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スダラボ視点のカンヌ観察日記(3)

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「最古×最新」=「新しい普遍」
最古=人間が持っているもっとも古くからの価値観や本能的な反応
最新=もっとも新しい技術やメディアや見せ方などのヤリクチ

PARTY発足時に伊藤直樹さんは、同様のことを「物語×装置」と公式化していた。これに賛同した自分は、さらに形式を不問にして、装置であるかどうかや、物語であるかどうかも剥ぎ取って考えてみた。

要するに、「人間にとって一番古くからある、変わらない大切なもの」を、「人間にとって一番新しくて見たことなくて好奇心そそられるような仕立て」に、再提示「再発明」すれば、これは絶対に、老若男女・全人種・全国籍・全人類に「ウケるモノ」になるはずだという、永遠不滅で鉄板な「究極の考え方」である。

自分の講演ではこれを、別な言い方で「技術は進化する。人間は進化しない」とも言う。

この考え方の根本は、別に自分が言い出したことではない。「温故知新」とか「不易流行」とか、昔からずっと言われてきたことである。また、多くの経営者が座右の銘とする、雑誌「商業界」の創設者の一人、新歩民八の「名言」に、こんなものがある。

「古くて古きもの滅ぶ。新しくて新しきものまた滅ぶ。古くて新しきもの決して滅びず。」

この連載の初回で、澤本さんと永井監督の『ジャッジ!』に触れて述べたが、国際広告賞に世界各国から来ている多様な文化背景を持つ審査員団に、共通して理解と感銘を与えるネタや施策には、ある「共通点」がある。3年ほど前に、そのことに気づいた。

いまほど書いたことが、まさにそれだが、世界各国から来ているバラバラな人種・国籍の審査員から、より多くの賛同を得るには、ある種「人類にとっての古いネタ」でなければ通用しない。理解も共感も得られない。それは、家族愛とか、男女の色恋とか、赤ちゃんとか、老いとか、飢えや恐怖、生と死、空腹、睡眠欲、怒り、などなどだ。

だが、それでいて「コレは新鮮なアイデアだね!」と高く評価してもらうには、ある種「現在形の最新のヤリクチ」でなければならない。それは新技術かもしれないし、新メディアかもしれないし、今までなかった「新しい組合わせ」かもしれない。この時、より落差の激しいもの同士を組み合わせる方が、より「ジャンプ力」の高いアイデアになる。

これを、もっとも単純に公式化すると、「最古×最新」ということになる。

カップヌードル「hungry?」は、世界中の誰もがわかる「原始人」ネタを、当時「これ以上の完成度のデジタル合成は出来ない」という映像で見せた。

「ミクシィ年賀状」は、「新暦のあいさつ」という全文化圏に共通する習慣を、当時最新の「ソーシャルメディアの匿名コミュニケーション」と合体させた。

「泣きやみ動画」は、「赤ちゃん」のグズり泣きという全世界のお母さんの共通の悩みを、「WEB動画をスマホで再生する」というメディアのツール化で手軽に解決した。

「ライスコード」は、人類が農業を発明して以来ずっと続けている「稲作農耕」を、「画像認証+Eコマース」によって田んぼをメディア化しお米の直販システムにし地域活性化に結びつけた。

すべて「最古×最新」だといえよう。これが、つまり自分の言う「新しい普遍」探しなのである。

もちろん「勝つは偶然」であることは、忘れてはいない。だが、やみくもに国際広告賞を欲して、無手勝流にそれに挑むのでなく、「いったい国際広告賞を獲っているものには、どういう共通点があるんだろうか?」という視点で入賞作品群を俯瞰し、要素解析・構造分析もしくは文化人類学的に観察するのは、けしてムダな思考法ではないだろう。

・・・と、そんな感じで、昨夜の「祝い酒」の後、寝坊して書き始めたら、なんだか長くなってしまい、すっかり出遅れてしまった。今から急いで会場に向かいます。なんたって、とっても高い「入場パス」だから、もったいないので。では、また。

(つづく)

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スダラボ視点のカンヌ観察日記(4)ーー逆境という贈り物に、奇跡というインセンティブがつく。または、なぜ「スダラボ」はモチベーションが維持されているのか?

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