コラム

米国マーケティング業界、トップランナーに聞く。

米国のファストフード、Arby’s×ファレル・ウィリアムス 「リアルタイムマーケティング」の裏側

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約30億円の広報効果、チャリティーにも発展

結城:すごい盛り上がりでしたね。結果を振り返って、この一連のリアルタイムツイッターの会話は、メディア上でどのくらいのPR効果があったのですか?

Martin:だいたいメディアではグラミー賞だけで8420万インプレッション、オスカーの時で3360万インプレッションくらいの露出でした。それは、普段のArby’sのリーチに対し、348倍ものリーチに到達したわけです。Arby’sのブランド名は、18万5000回以上メンションされたと思います。

結城:それはソーシャルメディア上で起こったことが、テレビのニュースや雑誌、オンラインニュースにも取り上げられ、あ、もちろんこういった海外メディアからの取材も含めてもらうと(笑)ケーススタディとして、どんどん伝播して行ったと思うんですが、一体メディア価値に換算するといくらくらいのバリューになったのでしょう?

Martin:$30 million dollars(約30億円)にまでのぼりました。これはArby’s史上最高のバリューを創出したと思います。

結城:さてこのグラミー賞で起こったリアルタイム・ツイートのブームには後日談がありますよね? コーズ活動(社会貢献の寄付活動)の一環で、オークションに帽子を出品した ファレルから「帽子が欲しいんだったよね? ならばチャンスは今だよ」と挑戦的なメッセージが来たとか?! その関わり方がまた粋で、企業としてのArby’sが注目されることになったと聞いたのですが。

ファレルからArby’sへのツイート:「ヘイ!Arby’s. 僕の帽子欲しいかい? チャンスはまさに今なんだけど。」それに返したArby’sのツイート:「ファレル、私たちはあなたの帽子をWatch List(eBay上での買い物ウォッチリスト)に入れましたよ」

Martin:はい、 ファレルのeBayでのオークションに対して、あの帽子を約4万4100ドル(日本円にして520万円くらい)でArby’sが落札しました。その義援金は、ファレルから団体に寄付されたと聞いています。

結城:そのやり取りも相当リツイートされたようですが?

Martin: そうなのです。結果、落札したファレルの帽子は、会社に飾っておくより、ファンや一般の皆さんに公開した方が良いと思い、Newseumという美術館に寄贈して展示することにしました。Newseumでの展示については、約1090万インプレッションの露出が確認されました。 

2カ月後、帽子は4万4100ドルで落札。一連の熱い Arby’s ムーブメントは、 結果1億1790万インプレッションの露出と、広告換算バリューにして30 億円のメディア価値を獲得した。

<パート2に続く>


取材を終えて

世界に注目されるグラミー賞、話題になった歌手と帽子、そしてジョークの効いたツイート、さらには社会貢献活動への参加。拡散する力は留まることを知らず、最終的にArby’sの名を一躍有名にすることになったのですが、見方をかえれば、日々の顧客の声に(それが日曜でさえも!)耳を傾けることに真の意味を感じていたArby’sだからこそ掴めたチャンスだったのではないでしょうか。一連のArby’s ムーブメントは、結果1億1790万インプレッションを生み、TVニュースや新聞、雑誌への記事掲載によって、広告換算バリュー約30 億円のメディア価値を獲得しました。リアルタイムマーケティングが、莫大なメディア露出を獲得できる可能性を示した好例だと思います。

この事例の成功のポイントをまとめると、三つのことが言えると思います。一つは、顧客の声をいち早く捉え、リスクを怖れず会話に参加することを決断したこと。二つ目は、ソーシャル上の盛り上がりを静観し、ここぞ!という時に機智を発揮できたことです。しつこくないウィットやタイミングの良いソーシャル・コーズは、#Grammyという効果的なハッシュタグに乗って、爆発的に拡散し続けていったのです。そして、最後に、これは実は Arby’sだけでなく、歌手の ファレル自身がブランドとソーシャルメディアの力を利用し、うまく社会を巻き込んでコーズ活動(慈善目的の社会貢献)を成功させた例としても、さらに秀逸なケースなのだと思います。

ローストビーフサンドイッチのお店としか知られていなかったArby’sが、ユーモアがあるだけでなく社会貢献度も高い素晴らしいブランドとして認知され、人々と感情的に結びつくことができた瞬間でした。

同社は近年、市場競争の激しいファストフード業界において、人々から愛されるブランドになるために、ソーシャルメディアを駆使し、ブランドイメージの再建をはかってきました。ブランドイメージは、いいね!の数やTwitterのフォロワー数だけで量的に計れるものではありません。ブランドと人々の間により感情的な結びつきが生まれて初めて真のファンを獲得できたと言えるのではないでしょうか。


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結城 彩子
Ys and Partners取締役副社長 / ブランド・ストラテジスト

広告代理店などを経て2002年に米国でYs and Partnersを、2005年にジャパンオフィスを共同創業。日米クライアントを中心にグローバルブランドの戦略立案、ソーシャルメディアを含めたマーケティングプラン開発などに携わる。

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