【前回の記事「商品情報+取引情報=通販コピーの考え方。」はこちら】
今後、商品の価格について、消費者の目は確実にシビアになっていくと思います。消費税アップの影響などもあるでしょうが、そもそも消費者の買い物に対する価値観が変わってきている気がします。長い不況が続いたことで無意識のうちに買い控えが体質化し、若い世代は年金など将来の不安を抱えています。もしかするとバブルを経験していない世代は「景気がいい」のがどんな状態なのかイメージすら湧かないかもしれません。
では、人はますます価格の「安い」物へ群がるようになるのか?というと、ちょっとちがう気がします。
消費者たちは心のどこかで、これまでの「大量消費社会」から逃れたがっているのではないでしょうか。「資源を大切に!」などという大仰な発想ではなく、次から次へと新商品を追いかける、あるいは追いかけられるような買い物に疲れ果て、安物を取っかえ引っかえ使い捨てる生活にも飽きた。糸井重里さんのかつての名コピー「ほしいものが、ほしいわ。」(1988年 西武百貨店)の心境と言えばよいでしょうか。
そして、モノを買う際(毎日のおかずや消耗品の類は別として)、本当に自分に必要か? いずれ使わなくなったりしないか? すぐに壊れたりしないか?と真剣に悩みます。「ムダな買い物」に対する嫌悪の気持ちがとても強まっています(断捨離ブームもそういう気分の表れではないかと)。したがって、売る側が気にしなければならないのは、商品を安く見せることではなく、価格が妥当であることを「証明」することに変わってきているのだと思います。
一般の店舗なら現物が見られますし、デパートや専門量販店、ディスカウントショップなど売り場のちがいによって、品質や耐久性能などの信頼感をある程度、買う前に判断できます。でも通販は現物が見られない上に、売り場は玉石混淆。ブランド品などは別にして、本来は、通販こそが価格についてもっと根拠を示さないといけないはずですが、多くの通販広告は販売価格を示して、「安い!」「お得!」を強調するばかり。それでも、「たしかに同じ物なら実店舗より流通コストのかからない通販の方が安いはず!」という消費者の「思い込み」に助けられ、通用してきてしまった側面があります。
しかし、デフレによってここまでモノの値段が下がってくると、通販も実店舗も関係なく、「安さ」は常識化して買い物のキーワードとして通じなくなってきました。熾烈な安売り競争のあげく、今や100円ショップで衣服が売られている時代。そんな中、「ムダな買い物」を恐れる消費者たちは、本当に価値のあるモノしか「安くても買わない」のです。モノ選びの眼力をフル回転させますが、モノの適正価格がわからなくなってしまった状況下で、価格を見ても、カタログやPC画面にあるその商品が、自分のイメージ通りの価値を持っているのか不安なのです。
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