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コラム

CSR視点で広報を考える

謝罪記者会見で「謝罪」が見えないのはなぜか?

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最近の謝罪記者会見で、「謝罪」が明確に見えて来ない。「謝罪」に対して真摯であるとか誠実であるという以前に何かが欠けているように見える。

小保方さんや一連の食品偽装事件の記者会見で代表されるが、最近の謝罪を目的とする記者会見を見て思うことは、

  1. 謝罪会見の内容そのものに誤りがあったり正確性に欠けている
  2. 長い時間会見を行っているわりに肝心の質問の内容に答えていない

ということである。

広報のプロの間では、「謝罪会見は一度が鉄則」だが、最近では何度もやるのが常態化されつつある。間違えれば直せばいい、とお気軽に考えているのかわからないが、ある意味、謝罪会見に慣れすぎて雑になっているのと、説明の不正確さが「隠蔽」ととらえられてしまうリスクを「危機」と認識していないように感じられてならない。

また、「不正」や「偽装」を「軽度の誤り」「ミス」とし、その原因については「不勉強」「不注意」「未熟」と言ってはばからない当事者の考え方や、所属する企業風土にも問題があるのではと考える。さらに言えば、「法律に抵触していない」と主張すれば逃げ切れると思っていること自体に、企業がどのような社会的責任を負っているかを理解していない証拠と言える。

失敗と言える謝罪会見とは?

失敗と言える謝罪会見は、大きく分けて2種類ある。ひとつは、名言を残して火に油を注ぐタイプと組織的隠蔽の色を残してしまうタイプだ。

最初のタイプでは、雪印乳業の集団食中毒事件での「俺だって寝ていないんだ!」社長発言が有名だ。肉の偽装で悪名高いミートホープ事件では、色々な肉をまぜたことに対して、社長が悪びれる様子もなく「他の誰よりも肉の知識があったためにこんなことを考えついた!」と豪語していたのが記憶に残る。船場吉兆事件でも、もったいないからと「お客様へ提供した焼き物を使い回し」の衝撃的発言が当時のマスコミで話題となった。

一方、組織的隠蔽の色合いが強かったのが、昨年夏あたりから始まった著名ホテルや大手百貨店の食品偽装事件だ。マスコミや消費者からの告発という形であぶり出された不祥事を後出しの謝罪会見という状況で対応した事例が散見されたが、隠蔽されていた事実が会見後も次々に発覚することで、さらに深刻な状況に負い込まれた。

カネボウ化粧品の白斑事件やマルハニチロ事件では、事実関係の情報収集が遅れて「隠蔽体質」を指摘され、同時に親会社としての危機管理能力が問われて何度も記者会見を行う結果となったことは記憶に新しい。

謝罪会見の成功の秘訣は?

謝罪会見の成功の秘訣は、マスコミから突き上げられて記者会見を行うのではなく、自ら記者会見を行うことを決断し、十分準備して対応することだ。当然時間の勝負となるが、事実の把握に不鮮明な点があるからといって後でずるずると伸ばすことはあってはならない。ステークホルダー(関係当事者)へのリスクが拡大するような場合は、特にタイムターゲットは明確に持っておかなければならない。

事実関係の把握に不鮮明な点がある場合でも、マスコミへの情報開示はオープンにし、「事実関係が判明しだい公表する」というメッセージを強くアピールすることが重要である。過去に謝罪会見に成功している事例でも、多くが「情報の隠蔽は一切しない」姿勢を前面に押し出したことが成功の要因となっている。

さらに、一番マスコミや消費者が聞きたいこと、確認したいことに正確かつ真摯に答えること、長い時間かけることではなく、要点を絞り込んでわかりやすく説明することを心がけることが大切である。

また、現場で発生した問題も繰り返し行われていたり、その問題を予防するためのルールが決められていなかった場合、経営者の管理責任が問われることが前提にあり、現場だけに責任を押し付ける発言や、「管理責任は果たしていた!」と一方的に言い切る態度は、企業の社会的責任を無視したもので、望ましくはない。

一番やってはいけないこととしては、答えられない質問に対して不正確な回答を行うことで、後日、事実関係の誤りとして修正の記者会見を余儀なくされることだ。最近の傾向として、この種の問題が謝罪会見の失敗の要因となっている。

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