーが醸成できると、よりよいプロダクトが生まれていくのでではないかという田川さんのお考えを聞きたいのですが。たとえば、社内では社員の方たちにどんな話をしているのですか。

田川:takramの人に対しては「しっかり考える力をつけよう」と話しています。僕らが対面している問題は常に複雑なもので、正解がはっきり分からない暗中模索な状況です。ですから真っ暗闇の中でも、手探りで一歩一歩進んでいき、確実にゴールに近づいていける力が必要なんです。PDCAを回すことも、そのゴールに近づく方法の一つですよね。

とはいえ、その力は誰か先輩が教えてくれるわけでもない。「君が自分の頭で考えるしかないよね」ということです。だって、分かってないんだもん、僕たちにも(笑)。そういう意味で、考える筋力というものをしっかり身に付けてほしいな、と。

廣田:考える時のよりどころみたいなものはあるんですか。

田川:考えること自体は、まず仮説を立てることから始められるので、それはよりどころ、つまりは論拠がなくても進められるんです。ただし考えた仮説がどの程度正しいか判断できないことが結構あるんです。

このように、判断ができない場合には、「自分たちには、必要な情報が足りていないのだ」と考えるようにしています。消費者インタビューもするし、プロトタイプを作ってみることもある。いずれにしても、どの種類の情報が足りていないから判断に至らないのかということを考えてみるのが基本です。そして、ここでもメタ発想が必要になります。

あと、社会全体としての問題もあるかと思います。今、日本の企業は部門ごとにサイロ化が進んでいますよね。ですからサイロとサイロの間を、ムササビみたいに飛んで、つなげる人たちが必要なのではないかと思います。インテグレーターをサイロ人口の1割くらいは育てていく必要があるのではないかと思います。

廣田:社会として、ムササビを育てていくんですね(笑)。

広告会社の僕たちも、インテグレーターとしてクライアントの役に立てる場面もあるのではないかと思いました。従来のように、コミュニケーションに携わるのが宣伝部だけという状況からソーシャルメディアが浸透し、あらゆる部門がコミュニケーション手段を持てるようになっています。

コミュニケーションの視点から、社内の連携を促進したり・・・もっといろんな関わり方ができるのではないかと感じました。そして憧れの先輩だった田川さんにお話を聞けて、あらためてすごく勉強になりました。ありがとうございました。

(本文中・敬称略)

※本対談記事のダイジェスト版を「ウェブ電通報」でも掲載

【『SHARED VISION―相手を大切にすることからはじめるコミュニケーション』書籍のご購入はこちら

takram design engineering 代表
田川 欣哉

1999年東京大学工学部卒業。01年英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート修士課程修了。デザインエンジニアリングという新しい手法で、ソフトウェアからハードウェアまで幅広い製品のデザインと設計を手掛ける。07年Microsoft Innovation Award 最優秀賞、独red dot award: product design 2009など受賞多数。
電通 プラットフォーム・ビジネス局 開発部 コミュニケーション・プランナー
廣田周作

1980年生まれ。2009年電通入社。コミュニケーション・デザイン・センターを経て、12年からプラットフォーム・ビジネス局開発部。ソーシャルリスニングの知見に基づき、企業のソーシャルメディアの戦略的活用コンサルティングから、デジタル領域における戦略策定、キャンペーン実施、デジタルプロモーション企画、効果検証を担当。ソーシャルリスニングのソリューションとして「Sora-lis」「リスニングプラス」などの分析メソッド、ツイッター上での話題の拡散度合いを測る指標の開発にも関わる。社内横断組織「電通ソーシャルメディアラボ」「電通モダン・コミュニケーション・ラボ」などに所属。2013年、自著『SHARED VISION』(宣伝会議)を出版。
相手を大切にすることからはじめるコミュニケーション「SHARED VISION [シェアードヴィジョン]」

(kindle版)1200円

amazon

【「電通 廣田さんの対談」連載バックナンバー】
■takram design engineeringの田川欣哉さんに聞きに行く
「自分で全部やってみたい人の仕事術」(前編)
「自分で全部やってみたい人の仕事術」(後編)
■Sumallyの山本憲資さんに聞きに行く
「リスクテイクする覚悟がある人の仕事術(前編)
「リスクテイクする覚悟がある人の仕事術(後編)
■内沼晋太郎さんに聞きに行く
・「マージナルな場に飛び出す人の仕事術」(前編)
・「マージナルな場に飛び出す人の仕事術」(後編)※3月更新予定

takram design engineering」関連記事はこちら

Follow Us