2000年代~:メーカーと小売店がWIN-WINとなる視点
日本の小売業においては、単品管理が主流で、カテゴリーマネジメントが普及しているとは言えませんが、メーカーと小売店が協力し、ショッパーの視点でカテゴリー分類の見直しや、陳列位置や陳列数を工夫して、売り場の売上高や利益を最大化する試みが徐々に見られるようになってきているのも事実です。
メーカーが販売促進費やリベートを投入して商品を押し込み、自社製品の広告を投下し、店頭に広告連動のポスターを掲出するなどして「店頭と広告を連動させる」ことによって、店頭に自社製品を置いておけば売れる状態をつくるのもマーケティングですが、それは、小売店の店頭を、自社のマーケティングの一環として「お借りする」ことに他なりません。
その結果、たとえ自社商品が売れたとしても、必ずしもショッパーにとって分かりやすく買いやすい売場、興味や関心を掻き立てられる売場になっていたとはなりませんし、小売店のマーケティング目標・課題に貢献できなければ、いずれは小売店の仕入れ量が減少していくでしょう。
メーカーは、自社の商品が「売れる」ことが、小売店のマーケティング目標に「適っている」、小売店のマーケティング課題を「解決」しているといった提案、たとえば、その商品のマーケティング戦略によって「クロージャーレート(来店者が実際に商品を購入する確率)を改善する」であるとか、「客単価の向上に寄与する」といった提案を小売店に行う必要があり、それを小売店との「協働マーケティング」として取り組むことによって、結果的に自社商品へのショッパーの支持を増やし、小売店とWIN-WINのパートナー関係を構築すべきなのです。
ショッパー・ベース・デザインは、協働マーケティングのキーアイデア
ショッパー・ベース・デザインは、これまで述べてきた米国での1980年代後半のカテゴリーマネジメントへの取り組みから着想され、30年以上かけて進化・体系化されてきたものです。トップダウン型のカテゴリーマネジメントと、ボトムアップ型の単品管理が補完関係になっているといわれる現在の日本の小売業において、ショッパー・ベース・デザインは、製販の協働マーケティングを実行することで、ショッパーに豊かな買物体験を与え、小売店に増分利益をもたらし、メーカーにインストアシェアをもたらすための「キーアイデア」といえるのです。
次回は、具体的に純増利益を生む新しい可能性を発見し、「ショッパー・ベース・デザイン」を設計するプロセスを紹介します。
「新しい売上を作る「売り方のイノベーション」~買物客の購買行動を、売り場で操作する~」バックナンバー
- 最終回 売り方のイノベーションとオムニチャネル(2015/4/16)
- 日本で「売り方のイノベーション」を実施するための組織と商談の工夫とは?(2015/4/09)
- メーカーと小売業がWin-Winの関係で売り方のイノベーションに取り組むには?(2015/3/26)
- 米国成功事例② P&GがTargetをビューティケアカテゴリーの「絶対行きたいお店」に変革した売り方のイノベーション(2015/3/13)
- 米国成功事例① スーパーで売れた「スターバックスコーヒー」とは?カテゴリーも活性化させた売り方のイノベーション(2015/2/26)
- デート成功の秘訣は、ショッパーのディマンドとインサイトが出発点。(2015/2/12)
- 買い物客の購買行動を操作するとは?米国 乾電池売り場の劇的改善(2015/1/15)
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