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テクノロジーで、スポーツにイノベーションを起こせるか?――電通・佐々木康晴氏×太田雄貴氏×真鍋大度氏×暦本純一氏座談会

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――太田選手は世界の広告業界の人たちが集う、カンヌのような場でプレゼンテーションをするのは、もちろん初めてのことだと思いますが。

太田:電通のチームや真鍋さんとは2020年の東京オリンピック招致のプロジェクトでご一緒したので、オーディエンスが違うだけで、ブエノスアイレスでのプレゼンテーションと気持ち的には、あまり変わりはなかったです。

(*2020年の東京オリンピック招致のプロジェクトで昨年、太田氏、真鍋氏はコラボレーションをした経験がある。ブエノスアイレスでの最終プレゼンテーションの際に、太田選手の背後で流れた映像を制作したのが真鍋氏。フェンシングの剣先を光らせたアーティスティックな映像は世界的に注目を集めた。)

佐々木:太田さんと我々はオリンピック招致のプロジェクト以来のご縁ですよね。暦本先生は、今回のセミナーをきっかけに初めてお会いしましたが、実は僕の部には暦本研究室の出身者が3人もいたりして、以前から近くに感じていました。

確かに普通に考えれば、広告業界からは遠いところにいる方たちのように思うかもしれません。でも僕は今、広告だけを作っているという意識はないんです。何かしら、社会の課題に対してソリューションを提供する仕事だと思っていて。その一つが今回プレゼンテーションしたテクノロジーを使ってスポーツを面白くするという取り組みでした。

セミナーでプレゼンテーションをする歴本純一教授。

セミナーでプレゼンテーションをする歴本純一教授。

――クリエイティブの力で広告の提案に限らずに、クライアント企業の課題を解決するということですね。

佐々木:そうです。ですから「このアイデアをどう広告に載せようか?」とか「広告業界にどう活かそうか?」ということは、あまり考えていません。ただ結果的に、企業と人を近づける、その企業ともっと一緒にいたいと思ってもらうために、今回のようなスポーツにイノベーションを起こす取り組みが役立つことがあるかもしれません。

広告会社のスポーツへの関わり方と言えば、これまではイベントにスポンサーを付けるということでしたが、テクノロジーを使うことでもっといろいろなことができそうだな、と。

スポーツ界とのコラボレーション

――ただ、皆さんが集まって共通の話題があるのか…。ちょっと不思議な気もします。

佐々木:確かに。ちょっとずつ違いますよね。

暦本:僕と太田さんは、ちょっと遠い関係にあるように思うかもしれないですが、でもスポーツは東京でのオリンピック開催が決まったからだけでなく、僕らコンピューターサイエンスを研究する人の中でも、興味を持つ人が増えているんです。コンピューターサイエンスと身体感覚と言えば、以前はユーザーインターフェースの話が中心でしたが、最近はより人に近いところに研究者の関心も移ってきています。

太田:これまでのスポーツ界は異業種とのつながりが薄かったんです。特にスポーツ界とビジネス界の人たちは一緒にいては、いけないように思われることもあって。でも両者が組むことでスポーツファンを増やしたり、メダルを増やしたりできるだけでなく、例えば高齢化が進む日本において新しい価値を提供することにもつながるのではないかなと思っています。いろんな人たちが集まり、交わることで、魅力をさらに広げられるとよいですよね。

真鍋:僕は基本が“データフェチ”なんで、これまでダンサーの筋電位を使って曲を作ったり、「Perfume」が踊っている時のデータをビジュアライズ化したり、「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」(カンヌ2014、チタニウム部門グランプリ受賞)では、セナの走行データを紙からデータ化するところを担当したりしましたが、データ化することで初めてわかることがあります。

特にスポーツというテーマは選手がさらに強くなるためのトレーニングに活用できたり、観戦する人に新しい楽しみ方が提案できたり…ビジュアライズするところで終わらない広がりがあるなと思っています。

先日の国立競技場のクロージングイベント「SAYONARA国立競技場 」では、いろんな選手の競技映像からデータに変換する作業を担当したのですが、アスリートの“超人感”をデータに触れることでわかったりして、面白かったですね。

次ページ「データから人を感じられる」に続く

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