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ソーシャルデザインとは何か?(4) CSVはソーシャルデザインから生まれる

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ソーシャルデザイン

一人ひとりが日常の生活の中で、仕事の中で、何かに気づくことによって、その気づきから動くことによって、社会は大きく変えられます。私たちはそんな動きを、「希望をつくる仕事=ソーシャルデザイン」と呼びます。
広告マーケティングに関わる方々が、クリエイターの方々が、これまで培ってきた「伝える」「巻き込む」ノウハウによって、個人の気づきを社会の大きなうねりに変えることができます。

本連載は、「社会貢献型マーケティング実践講座」の開講(2月27日)、ならびに書籍『希望をつくる仕事 ソーシャルデザイン』の出版にあわせて掲載します。

福井崇人(電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表)

企業のコア戦略としての社会貢献

2013年のカンヌライオンズの受賞作のほとんどがソーシャルをテーマとした作品だったことは世界の広告・マーケティング業界の潮流を顕著に示す出来事でした。

日本でも東日本大震災以降、ソーシャル領域に対する一般の人たちの関心が高まりを見せました。電通が2012年に実施した調査では、ソーシャル領域に関心度の高い人は20〜60代全体の4割、社会のために行動するライトな「ソーシャル身の丈層」は全体の3割弱存在するという結果が出ています。

企業の社会貢献というと、日本では、本業とはあまり関わりのない事業と考えられる傾向があります。予算規模も比較的小さく、社内の賛同を得ることに苦労をされているというCSRご担当者の声も耳にします。

一方、欧米諸国では社会貢献を本業における価値創造の機会という捉え方が一般的になっており、社会貢献型マーケティング市場は確実に伸びていると言われています。2013年の米国でのコーズスポンサーシップの支出は前年比4.8%増の17.8億ドル。スポンサーシップ支出のシェアの9%をも占めました。

企業にとってこれまで「責任」として捉えられてきた社会貢献が、現在では「価値・競争力」として、つまり、ビジネス上の重要な戦略として認識されつつあるのです。

ソーシャルデザインとはCSVをつくる企画メソッド

では、社会貢献型マーケティングを日本で成功させる上で、何が障害になっているのでしょうか。

マイケル・ポーターは、今後のマーケティングは、これからはCSRからCSV(共有価値創造)の時代が来ると、また、フィリップ・コトラーは、企業は、これまでのような製品や消費者志向ではなく、企業と消費者が共有できる社会的な価値観を示していくことが大事だと言っています。

これはつまり、マーケティング業界の潮流は、ソーシャルデザインの世界に向かっているとも言えます。けれども、日本の企業には、そういったことに取り組む体制が整っておらず、またそういったスキルを磨く経験を積む機会が少ないのではないかと思います。

私は書籍『希望をつくる仕事 ソーシャルデザイン』にて、ソーシャルデザインを、「気づき」や「疑問」を、「社会をよくすること」に結びつけ、そのためのアイデアや仕組みをデザインすることと定義しました。これからは、企業の皆さんにとって、ソーシャルデザインは「企画メソッド」のひとつとして重要な領域となるでしょう。

こうした流れを受け、私たちは「社会貢献型マーケティング実践講座」を開催することにしました。ソーシャルデザインの視点から、自社の強みや資産を見つめ直す機会を持つことで、きっと気づきや発見が得られると思います。そして、企業と社会がWIN-WINの関係になるテーマと施策を選定するために、アイデアやクリエーティビティを発揮していただきたいのです。

「和」を育む日本人のDNAを今こそ

ソーシャルデザインを実現させるためには、社会へと働きかけていく必要があります。そこでは、複数の部署が参画する社内横断型チームをつくって企画開発を行ったり、社外パートナーにも企画プロセスに参画してもらうといった、協働体制をつくることがポイントとなるでしょう。

欧米系の企業では、CSR部門とマーケティング部門が連動する組織体制ができているところが多いですが、日本企業ではまだそういった組織的な動きがとれているところは少ないです。

日本人は元々、和を尊ぶ性質を持っています。今の日本の社会には「社会貢献」というような美徳めいた言葉をあまり口にしたがらない風潮もあるのかもしれませんが、一方で、最近、新卒の面接をしていると、ソーシャルデザイン領域の仕事を志願する若い人たちが増えていることをとても強く実感しています。

こういった志の高い若い人たちが喜んで働ける事業をつくる。そしてそこから企業にとっても、社会にとっても利益を得て生み、それを共有していく。今、そんな社会が訪れる兆しを感じています。


福井崇人(ふくい・たかし)

電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表。NPO2025PROJECTの代表理事。ソーシャルデザイナー。カンヌ、NYADC、ADCなど受賞多数。金沢美術工芸大学、熊本大学、上智大学、宮城大学非常勤講師。書籍のプロデュースに『たりないピース』(小学館)『Love,Peace & Green たりないピース2』(小学館)『エコトバ』(小学館)『世界を変える仕事44』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『この子を救うのは、わたしかもしれない』(小学館)『希望をつくる仕事ソーシャルデザイン』(宣伝会議)『シャプラニール流 人生を変える働き方』(エスプレ)ほか。

【「ソーシャルデザインとは何か?」バックナンバー】


「社会貢献型マーケティング実践講座」は2月27日に開講予定です。

『希望をつくる仕事 ソーシャルデザイン』

社会に働きかけたいけれど具体的に何をすればよいか分からないでいる人、アイデアに行き詰まりを感じている人、学生や主婦など、すべての「社会をよりよくしたい」という想いを抱いているすべての人に贈るソーシャルデザインの入門書です。

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