たとえば「枕」の話なら、
「これって、ヨーロッパの病院に採用されていたからメディカル枕っていうのよ」とか、「1人で78個も買った人がいるんだって! どうしてだと思う?」とか、肝心の寝心地などの話より、カタログのコピーに書いてある、どちらかといえば付随的な情報や、裏話的なエピソードばかり聞こえてくるのです。
通販コピーを書く上で最も大切な要素といえば、商品の「ベネフィット」を伝えることです。ベネフィットとは、その商品を購入することで得られる具体的なメリットのこと。枕であれば、これを使うと「ぐっすり眠れる」とか、「肩こりが和らぐ」とか、その商品を買う一番の目的ですね。それなのに、その口コミの現場では、最も伝えるべきはずのベネフィットについての報告がほんの少しなのです。
なぜか?
それは、商品のベネフィット情報に「意外性がない」からではないでしょうか。どこの企業の通販広告にも「枕」の広告であれば、必ずその枕のベネフィットについて書いてあります。文量が長かったり短かったり、巧かったり下手だったり… 書かれ方は色々でしょうが、要するに「枕=安眠」という予定調和的な内容がほとんどで、他人の気を引くコメントになりにくい。
品評会の彼女たちもそのあたりをちゃんと心得ていて、自分の話に興味を持ってもらえるように「ネタ」を選びます。枕について「よく寝られた」とか「疲れにくい」とか、そういう当り前のことをくどくど言うより、限られた持ち時間の中で、相手に「へぇ!」とか、「なるほど!」と思わせられるような「蘊蓄」情報を見繕っているわけですね。
通販で買い物をする側にとって、一番の関心事は商品のベネフィットのはずです。でも、所詮は通販ですから、現物を見ないで(詳細なベネフィットの真偽を確かめないまま)買う判断をせざるを得ません。内心では「枕の効果なんて実際に寝てみないとわからないわよ!」と思いつつ、それでも「買った」のだとすれば、最後に背中を押したのは、ベネフィットとは別のコピー要素(一つか複数かわかりませんが)だったことになります。
恐らく、品評会の「ネタ」も彼女たち自身が商品購入の決め手とした情報なんだと思います。自分が「ヘェ〜、そうなんだ!」と感じたからこそ他人にも伝えたい。逆に言えば、そう思わせるネタがなければ、いくらベネフィットに優れた商品でも口コミに乗りにくいのです。なくてはならないコピー要素の「主役」がベネフィットだとしても、それを盛り立てる「脇役」情報の存在が、いかに重要かということです。
最近、大手通販の千趣会が、「カジドル」というWEBコンテンツサービスを始めました。実際の購入顧客たちがWEB上に商品のコメントをアップするのですが、文字だけでなく顔出しなのでとてもリアルに感じられます。こうしたバイラルメディアを活用する手法は今後ますます増えていくでしょう。情報を人から人へ効果的に拡散(感染)させるためには、もともとの情報源である商品コピーに、読み手の「ヘェ〜」を誘うネタ(ウイルス)を仕込んでおくことが鍵となります。
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