報道の中立性、どう守るか
課題も考えられます———シンポジウムを開けば、登壇する政治家や学者や企業経営者は「出演をお願いしたゲスト」になり、気を使って質問をするようになるかもしれませんし、彼らに対して批判的な記事を書いている同僚記者も中にはいるはずです。
あるいはメディアが、特定の政治的立場を持つ、たとえばロビイストのような人に登壇してもらうことで活動に「お墨付き」を与えてしまうという問題も米国では指摘されています。
当のニューヨーク・タイムズも自社記事で論じています。
もちろん、イベントを開いて環境問題や発展途上国の貧困といった社会問題をみんなで考える場を運営することも報道機関の大事な仕事の一つですし、日本の新聞社も、シンポジウムを開きます。
ただイベントが収入の大きな柱にまで成長してしまうと、イベントビジネスやそこに関わる人に依存するようになり、「報道の中立性」との間で利益相反も起こるのではないでしょうか。
ニューヨーク市立大学も、お金を出してくれる相手に記者は媚びてはならないという立場ですが、私には、
(1)記者も収益モデルを考えないとジャーナリズム組織の経営が成り立たない
(2)ビジネスを企画することは、読者の新しいニーズを突き詰めて考えることにつながるため記者にとって重要、
という考えをキャプランさんは持っているように思えました。
寄付によって新聞ビジネスが成り立たない限り、読者であろうが企業であろうが、誰かからお金をもらう必要があります――誰がスポンサーなのか、というビジネスモデルをオープンにすることで、説明責任を果たすやり方もあるとのことでした。
料理の材料がトマト以外に増えれば可能性は広がることですが、大切なテーマを含んでいます。
朝日新聞メディアラボは今年1月から、メンバー1人をニューヨーク市立大学に派遣していますので、次回のコラムでは彼女のことも紹介しつつニューヨークの話題を続けたいと思います。
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