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成熟市場でいかに戦うか?――「ミドル脂臭」で需要創造目指すマンダムの挑戦、他

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消費者の購買行動が大きく変化する中、いま改めてお客様との向き合い方、マーケティングのあり方を考え直す必要が生まれています。『THE REAL MARKETING―売れ続ける仕組みの本質』の著者であるインテグレート・代表取締役CEOの藤田康人氏が、最前線で仕事をするマンダムの小芝 信一郎氏、レキットベンキーザー・ジャパンの趙 恩淳氏の2人のマーケターと企業を取り巻く現状の課題、そしてこれからのマーケティングのあり方について議論します。

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藤田:私たちインテグレートは、クライアント企業のマーケティング課題解決のお手伝いをすることが仕事ではありますが、様々なプロジェクトに関わる中で感じているのは、マーケティング活動の課題以前に、そもそも真の意味でのマーケティングの機能がないケース多いのではないか、という問題意識です。

これは企業側が怠慢だったという指摘ではなく、これまでの日本市場では、「マス広告=マーケティング」という発想で、十分に戦うことができたためです。

本日はマス広告での多くの成功体験がある日本企業の代表として、1927年創業という老舗企業であるマンダムさん。そしてCMOもいて、欧米流の最先端のマーケティングを日本で実践しようとされているレキットベンキーザー・ジャパンさんの2社にお話を伺うことで、日本企業や日本市場の特殊性、特徴を浮き彫りにしつつ、日本市場で戦う企業に適した、これからのマーケティングのあり方を議論していきたいと思います。

「ミドル脂臭」に対応する
新生「ルシード」発売で社内が一体に

マンダム 小柴 氏

マンダム 常務執行役員 マーケティングユニット統括 小芝 信一郎氏

小芝:当社は80年代に経営難に陥ったことがあるのですが、それはお客様視点の希薄化、マーケティングの不在が原因だったと思います。

そこで当時、社会におけるマンダムの存在価値から問い直し、全ての活動の主語を「お客様」にして考える「生活者発着」と「お役立ち」という活動方針を掲げました。しかし時が経つにつれ、どうしても部門ごとに個別最適の動きをしてしまうようになっていて、「生活者発着」の発想が見えづらくなってきていました。

藤田:80年頃と比べると、メディア環境、情報環境も劇的に変化しています。

小芝:そうですね。当社はマス広告の成功体験がある企業なので、現在の環境に合わせて統合的なコミュニケーションが必要だとわかってはいても、なかなか実践ができずにいました。

当社は今、男性用化粧品市場で26%のシェアがあるのですが、この市場はまだ成長領域の残っている市場です。例えば洗顔剤も使用していない男性がまだまだ多くいらっしゃいます。

しかし男性用化粧品は、15歳以前は母親が35歳以降になると奥様が代理購入するケースが多く、新しい商品を投入してもターゲットとなる方々に「自分ごと化」してもらいづらいことが課題になっていました。

藤田:そこで2月28日に発売された30代、40代を対象にした「ルシード」の新商品では、ターゲットとなるお客様にいかに自分ごと化してもらえるか、が課題だったと。

小芝:今回の新商品は、当社の研究所が「ミドル脂臭」という、20代の汗臭さでも50代以降の加齢臭とも違う、ミドル世代特有の「臭い」があることを発見したことがきっかけで生まれた商品でした。

藤田:昨年の11月にはメディアを招き、「ミドル脂臭」に関する説明と、それに対応した「新ルシード」の発表会を開催しています。

小芝:発売は2月でしたから、これほど早いタイミングで発表会を行ったのは初めてのことでした。ただ、この発表会がメディアで取り上げられたことで、流通への商品説明は非常に理解していただきやすかったのです。

メディアに露出したことで、私たちの発信が世の中ごと化し、バイヤーの人たちが話を聞いてくれる環境ができた。しかも、バイヤーの方たちはミドル世代が多かったので、新商品について「自分ごと化」して話を聞いてもらえました。結果、ルシードブランドとしては過去最大級の商品配荷を実現しました。

藤田:メディア、そして流通からもいい反応が得られると、社内も盛り上がったのではないでしょうか。

小芝:そうですね。社内全体に「これは、いけるぞ!」という気運ができ、部門を超えて一致団結する流れができました。

どうしてもメーカーのマーケティングは研究所、商品開発、マーケティング、営業とリレー形式で仕事が進んでしまうことが多く、なかなかこうした一体感をつくりづらい環境にありました。

藤田:しかもリレー形式は伝言ゲームになって、真の商品の価値がお客様にまで伝わらないケースも多いと感じます。

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