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ブレスト会議のファシリテーターが注意するのは「か・き・く・け・こ」

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【け】「現実的には無理でしょ」

上の「直感で発言してもOK」というルールは、実は話し手よりも聞き手の態度が重要になってきます。「こんなアイデアいいよね!」という発言に対して、「現実的には無理でしょ」「昔やって失敗した」といった反応だったら、徐々に発言する気が失せてしまいます。

ブレスト会議での発言は、ある意味すべてが正解です。参加者一人一人が生まれも育ちも違うので、自分とは違う意見に出会うのも当然です。そんな時でも傾聴の姿勢を持って、「なるほど、そういう意見もあるんだね」と一旦意見を受け止めましょう。その上で、「自分の意見は少し違っていて」と言うのは構いませんが、誰かの意見を即否定してはいけません。

むしろ、自分とは違う意見に出会った時こそチャンスです。なぜ自分とは違う考えを持っているのかを聞き出すことで、若い女性の視点や年配の上司の視点など、自分の中に色々な視点を持つことができます。色々な視点を持つことは、自分自身の企画力を高めるためにも役に立ちます。

ポイント:傾聴の姿勢を持ち、いきなり否定しない。

【こ】「根本的にさぁ」

プロジェクトが始まった当初は何も言わずに見守っていた役員が、終盤になって突然言い出す恐怖の一言。議論を重ねて来た挙げ句に言われる「根本的にさぁ」とか「そもそもさぁ」という言葉ほど、悲しいものはありません。

俗に言う、ちゃぶ台がひっくり返る瞬間です。実は私も経験があります。

あるホテルのリブランディングをテーマにワークショップを行った時のことです。クライアント約20名との長時間に及ぶ議論の末、「日本の文化を伝えるホテル」というコンセプトのもとで、従業員一人ひとりが生け花や書道など得意技を作って自分の名札に書く、といったアイデアが生まれたその時でした。それまで黙っていた、その場で一番偉い役員の方が、突然こんなことを言い出したのです。

「うちの従業員にそんなこと無理でしょ。そもそも、ホテルっていうのは立地と建物の豪華さで決まるんだよ。」

私も含めて、全員がシーン…となりました。
後々分かったのは、実はその役員は銀行出身のホテル勤務経験が無い方で、現場の力を信じないタイプだったそうです。事前にそれが分かっていれば、会議の進め方も全然違ったものになったはずです。

この種の失敗の原因は100%ファシリテーターにあります。ファシリテーションは事前の準備が9割。何を話し合うのか、会議の論点を事前に整理できていないことが、上司の「そもそもさぁ」を生み出す原因です。会議の成功や失敗は、実は会議の前に9割方決まっているのです。

ポイント: 事前に話し合うべき論点を整理しておく

いかがでしたでしょうか。皆さんの会議でもしもこの「か・き・く・け・こ」が頻繁に出てくるとしたら、要注意です。

ファシリテーターと聞くと、「うなづく」とか「オウム返しにする」とか、会話のテクニックのようなものを思いつくかもしれません。しかし、会議がうまくいくコツの多くは、実は環境づくりにあります。

ファシリテーターは必ずしも話すのがうまい必要はありません。明確な論点のもとで話しやすい環境さえ用意できれば、あとは自分が黙っていても盛り上がる。それが、私が理想とするファシリテーションです。


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岡田 庄生
株式会社 博報堂 コンサルティング局 ファシリテーター

1981年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、2004年、株式会社博報堂入社。PR 戦略局を経て、2010年に、企業ビジョンやブランド、商品開発の支援を行うコンサルティング局に異動。多数の企業コンサルティングに関わる。2009年より現在まで、法政大学社会学部「コミュニケーション・デザイン論」の講師陣の一人としてワークショップ形式の授業を行っている。2013年、日本広告業協会(JAAA)懸賞論文金賞受賞。2014年、日本PR協会「PRアワード2014」優秀賞受賞。著書に『買わせる発想 相手の心を動かす3つの習慣』。近著に『お客様を買う気にさせる「価値」の見つけ方』がある。

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