もう一つは「消費者の洞察」によって得られる情報で、商品開発、コミュニケーション開発、チャネル開発などに活用するということだ。つまり広告費の領域を大きく超えたマーケティング施策全体の最適化に資するのがDMPとなるわけである。バイヤーとの商談でのキーワード、店頭POPのキーワード、社内での企画上申のためのキーワード、いろんな場面で「消費者の琴線に触れる文脈はこうだ」と明確化できることの価値は高い。
そんなDMPを単にDSP最適化ツールから、本来の本格的DMPとして開発しようという意向が増えてきている。
必要なのは「骨太のDMP」
そうなると、企業の基幹システムやCRMシステムとの接合が課題となってくる。言ってみれば「骨太のDMP」である。当然、企業側で担当するのは情報システム部門であり、アウトソース先はSIerになる。
ここでマーケティング部門と情報システム部門の文化の違いが大きな課題になる。そもそも「言語」が違う。マーケティングが分からない情シス、テクノロジーが分からないマーケター、企業内の人事ローテーションでもここの間の相互交流はほとんどない(これからは「営業経験のある情シス部員」「情シスにいたことのある宣伝部員」が必要である)。
しかし、この壁を乗り越えつつある企業も出てきた。情シスの人たちも「守り」一辺倒のシステムから、マーケティング活動、営業活動に寄与する「攻め」のシステムへのチャレンジをしたいと内心思っている人もたくさんいる。マーケティング部門の人たちもそういう情シスの人を味方にしないといけない。
これからは事業部以外の部門の連携が企業価値を生む時代である。事業部、ブランドマネージャーにお金と権限が集まるのはいいが、ブランド横断型のセクションがしっかり連携して力を発揮しないといけない。
事業部(ブランドマネージャー)は自分の売る商品目線でマーケティングをする。これは当然で仕方のないことだ。一方でブランド横断セクションは、消費者目線でマーケティングする。DMPとはまさにユーザーごとを見ることで得られる情報で、「LTVを上げる」、「クロスセルを向上させる」ということに活用しないといけない。日本は人口現象社会である。マスマーケティングとCRMの融合を進めないと、効率は著しく悪くなる。ある意味、そこを繋ぐのがDMPだと言ってもいい。
話を骨太なDMP導入に戻そう。
様々なマーケティングツールが登場しているが、骨太なDMPを構築するためにはツールを導入しただけでは話は終わらない。もちろんスクラッチでDMPをつくるということはあり得ない。優れたツールがすでにあるわけだから、設計思想において導入企業の状況にあったものを入れるのだが既存のシステムとの繋ぎ込みと、分析基盤の運用体制、人員などを含め、SIerが提供する領域は広い。このあたりはSIerでないとできない部分が多い。
しかし、SIerがぶち当たる壁がある。彼らの用意できる人材は、あくまで統計や数学のスペシャリストであって、「シナリオ設計」ができるスキルがある訳ではない。前述したように、DMPで成果を生むにはデータから「施策」を企画実施して初めて得られるもので、その「施策」を導き出すには「施策」の企画実施経験のある者でないとイメージできないのだ。
ただ、こうした経験があるからと言って、データとがっつり向き合うことができなければいけない。こうした人材は今のところほとんどいないというのが実態だろう。いないのであれば、育成しなければいけない。「予測その1」で触れたことでもあるが、いわゆるSIer系企業がこうした「シナリオ設計」人材獲得のために広告会社を買収するようなこともあるかもしれない。
マーケティングテクノロジーが発展するということは、分離していた「情報システム部門とそのアウトソース先のSIer、広告マーケティング部門とそのアウトソース先の広告会社」の領域が被るということだ。文化の違うもの同士が人材融合に早期にチャレンジし、試行錯誤する覚悟と忍耐のある企業だけが、成果を得るだろう。
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