モノを購買する場所は「物理的な売り場」だけではなくなった
新しい利益・売上をもたらすのは、新製品/製品のリニューアルといった製品のイノベーションだけではなく、売り方を設計し直す「売り方のイノベーション」という方法もあり、その方法であるショッパー・ベース・デザインを説明してきました。
ここで、前回のコラムで紹介した、サプライチェーン上でショッパーが大きな力を持つ「リテール3.0」時代において、売り方のイノベーションはどのようになってくるのかについて紹介しましょう。
上の図は、「リテール3.0」時代のショッパーの購買行動を描いたものです。初めて商品を発見(この図では広告によって商品を知る)してから実際に購入に至るまで、ショッパーはあらゆるチャネル・メディア・コミュニケーション機会をシームレスに横断して、最も良い商品と価格選択を行うというものです。
この図で表していることはほんの一例に過ぎません。たとえば、WEBで商品を知り、SNSで自分のネットワークに質問を投げかけ、一度も店舗に訪れることなく商品を購入することもあるでしょう。また、店舗で商品を知り、購入するために店舗に再訪するとすでにその商品は売り切れていたので、その場でスマートフォンを使ってECサイトから商品を購入するなど、あらゆるケースの組み合わせで購買行動が進んでいくことになります。
米国小売業協会では、このような自由で気ままにチャネルを横断する、リテール3.0時代のショッパーに対して、すべてのチャネルを総動員することで商品を買ってもらおうとする活動を、「オムニチャネルリテーリング」と定義しています。
一時期「O2O(Online to Offline)」という言葉が席巻していたこともあって、オムニチャネルのことを「オンラインからオフラインのマーケティング活動」と捉えている方が多くいらっしゃいますが、モノを購買する場所が「物理的な売り場」だけではなくなった、新しい時代のショッパーに対し、いかに「購買環境」を整えて、より多くの買い物をしてもらえるか、ということを小売業の視点から描いた戦略が「オムニチャネルリテーリング」なのです。
メーカーは、このような変革の方向性を打ち出してきた近未来の小売業に対して、どのようにカテゴリー全体の需要喚起を提案していかなければならないのでしょうか。
「新しい売上を作る「売り方のイノベーション」~買物客の購買行動を、売り場で操作する~」バックナンバー
- 日本で「売り方のイノベーション」を実施するための組織と商談の工夫とは?(2015/4/09)
- メーカーと小売業がWin-Winの関係で売り方のイノベーションに取り組むには?(2015/3/26)
- 米国成功事例② P&GがTargetをビューティケアカテゴリーの「絶対行きたいお店」に変革した売り方のイノベーション(2015/3/13)
- 米国成功事例① スーパーで売れた「スターバックスコーヒー」とは?カテゴリーも活性化させた売り方のイノベーション(2015/2/26)
- デート成功の秘訣は、ショッパーのディマンドとインサイトが出発点。(2015/2/12)
- メーカーと小売がWIN—WINとなる「ショッパー・ベース・デザイン」はこうして生まれた(2015/1/29)
- 買い物客の購買行動を操作するとは?米国 乾電池売り場の劇的改善(2015/1/15)
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