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CMプランナー・福里真一 × 作家・白岩玄 ヒットコンテンツの企画術(後編)

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これまでに、ヒットCMを何本も手掛けてきた広告業界きってのヒットプランナーである福里真一氏。ベストセラー小説『野ブタ。をプロデュース』の著者であり、かつては宣伝会議のコピーライター養成講座で広告の勉強もしていた白岩玄氏。広告と小説、異なる領域で活躍するお二人にヒットする企画と、その発想法を伺います。

【前回記事】「CMプランナー・福里真一 × 作家・白岩玄 ヒットコンテンツの企画術(前編)」はこちら

周囲の意見は、とにかく「飲みこむ」

福里: 『R30の欲望スイッチ』で分析対象にしている、タレントや漫画などは皆、白岩さんの好きなものなんですか。

白岩:いいえ。いくつか嫌いなものも入っています。

福里:自分が好きではないものも、若者の気持ちになり替わって、支持される理由を考えたということですか?


白岩玄(作家)

白岩:どうなんでしょうか?ただ、この本に限らず、小説も含めて自分の主張を伝えたいというよりは、読み手が納得することは何かを考えながら書いている気がします。

僕は、自分が人より偏屈な考え方をすると思っているので、どこかでネガをポジに反転させないと人に届くものができない気がしています。なので、自分が言いたいことより、人が言ってほしいことを考えるのかもしれません。

福里さんのCMは、明るいものも多いですよね。否定的なところから入って、どうやってポジに反転させているのか、そのコツを聞きたいです。

福里:反転ということで言うと、『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』にも書きましたが、30歳くらいで大きな変化があったんです。それまでは自分らしい表現をしないといけないと思っていたのですが、そういうのをやめちゃおうと思ったのが30歳の頃で、そこで大きな反転があった。

それに、一つひとつの作業でも、そもそも広告って、企画が実現するまでの間に、何度も反転しないと納品できないんですよ。クライアントやクリエイティブディレクターやタレント事務所や、いろいろなところから、いろいろ意見を言われる。その時、たとえ自分の思っていることと違っても、従わないと、作業が前に進まないので、とにかく一度飲みこんでしまうんです。

白岩さんが「反転」と言っていることを、僕はよく「ゴクンと飲みこむ」と言うんですが。

白岩:それは、他人の居場所を自分の中に作るってことですか?

福里:あ、その通りです。それが悪いことばかりかと言うと、たくさんの人に広く届けないといけない広告では、一人の人間が純度高く考えるよりも、複数の人の意見が入るほうがいいことも多いのだと思います。

白岩:カルピスの「原液」みたいな感じですね。どこまで薄めるか、そのバランスが難しいというか。僕は小説を書きながら迷うことが多いんです。純文学の世界では「原液」のままで生きている人が多いですから。

福里:小説は個人名で出るものだし、広く届けばいいというものでもないし。そこは広告と違うところですよね。僕の場合、「これ、広告なんだから」というのが、一つの呪文になっていて、それを唱えることで次々と気持ちや考えを切り替えていけるのかもしれません。

次ページ 「人間のある種の残酷さと戦う企業」に続く