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コラム

新しい売上を作る「売り方のイノベーション」~買物客の購買行動を、売り場で操作する~

メーカーと小売がWIN—WINとなる「ショッパー・ベース・デザイン」はこうして生まれた

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【前回のコラム】「買い物客の購買行動を操作するとは?米国 乾電池売り場の劇的改善」はこちら

80年代:ショッパーのニーズの変化と「カテゴリーマネジメント」の誕生

前回、買物客の購買行動のインサイトを適切に抽出して、購買行動を操作する売り方のデザインを「ショッパー・ベース・デザイン」と紹介しました。今回は、この発想が生まれてきた背景と概念を詳しく説明します。

1980年代中盤までの米国の小売業は、メーカーが販売促進費やリベートを使って商品を店頭に並べ、消費者に向けて大量の広告宣伝を行うことで、商品を仕入れるだけで売上・利益を確保できる構造になっていました。業態も、食品・雑貨を中心に扱うグロサリーと、衣料品や住居用品を扱うゼネラル・マーチャンダイズとに棲み分けられ、店舗間の大きな競争にさらされることもありませんでした。

ところが、80年代半ばを過ぎると、ウォルマートに代表されるような新興小売業が台頭し始めます。食品・雑貨・衣料品・住居用品を垣根なく取り扱い、多岐にわたる商品を大量に仕入れ、どこよりも低価格で提供し、急速にショッパーの支持を集めます。

しかし、終わりの見えない価格競争による利益率の低下は、販売促進費やリベートの提供の限界を引き起こすことになります。大量の広告宣伝の投下という要素だけでは、価格重視の小売店の仕入れ増には結びつかず、メーカーが売り場に商品を押し込むことができなくなっていきます。

そんな中、小売業が価格以外の要素でショッパーの購買意欲を刺激する方法を模索し、重要な鍵を握るようになったのが「カテゴリーマネジメント」です。

カテゴリーマネジメントは、ショッパーのニーズ別に分類し、小売店の戦略・目標に基づいて設定した新しい「カテゴリー」によって、商品構成から販売価格・売り場の展開までを管理するという経営戦略です。

米国などの成熟した市場で、カテゴリーマネジメントを実施する小売業においては、売上が頭打ちのコモディティ化したカテゴリーでも、ショッパーの視点で組み直すことで購買行動に変化が生まれ、新しい利益を生み出すということが実際に起きています。ただし、そのカテゴリー全体の伸長が見込めないのであれば、特定のメーカーの商品の仕入れ量だけを増やすというという事は考えにくいでしょう。なぜなら、メーカーの大量の広告宣伝だけでは、小売店のカテゴリー全体を伸長させることはできないからです。

次ページ 「90年代:メーカーの役割は小売店のマーケティング目標達成・課題解決の貢献に」へ続く