ただそれは広告業界から見ての話であって、水面下ではいろんな企業が本腰を入れて取り組もうという姿勢を強めているようです。
「ナイキがFuel Bandから撤退する」「いや、デマだった」といった情報が錯綜するのもこういった背景からでしょう。
これまでのスマートデバイスにないウェアラブルデバイスの価値は、常に人の身体に装着されている点です。
これによって、身体内部の情報と外界環境の情報が蓄積されていきます。
単にスマートフォンの情報を眼鏡や腕時計の上に表示するものではなく、心拍数や運動量、体温、血圧といった身体の状態や、気温や湿度といった外界の状態をセンサーで取得し、これらをクラウドに送信してビッグデータ解析をしていく入り口と捉えなければならないわけです。
もっと言えば、ウェアラブルデバイスの普及は、「Internet of Things」という大きな潮流の一部として位置づけられるものです。
Internet of Thingsは「CES2014」でも主要なテーマとして取り上げられていましたが、あらゆるモノにセンサーを取り付け、リアル空間にあるすべてのモノをクラウドに接続してネットワーク化していこうという概念です。
この「あらゆるモノ」に、人の身体の部分や、さらには臓器や細胞レベルの体内要素まで含まれているわけです。
こうなると、ウェアラブルで取得される情報から本人が意識していないニーズを捉え、潜在意識とダイレクトにコミュニケーションを成立させることが可能になってきます。
例えば、ターゲットの体内の情報から空腹値を算出し、GPS情報との掛け合わせで最寄りのハンバーガーショップをレコメンドしたり、体調不良を察知してドラッグストアをレコメンドしたり、その情報を自動的にソーシャルにシェアしたりするというようなものです。
デバイスも「ウェア」だけでなく、飲むタイプや体に塗ったり埋め込んだりするタイプも出てくるかもしれません。
僕たちがこんな世界を望むかどうかは別にして、これはもうSFの話ではなく目の前に迫っている現実です。
人とテクノロジーが共に進化を遂げる中で、コミュニケーションは「無意識の領域」にまでに進んでいくということです。
ここまでくると、もう「脱広告」どころか「神の領域」まで踏み込んでしまいそうな感じもします。
こういった環境の変化が、クライアント企業のビジネスのコアにどう影響するのか。
それは、無意識の領域に踏み込まれるユーザーにとってハッピーなものなのか。
結局、僕たち広告人も、ひとりの人間として判断していくしかない時代になってきているのだと思います。
京井良彦
電通 マーケティング・デザイン・センター プランニング・ディレクター
大手銀行でM&Aアドバイザーを経て、2001年電通入社。主に、グローバルブランドやITサービス、スタートアップ企業を担当し、ソーシャルメディア・デジタル領域を中心とするエンゲージメント・プランニングや、データサイエンスに基づくグロースハックを手がける。カンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバルに毎年参加している。著書に『ロングエンゲージメント』(あさ出版)、『つなげる広告』(アスキー新書)など。東京都市大学非常勤講師。
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